甲状腺と整形外科の病気③(肩腕);五十肩,肩関節周囲炎,凍結肩,胸郭出口症候群,肩腱板断裂,ヘバーデン結節[長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です。
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Summary
甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症/バセドウ病では五十肩(肩関節周囲炎・凍結肩・癒着性関節包炎)、腱炎、肩腱板断裂、関節障害を起こしやすい。胸郭出口症候群は甲状腺機能低下症で悪化。。閉経前のヘバーデン結節(Heberden 結節)患者は、全例が甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病、腺腫様甲状腺腫)を有していたとされる。ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)と亜急性甲状腺炎(ド・ケルバン甲状腺炎)は全くの別物。甲状腺機能低下症による免疫力低下も骨折術後感染・術後創傷感染症の危険因子になると考えられる。
Keywords
甲状腺,五十肩,肩関節周囲炎,凍結肩,甲状腺機能低下症,胸郭出口症候群,肩腱板断裂,ヘバーデン結節,甲状腺機能亢進症,バセドウ病
以降は、甲状腺と整形外科の病気①(頸);コラーゲン,頚椎後縦靱帯骨化症OPLL,甲状腺マッサージ,石灰沈着性頸長筋腱炎
甲状腺と整形外科②[変形性膝関節症・股関節症・アキレス腱断裂・大腿骨頭すべり症・静脈血栓塞栓症VTE]
肩関節周囲炎とは肩・肩周囲の炎症で、中年に起こり易いため五十肩と呼ばれます。初期には肩関節を動かしても動かさなくても痛み、特に夜間の痛みが強くなります。数か月-数年で、肩関節を動かしにくくなり、服を着替えるにも困難が生じます。
五十肩は学術的な病名ではなく、国際的には癒着性関節包炎(adhesive capsulitis)や凍結肩(frozen shoulder)と呼ばれます。
肩関節周囲炎(癒着性関節包炎・凍結肩)は、糖尿病や甲状腺疾患との関連が強い[Am Fam Physician. 2008 Feb 15;77(4):453-60.]。
糖尿病の10%から20%に五十肩(肩関節周囲炎・凍結肩・癒着性関節包炎)が発病するとされますが、その原因は不明です。甲状腺ホルモンは、骨、軟骨、腱に影響するため、甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症も、五十肩の発病に関連あるとされます。(J Biol Regul Homeost Agents. 2016 Jul-Sep;30(3):867-870.)(Arthritis Rheum. 1987 Aug;30(8):936-9.)
甲状腺機能低下症の重症度と、五十肩(肩関節周囲炎・凍結肩・癒着性関節包炎)の重症度に相関が認められます。(J Shoulder Elbow Surg. 2017 Jan;26(1):49-55.)
潜在性甲状腺機能低下症や糖尿病は、肩関節手術後に生じる肩のこわばり(手術が無効になる状態)の危険因子とされます(Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2017 Jul;25(7):2208-2216.)
甲状腺機能低下症により上腕二頭筋腱長頭部が自然断裂した症例が報告されています(J Med Case Rep. 2016 Jan 13;10:2.)。甲状腺機能低下症による腱炎は、通常の腱炎より治療抵抗性とされます。腱炎は甲状腺機能低下症の徴候的な症状で、甲状腺機能が改善すると腱炎症状も軽減します。
五十肩(肩関節周囲炎・凍結肩・癒着性関節包炎)自体の治療は、
- 抗炎症剤(NSAIDs)による鎮痛と消炎
- 肩関節が固まらないようにするための運動療法
近年、肩腱板断裂の発生率が増加しています。当然ながら、肩腱板腱には甲状腺ホルモン受容体が存在し、腱の代謝と維持に関与しています。肩腱板断裂の関節鏡手術や小開放手術を受けた患者は、男女ともに高頻度で甲状腺疾患を持っていたとする報告があります。(Muscles Ligaments Tendons J. 2014 Nov 17;4(3):309-14.)
年齢(歳) | 女性(%) | 男性(%) |
---|---|---|
20–40 | 50.00 | 14.81 |
40–60 | 56.44 | 19.3 |
60–80 | 63.6 | 22.67 |
80-90 | 27.27 | 0.00 |
胸郭出口症候群は、睡眠障害、女性ホルモン(エストロゲン)欠乏、甲状腺機能低下症、関節リウマチ、線維筋痛症、脊柱側弯症などの姿勢障害で悪化します。
しかし、甲状腺腫瘍・甲状腺癌で胸郭出口症候群を起こした報告はありません。胸郭出口症候群の診断目的のCTで、偶然、甲状腺腫瘍が見つかった報告はあります(AJR Am J Roentgenol. 2010 Nov;195(5):1066-71.)。
へバーデン結節は、指の第1関節(遠位指節間関節、DIP関節)が変形して曲がる原因不明の病気です。第1関節背側の伸筋腱付着部を挟んで2つの結節が形成されます。
へバーデン結節は、40歳代以降の女性に多く発症し、手を使う仕事の人に多いとされます。変形のみならず、痛みを伴うこともあります。
閉経前のヘバーデン結節(Heberden's node)患者を調べた報告では、全患者が甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病、腺腫様甲状腺腫)を有していたとされます。[Ryumachi. 1990 Apr;30(2):99-102.]
骨折術後感染・術後創傷感染症には、初期から壊死組織や膿瘍を除去をして創部を洗浄するデブリドマンを施行します。治療の遅れは骨髄炎に繋がります。
肋骨骨折に対する開放整復および内固定後の術後創傷感染の危険因子は、
- 長時間手術
- 貧血
- ドレナージの延長
- 糖尿病
- 喫煙
- 高齢
[BMC Infect Dis. 2024 Sep 19;24(1):1013.]
当然ながら、甲状腺機能低下症による免疫力低下も骨折術後感染・術後創傷感染症の危険因子になると考えられます。
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