甲状腺内視鏡手術・甲状腺ロボット手術[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、毎年の日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は内科系甲状腺専門医ですので手術を行っておりません。
また、甲状腺ロボット手術を行う病院とは提携しておりません(紹介状書いてくれと言うのも、お受けできません)。
甲状腺内視鏡手術は、大阪警察病院 内分泌外科と連携を開始しました。長崎甲状腺クリニック(大阪)で治療している方で、甲状腺内視鏡手術を希望される方のみを紹介いたします。
(※紹介状のみが目的の当院への受診は、一切、お断りしています)
蜘蛛の足のようなロボットアーム。人間の手は、機械の操作のみ。A.I.にやらせた方が、正確で失敗も無いため、いずれロボット自体が自動で手術する日が来るでしょう。
Summary
ロボット支援下甲状腺手術は、首の部分を切開せず、わきの下から内視鏡鉗子などを挿入するため、首に手術跡が出来ない美容上のメリットがある。改良されたda Vinci Sは、術者の指で操作する全可動域ロボットアーム、補助アーム、内視鏡カメラを用い、甲状腺周囲の剥離、反回神経周囲の繊細な操作や、十分なリンパ節郭清が可能との事だが?。甲状腺内視鏡手術は、甲状腺良性腫瘍、バセドウ病、甲状腺がんに保険適応が認められたが、高コストのディスポーザブルエナジーデバイス(使い捨ての手術器具)が、保険点数で認められないため、オペ自体が赤字になり、誰もやらんわな。
Keywords
ロボット支援下甲状腺手術,ロボット,甲状腺,内視鏡手術,バセドウ病,甲状腺がん,保険適応,ディスポーザブルエナジーデバイス,外科,手術
手術の傷口が小さく、整容性に優れる内視鏡下甲状腺手術であすが、まだ十分に普及していません。甲状腺周囲がデリケートな構造(解剖学的臓器特異性)であるのに加え、モニター下で手術鉗子操作をおこなう高難易度手術なのが主な理由。その上、手術時間も長くなります。
甲状腺内視鏡手術は、
- 2016年に甲状腺良性疾患(甲状腺良性腫瘍、バセドウ病など、副甲状腺疾患も)
- 2018年に甲状腺悪性腫瘍(甲状腺がん)
について保険適応が認められました。
甲状腺内視鏡手術を行うには厚生労働省が定めた施設基準を満たす必要があります。甲状腺内視鏡手術自体の手技は一様でなく、完全内視鏡手術から内視鏡補助手術まで様々で、術式が標準化されていません。もちろんロボット支援下甲状腺手術も含まれます。
首の部分、鎖骨の下、または、わきの下(腋窩)[前胸部、乳房(乳輪)、後耳介、口腔内の場合もあり]から内視鏡鉗子などを挿入するため、手術跡が小さい美容上のメリットがあります(整容性に優れている)が、普及は緩やかです。(図;Clin Exp Otorhinolaryngol. 2019 Feb;12(1):1-11.)
甲状腺内視鏡手術中に起きた不測のトラブル(出血が止まらない)を以前、耳にしました。
術式は、吊り上げ法と送気法(吊り上げ式よりも創が小さくて済む)に分類されます。
内視鏡手術は、内視鏡の手術野で特殊な器具を用いる高難易度手術です。術者の技量が求められると同時に様々な問題点があります。
※ディスポーザブルエナジーデバイス(使い捨ての手術器具);ハサミ型、鑷子(かんし)型、プローブ型などがある。その名の通り、高周波電流や超音波振動などの高エネルギーにより、組織の切離・凝固を行うため出血が少ない利点があります。甲状腺内視鏡手術以外の甲状腺手術でも重宝されます。使い捨てでないジェネレーター(エンジン)本体(かなり高価)と、使い捨てのディスポーザブル部分から成り、後者は1個で6-9万円します。
この問題を大阪警察病院 内分泌外科の鳥正幸先生に直接質問した所、「大阪警察病院では他科も含めた手術件数が多いため、大量一括購入するから、かなりコストを下げられるので問題ない」との事でした。
医学的な問題は、新しい技術に付き物の安全性と根治性です。長崎甲状腺クリニック(大阪)は内科系甲状腺専門医で、外科手術をする訳ではないため、的を外れているかもしれませんが、以下のことが考えられます。
- バセドウ病で血流が異常増加した甲状腺を、出血させる事無く安全に摘出できるのか?(ディスポーザブルエナジーデバイスは切るのと焼くのを同時に行うため、切った後は血管が熱凝固して出血しないそうです)
- 反回神経を傷付ける事なく剥離できるの?(難しそうやな)
モニター越しであっても神経刺激モニター(NIM)を使用して、反回神経の位置を同定します(本当、難しそうやな)エネルギーデバイスのスチーム熱による反回神経の熱損傷も起こりうるそうです。
- 周囲に浸潤した甲状腺がんを、周囲組織ごと完全に摘出できるのか?
- 視野の狭い内視鏡で甲状腺がんの転移リンパ節を一つ残らず完全に摘出できるのか?
- 手術中に予期せぬ出血が起きた場合、止血できるのか?(出血点が見つかればディスポーザブルエナジーデバイスで熱凝固できますが、見つからねば視野の狭い内視鏡での対処は難しいのでは?)
- 気管、食道に癒着した甲状腺を内視鏡で剥がせるのか?
などの疑問点が思い浮かびますが、いかがでしょうか?
その他、一般的に言われている問題点として
- 術後前頸筋収縮障害
- 鎖骨下アプローチでは胸骨が邪魔、豊満な体型や胸の大きな患者で手術操作が制限される
- 腋下アプローチ、乳輪アプローチでは皮下トンネルが長くなり、非侵襲的とは言えない。また、甲状腺全摘には不向き(左右両方を切除せねばならないので、内視鏡と反対側の切除はやりにくい)。
甲状腺内視鏡手術は全ての甲状腺機能亢進症/バセドウ病に適応がある訳でなく、制約はあります。大きすぎる甲状腺は、内視鏡で採れない様です。甲状腺容量は100-150mL(≒g) 程度までが目安でしょうか(第61回 日本甲状腺学会 O15-5 セカンドチョイスとしての内視鏡下甲状腺全摘術のすすめ)
甲状腺容量(重量)が大きい甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、手術時間が有意に長くなり、失血量が増加します。内視鏡的アプローチは大きな甲状腺に対して相対的禁忌の可能性がある。[World J Surg. 2009 Jan;33(1):67-71.]
一般的に、甲状腺癌に対する低侵襲ビデオ支援甲状腺摘出術(MIVAT)の禁忌は、
- 疑わしいリンパ節または転移性リンパ節の存在
- 重度の甲状腺炎
[Surg Endosc. 2012 Mar;26(3):818-22.]
長崎甲状腺クリニック(大阪)と提携している大阪警察病院 内分泌外科の術式は、
- 一部内視鏡手術の小切開MHM法(新Tori法)
- 先進医療Aから保険適応になった内視鏡手術(Tori法)
があります。
筆者は内科系甲状腺専門医なので、細かい手術手技を完全に説明できません。
1999年高度先進医療として認可されたda Vinci(ダビンチ)サージカルシステムによるロボット支援下甲状腺手術。長崎甲状腺クリニック(大阪)は内科系甲状腺専門医で、外科手術をする訳ではありません。よって、異論は多いと思いますが、外科手術を必要とする患者を見つけ出し、内分泌外科・頭頚部外科に紹介する者の立場から、意見を述べさせていただきます。
ロボット支援下甲状腺手術は、首の部分を切開せず、わきの下から内視鏡鉗子などを挿入するため、首に手術跡が出来ない美容上のメリットがあります。特に女性には有難い事だと思います。具体的には、頚部皮膚を特殊な鉤(かぎ)で持ち上げ、内視鏡鉗子を胸鎖乳突筋(顎から鎖骨をつなぐ筋肉)の間に通し、甲状腺の外側に出ます。これを「低侵襲」と言えるかは意見の分かれる所と思います。
大阪市立大学 附属病院にもda Vinci(ダビンチ)サージカルシステムがあり、もっぱら泌尿器科が前立腺手術に使用しています。前立腺と同じく、甲状腺は周囲に頚動静脈・反回神経など血管・神経の束があるためデリケートな手術が要求されます。旧世代のロボット支援下甲状腺手術は操作性が悪く、甲状腺周囲の剥離、反回神経周囲の繊細な操作、リンパ節郭清が十分に行えないため普及しませんでした。
改良されたda Vinci S(ダビンチS)は、術者の指で操作する全可動域ロボットアーム2本、補助アーム1本、内視鏡カメラ1本を用い、甲状腺周囲の剥離、反回神経周囲の繊細な操作や、十分なリンパ節郭清が可能との事です。
医療ロボット技術は、ほぼ完成されたのか!?。すべてをロボットまかせにすれば良いのか?幾つかの難点は残ります。
- わきから狭い経路を通るので、アーム同士が干渉し合い、手術操作が難渋する可能性
- メスなどの手術用具をロボットアームが持ち、直接人間が触れないため、触覚がない視覚のみで行う手術になります。筆者は内科系なので判りませんが、人間の手の感覚なしでどうなのでしょうか?
- もし手術中に、機械が故障し、簡単に修理できないた場合、中止して後日やり直しになるのでしょうか?
筆者は内科系なので、的を得ていない所もあるかもしれませんが、内科系甲状腺専門医の立場で書かせていただきました。
最後に問題なのはda Vinci(ダビンチ)の値段です。da Vinci(ダビンチ)一式で3億円以上するらしく、購入後の維持費もバカにならないため、採算が採れるとは到底思えません。現在の外科手術は、使用せず用意しただけの器具でも廃棄処分する不条理な規則がまかり通っており、外科手術しても病院経営が成り立たない異常な状況に拍車が掛かります。外科を志望する学生も減るわな・・・。
そもそもロボット手術は、遠い戦場にいる負傷兵を、安全な軍の病院から治療するためアメリカ軍主導で開発が進み、その後民間企業が引き継いで完成させたものです。これならアメリカ本国から世界中のアメリカ兵を手術できます。
軍事利用なら、それで良いかもしれませんが、民間の医療に遠隔操作ロボット手術を行うなら問題山積です。離島やへき地の手術を都心から行うのが医師偏在対策の切り札と言う人もいます。医療の世界に”絶対”はありません、不測の事態が起こり、ロボット手術を中止し、人の手に切り替えねばならない時、執刀医が現場にいなければ患者は死ぬしかありません。戦場なら「祖国のために命を落とした」で済みますが、民間では通じません。責任問題が発生します。コンソール(ロボット操縦機械)を操作する医師なのか、ロボットを開発したメーカーなのか、通信障害なら光ファイバーを管理するNTTなのか責任のなすり合いになります。
さらに恐ろしいのは悪意のあるハッカーです。システムに割り込み操作システムを乗っ取られれば、ハッカーの操作一つで手術中の殺人も可能になります(医療マンガ、ドクターKシリーズのK2でこのようなストーリーがありました)。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。