橋本病(慢性甲状腺炎)合併全身性強皮症(全身性硬化症:SSc)、CREST(クレスト)症候群(限局性皮膚硬化症)[橋本病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックにつき、膠原病の診療を行っておりません。また、全身性エリテマトーデス(SLE)などステロイド剤・免疫抑制剤を必要とする膠原病を合併した甲状腺機能亢進症/バセドウ病の方は、メルカゾール・プロパジール・チウラジールの重篤(重症)な副作用が現れる危険があるため、必ず同一施設内で治療して下さい。
Summary
全身性強皮症(全身性硬化症:SSc)の40%に橋本病(慢性甲状腺炎)合併、シェーグレン症候群合併SScの橋本病合併率50%。甲状腺機能亢進症/バセドウ病の合併率は0.5%。橋本病合併SScでは①甲状腺乳頭癌の発生率が高い②抗セントロメア抗体の陽性率が高く、全身の硬化、顔面の硬化の程度が強い。甲状腺機能低下症になるとさらに仮面様顔が悪化。SScは食道硬化により飲み込みも悪くなり(嚥下困難)、甲状腺の病気の合併でさらに増悪。SScでも甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも肺高血圧症。CREST症候群(クレスト症候群、限局性皮膚硬化症)と橋本病合併あり。
Keywords
全身性強皮症,全身性硬化症,SSc,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺乳頭癌,甲状腺機能低下症,甲状腺,CREST症候群
全身性強皮症(全身性硬化症:SSc)の40%に橋本病(慢性甲状腺炎)を合併、特にシェーグレン症候群を合併した全身性強皮症(SSc)の橋本病(慢性甲状腺炎)合併率は50%です。(Front Endocrinol (Lausanne). 2017 Oct 3;8:266.)
一方、日本人全身性強皮症(SSc)患者の0.5%に甲状腺機能亢進症/バセドウ病を合併します(J Dermatol. 2014 Dec; 41(12):1053-7.)
また、橋本病(慢性甲状腺炎)を合併する全身性強皮症(SSc)では、甲状腺乳頭癌の発生率が高いとされます(Rheumatology (Oxford). 2016 Mar; 55(3):480-4.)
橋本病(慢性甲状腺炎)自体が甲状腺癌の発生母体なのだから当然でしょう。
日本人女性の橋本病(慢性甲状腺炎)合併全身性強皮症(SSc)患者では、抗セントロメア抗体の陽性率が高く、全身の硬化、顔面の硬化の程度が強くなります(J Dermatol. 2014 Dec; 41(12):1053-7.)。
全身性強皮症(SSc)では、顔面の皮膚硬化によって表情が乏しくなり、仮面様顔貌を呈します。甲状腺機能低下症/橋本病(慢性甲状腺炎)を合併すると
- 顔面の皮膚硬化が強くなり
- 新陳代謝が低下して
さらに仮面様顔が強くなります。
全身性強皮症(SSc)は、食道の硬化により飲み込みも悪くなり(嚥下困難)、巨大甲状腺腫、甲状腺腫瘍、甲状腺機能低下症/橋本病(慢性甲状腺炎)、甲状腺機能亢進症/バセドウ病を合併すると更に悪化します。
全身性強皮症(SSc)は両側下肺野の間質性肺炎を合併します。吸気終末の捻髪音状肺雑音(fine crackles)を聴取。
全身性強皮症(SSc)では、肺動脈圧が上昇し25mmHg以上になる肺高血圧症を起こします。
- 心臓から肺へ血液を送る肺動脈の狭窄・硬化により、血流が妨げられる肺動脈性肺高血圧症(PAH)
- 間質性肺炎に伴う肺への血液還流障害
- 肺動静脈血栓塞栓症合併(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)に伴う肺への血液還流障害
などの機序です。肺高血圧症により低酸素症、右心不全に至り、生命予後が悪くなります。甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも肺高血圧症をおこすため、全身性強皮症(SSc)を合併すると更に肺高血圧症のリスクが上がります(甲状腺機能亢進症/バセドウ病が原因で肺高血圧症に)。
また、甲状腺機能低下症/橋本病でも甲状腺機能亢進症/バセドウ病と同程度以上の肺高血圧症をきたします(Am J Med. 2005 Mar; 118(3):322-3.)。
抗Scl-70(トポイソメラーゼI)抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体いずれかが陽性。抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性例は傍腫瘍症候群の可能性があるため、悪性腫瘍の検索が必要。
全身性強皮症(SSc)の10年生存率は70%で、死因の25%は肺高血圧症。悪性腎硬化症・悪性高血圧に至る強皮症クリーゼ/強皮症腎クリーゼを起こす事も。
CREST症候群(クレスト症候群、限局性皮膚硬化症)は、自己免疫抗体の一つ抗セントロメア抗体陽性の膠原病で、橋本病(慢性甲状腺炎)に合併することがあります[An Med Interna. 1993 Feb;10(2):99-100.]。
しかし、全身性強皮症(全身性硬化症:SSc)とは異なり、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)の陽性率は高くないとの報告もあります(Scand J Rheumatol. 2011;40(4):299-303.)。
CREST症候群(クレスト症候群、限局性皮膚硬化症)では、
- 指先が硬くなり(皮下石灰沈着)、毛細血管の拡張が見られます。レイノー現象も伴い、強指症(細く、蒼白い、硬化した指)になります。
- 内蔵障害は食道・胃腸管に限定されます。食道運動障害が原因の食物が詰まるような感じは、巨大甲状腺腫、びまん性甲状腺腫、甲状腺腫瘍による圧迫のようです。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。