亜急性甲状腺炎の治療[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波 エコー 検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
亜急性甲状腺炎の診療停止について
日本での新型コロナウイルス感染が完全に終息するまで亜急性甲状腺炎の診療は停止(ステロイド投与中のコロナ感染は重症化するため)。
亜急性甲状腺炎のステロイド治療は、新型コロナウイルス感染にすぐ対処できるよう、コロナ病床のある病院で行った方が良いと思います。
甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。
その他、甲状腺の基本的な事は甲状腺の基本(初心者用) 橋本病の基本(初心者用)を、高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。
Summary
亜急性甲状腺炎の治療。副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)が劇的に効き、2-3日で痛みは消え、熱も下がり治ったように錯覚。服薬中止で1週間以内に元に戻る。ステロイドを平均3-4か月掛けてゆっくり着実に減量。齲歯(虫歯)治療中、高齢者では使い難い。甲状腺機能亢進症/バセドウ病に使う抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)は無効。ロキソニンなどの非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は対症療法で、亜急性甲状腺炎自体の炎症を抑えない。ステロイドの副作用、高齢、齲歯(虫歯)治療中、自然治癒する可能性などの理由で使用。
Keywords
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亜急性甲状腺炎の治療
副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)
亜急性甲状腺炎には副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)が劇的に効きます。たいてい服薬開始後2-3日で痛みも消え、熱も下がり、治ったような錯覚に陥ります。これにだまされ、服薬中止すれば(患者の自己判断・治療経験のない医者)、1週間以内に元の症状に戻り、最初から副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)投与をやり直さねばなりません。最善の方法は、エコー所見が改善しているか確認しながら副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)をゆっくり着実に減量するやり方です。(平均3-4か月は掛かります。)
具体的には、長崎甲状腺クリニック(大阪)でしかできない亜急性甲状腺炎の治療プロトコル をご覧ください。
ロキソニンなどの抗炎症薬(NSAIDs)
甲状腺機能亢進症/バセドウ病に使う抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)は効きません。
ロキソニンなどの抗炎症薬(NSAIDs)は、痛みを和らげる・熱を下げる対症療法で、亜急性甲状腺炎自体の炎症を抑えません。抗炎症薬を使用するのは、
- 副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の副作用などが危惧されたり、高齢(次項)などの理由で、同剤を3-4か月投薬できない
- 本当に存在する数年かかっても完全治癒しない亜急性甲状腺炎
- 非常に軽度の亜急性甲状腺炎で、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)を投与しなくても自然治癒する可能性が高い
時など。ただし、1. 2. の場合、破壊され尽くして永続的甲状腺機能低下症になるのは覚悟せねばなりません。
齲歯(虫歯)治療中の方に副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)投与はできません。
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、齲歯(虫歯)治療中の方に副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)投与をできません。他の甲状腺専門医施設では、気にせず副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)投与する所もあるでしょう。
副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)を20 mgから開始し、減量しながらとは言え、数か月間投与すると、正常な免疫も抑えられ、日和見感染[通常では感染しないような弱毒菌で重篤(重症)な感染症]を起こす危険が生じます。齲歯(虫歯)治療中は、傷口から口腔内の弱毒菌が血中へ入って日和見感染→感染性心内膜炎に至ります(糖尿病と歯周病⇒急性化膿性甲状腺炎・全身膿瘍・感染性心内膜炎)。
高齢者への副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)投与
高齢者に副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)を長期投与(亜急性甲状腺炎の場合、約3-4ヶ月)した場合、感染症の誘発(特に結核既往歴のある場合)、ステロイド糖尿病、ステロイド骨粗鬆症、ステロイド高血圧症、ステロイド白内障、ステロイド緑内障等の副作用が現れ易いので要注意。
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、70歳以上の高齢者に副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)投与するのを避けるようにしています。
73歳女性亜急性甲状腺炎患者、特に易感染性が無いのに、通常量より少な目のプレドニゾロン15mg/日投与で肺炎を発症した報告があります。セフトリアキソンナトリウム水和物点滴、トフスロキサシントシル酸塩を内服投与し、プレドニゾロンを3日おきに減量・中止して軽快。(第61回 日本甲状腺学会 O19-5 ステロイド治療中に肺炎を併発し、地域連携医療を必要とした亜急性甲状腺炎の一例)
60歳台への副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)投与
60歳台は、さほど高齢でも、中年でもない、中途半端な年齢です。
- 38度以上の発熱が数週間(少なくとも1週間以上)続く、あるいは抗炎症薬(NSAIDs)で解熱しても、効果が切れるとすぐに38度以上になる亜急性甲状腺炎
- 甲状腺中毒症が重篤(重症)な亜型で、かつ喘息などの理由でβブロッカー使用できない亜急性甲状腺炎
などには、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)を投与せざる得ないでしょう。長期投与(約3-4ヶ月)の合併症も考慮し、場合によっては
- 免疫不全によるニューモシスチス肺炎の予防にST合剤
- 糖尿病内科でインスリン自己注射指導
- ステロイド骨粗鬆症予防のビスフォスフォネート剤
- 降圧薬
- 眼科共観(ステロイド緑内障のため)
が必要です。
- 熱発軽度
- 痛み僅か
- 副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)投与のリスクが大きい
なら、ステロイド長期投与(約3-4ヶ月)のリスクを十分説明し、甲状腺機能正常化するかもしれないが、甲状腺全体が破壊され尽くし永続的甲状腺機能低下症もあり得るのを納得していただいた上で、経過観察するのが最良と思います。
ロキソニン、カロナールなどの非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は
- 37度台でも倦怠感強い人
- わずかな痛みでも抑えたい人
が頓服で飲めばよいでしょう。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,天王寺区,浪速区,生野区も近く。