甲状腺機能亢進症/バセドウ病と似ているセロトニン症候群、神経内分泌腫瘍(NET)とカルチノイド症候群[橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌病態内科学講座で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。副甲状腺/副腎/下垂体の診療を行っておりません。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) 糖尿病編 をクリックください。
(Cleveland Clinic HPより改変)
※長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。セロトニン症候群、神経内分泌腫瘍(NET)、カルチノイド症候群の診療は行っておりません。
Summary
セロトニン症候群は①選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)②セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)③トリプタン系片頭痛治療薬にセント・ジョーンズ・ワート含有健康食品・ハーブティー併用による脳内セロトニン作用増強。④カルチノイド症候群(甲状腺髄様癌も)⑤シビレタケ中毒 症状は精神不安定、発熱、発汗、高血圧、頻脈、振戦、下痢、意識障害で甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺クリーゼ類似。治療はセロトニン作動薬中止、重症例はICU管理[体温冷却、高血圧・頻脈にニトロプルシド、エスモロール。セロトニン拮抗薬シプロヘプタジン(ペリアクチン®]
神経内分泌腫瘍(NET)はセロトニン・ヒスタミン・ブラジキニン等を分泌しカルチノイド症候群を引き起こす。甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、傍神経節腫(パラガングリオーマ)が原因の事も。症状は甲状腺機能亢進症/バセドウ病類似で、セロトニン代謝物の作用によりセロトニン症候群症状、頭頸部の紅潮・四肢の浮腫(むくみ)、気管支収縮・カルチノイド心不全(肺動脈弁・三尖弁が線維化)。診断は尿中5-ヒドロキシインドール酢酸測定、オクトレオチドシンチグラフィ(オクトレオスキャン®)。治療は外科切除、切除しきれない・手術不能な場合、ソマトスタチンアナログのオクトレオチド。
Kwywords
セロトニン症候群,セロトニン,甲状腺髄様癌,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺,セント・ジョーンズ・ワート,症状,甲状腺クリーゼ,トリプタン
ヒスタミン,ブラジキニン,甲状腺髄様癌,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺,症状,紅潮,カルチノイド症候群,カルチノイド
セイヨウオトギリソウ(弟切草,セント・ジョーンズ・ワート)含有食品でセロトニン症候群
セロトニン系の精神安定剤、抗うつ剤
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI);マレイン酸フルボキサミン(ルボックス®、デプロメール®)、塩酸パロキセチン(パキシル®)、塩酸セルトラリン(ジェイゾロフト®)
- セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI);塩酸ミルナシプラン(トレドミン®)
- トリプタン系片頭痛治療薬;エレトリプタン(レルパックス®)、スマトリプタン(イミグラン®)、ゾルミトリプタン(ゾーミッグ®)、エレトリプタン(マクサルト®)、ナラトリプタン(アマージ®)
に、セイヨウオトギリソウ(弟切草,セント・ジョーンズ・ワート)含有健康食品・ハーブティーを併用すると、脳内のセロトニン作用が増強され、服薬後24時間以内にセロトニン症候群(serotonin syndrome)をおこします。
それ以外にも
- セロトニン等を産生する神経内分泌腫瘍 (NET)(カルチノイド症候群);甲状腺髄様癌でセロトニン症候群をおこした報告[Eur J Surg Oncol. 2001 Mar;27(2):219-22.]
- シビレタケ中毒
- 違法薬物の乱用
メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)[BMJ Case Rep. 2019 Mar 7;12(3):e228404.]
やせ薬シブトラミン[Hum Exp Toxicol. 2012 Apr;31(4):414-7.]
などで起こります。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病に、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミンの薬物乱用によるセロトニン症候群を合併した報告があります。[BMJ Case Rep. 2019 Mar 7;12(3):e228404.]
セロトニン症候群の治療は、
- 全てのセロトニン作動薬を中止。軽症状ならベンゾジアゼピン系薬剤に変更
- 重症例ではICU管理;体温冷却、高血圧・頻脈にニトロプルシド、エスモロールなど。セロトニン拮抗薬のシプロヘプタジン(ペリアクチン®)投与。ミオクローヌスには抗てんかん薬クロナゼパム(リボトリール®・ランドセン®)
カルチノイド腫瘍は、成長の遅い悪性腫瘍で、神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor/neoplasm: NET/NEN)の旧称です。神経内分泌腫瘍は、ホルモンやペプチドを分泌する神経内分泌細胞から生じた腫瘍の総称です。
神経内分泌腫瘍 (NET)は、
- 消化器(最多が直腸、膵臓)が約60%(消化器神経内分泌腫瘍)
- 肺や気管支が約30%;小細胞肺癌・神経内分泌大細胞癌を含む[Transl Lung Cancer Res. 2019 Dec;8(6):938-950.]
- 精巣、卵巣でも発生します
(Neuroendocrinology. 2004;80 Suppl 1:3-7.)
- 甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、傍神経節腫(パラガングリオーマ)も含まれます[Pancreas. 2010 Aug;39(6):775-83.]
セロトニン症候群に近い病態は、セロトニン等(セロトニン・ブラジキニン・ヒスタミン・プロスタグランジン・ポリペプチドホルモンなど)を産生する神経内分泌腫瘍 (NET)でも起こります(カルチノイド症候群)。
神経内分泌腫瘍 (NET)の20%未満にカルチノイド症候群がおこります。カルチノイド症候群は、門脈系で血中酵素や肝酵素によりセロトニンが分解されると起こり難くなります。よって、ほとんどが回腸に発生して肝転移する神経内分泌細胞癌です(肝静脈から体循環に直接入るため)。
肝転移したり、門脈を迂回する虫垂・直腸、膵臓、気管支の事もあります。肺の小細胞肺癌、膵島細胞癌、甲状腺髄様癌の事も[Eur J Surg Oncol. 2001 Mar;27(2):219-22.]。
カルチノイド症候群の症状は、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に似ており、
- セロトニン代謝物の作用によりセロトニン症候群の症状(Curr Opin Anaesthesiol. 2003 Jun;16(3):343-7.)
- ヒスタミン・ブラジキニンは血管拡張作用があるため、頭頸部の紅潮(精神的ストレス・食物・温かい飲料・アルコールで誘発)、四肢の浮腫(むくみ)
- 気管支収縮、カルチノイド心不全(肺動脈弁・三尖弁が線維化)をおこします。(Curr Opin Anaesthesiol. 2003 Jun;16(3):343-7.)
カルチノイド症候群の診断は、
- 尿中5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)測定
- オクトレオチドシンチグラフィ(オクトレオスキャン®)
カルチノイド症候群の治療は
- 外科的切除;原発性肺カルチノイドは根治切除できる事が多い
- 肝転移は肝動脈化学塞栓術(TACE)、ラジオ波焼灼術など
- 手術で切除しきれない場合、手術不能な場合、ソマトスタチンアナログのオクトレオチド酢酸塩注射液(サンドスタチン®)やランレオチド酢酸塩(ソマチュリン皮下注®)が有効。
オクトレオチド酢酸塩注射液(サンドスタチン)
ソマチュリン皮下注(ランレオチド酢酸塩)は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生下垂体腫瘍にも適応があります。
副作用として、下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生細胞をソマトスタチンアナログが抑制するため、中枢性(下垂体性)甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。