放射線誘発性甲状腺癌 ・放射線甲状腺炎[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です
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甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。
Summary
放射線誘発甲状腺癌は甲状腺乳頭癌で予後良好。放射線による遺伝子変異はRet/PTC再配列異常。福島原発事故と異なり、チェルノブイリ原発事故では小児の屋内退避がなされず、ヨウ素131を吸い込んだだけでなく、汚染された牛乳、農作物、水道水が制限されず流通したためヨウ素131内部被曝の小児甲状腺癌患者が急増。被曝後5年以降発症、リンパ節転移・遠隔転移多いが死亡率低い。40歳以上の甲状腺は放射線発がんの危険ない。放射線甲状腺炎は、甲状腺以外の癌の放射線外照射で起こり、甲状腺機能低下症に。超音波(エコー)で甲状腺は萎縮するが破棄性変化に乏しい。
Keywords
放射線誘発甲状腺癌,甲状腺乳頭癌,遺伝子変異,Ret/PTC再配列,ヨウ素131,内部被曝,チェルノブイリ,小児甲状腺癌,転移,放射線
被曝(ひばく)とは人体が放射線にさらされる事です。被ばくには
- 外部被曝(X線、ガンマ線、ベータ腺、中性子線が体外から当たる);被ばく量は、時間、距離、遮蔽に左右されます
- 内部被曝(放射性物質が体内に入り込んで放射線を出す);侵入経路は呼吸器、消化器、皮膚。一度、体内に取込まれた放射性物質は、物理的減少(放射性崩壊、自然崩壊)を待つか、代謝による排出を待つしかありません
いずれの被ばくでも、甲状腺に何らかの影響が出ます。最悪なのは甲状腺がんの発生です。
チェルノブイリ原発事故で発生した小児の放射線誘発性甲状腺乳頭癌の研究から、分かったのは、
- 放射線により誘発される甲状腺がんは、大半が甲状腺乳頭癌
- 放射線と無関係の甲状腺乳頭癌と同様に、予後が良い
現在、放射線誘発の証拠となる特異的な遺伝子異常は発見されていませんが、放射線によりDNA二重鎖切断と修復異常(Ret/PTC再配列異常)が主な原因と考えられています。これは、放射線と無関係の小児甲状腺乳頭癌の遺伝子変異と同じです。BRAF変異、RET/PTC1またはRET/PTC3再配列の頻度は、放射線誘発性小児甲状腺乳頭癌と通常の小児甲状腺乳頭癌との間で差はありません。BRAF V600E 変異は発症年齢が小児→青年→若年成人→成人と上がると増加し、RET/PTC1またはRET/PTC3再配列は減少。
[Hormones (Athens). Jul-Sep 2009;8(3):185-91.]
原爆(原子爆弾)による放射線誘発性甲状腺癌の調査は、放射線影響研究所により現在も続いています。原爆(原子爆弾)による放射線誘発性甲状腺癌は
- 被曝線量が多いほど
- 若年者であるほど
- 女性の方が男性より30%多く
おこるとされます。(Radiat Res 168:1-64, 2007)
体内に入ったヨウ素は甲状腺のみに取り込まれ濃縮されます。それは放射性ヨウ素であるヨウ素131も同じであるため、ヨウ素131による内部被曝(体内に入り込んで放射線を出す)は甲状腺とその周囲臓器(実際は甲状腺のみ)におこります。さらに、この濃縮効果が問題で、全身の被曝量は大した事なくても、濃縮されたヨウ素131の内部被曝量は大きくなります。
チェルノブイリを含めたこれまでの研究から、
- 40歳以上では放射線誘発性甲状腺癌の危険はありません。細胞分裂が激しい乳幼児期が最も放射線誘発性甲状腺癌のリスクが高く、年齢とともにリスクは下がります。(Radiat Environ Biophys. 2011; 50(1): 47-55. )
- 放射線誘発性甲状腺癌が発生するのは被曝後5年以降である事が分かりました。(Exp Oncol. 2010; 32(3): 200-4.)
- ヨウ素131の半減期は8日なので、原発事故後に生まれた子供には、放射線誘発性甲状腺癌は起こらない。
小児の放射線誘発性甲状腺癌は、放射線と無関係の小児甲状腺癌と基本的に同じと考えられていました。しかし、福島県の甲状腺検診で、原発事故後4年以内に見つかった小児甲状腺癌の組織型と遺伝子変異は成人とほぼ同じ(福島県「県民健康調査甲状腺検査(先行検査=1回目の検査)」の結果)で、下記のチェルノブイリ小児甲状腺癌・日本の医療機関で従来報告された組織型・遺伝子変異(小児甲状腺癌)と大きく異なりました。
ヨウ素131による内部被曝を防ぐには?
放射性ヨウ素(ヨウ素131)による内部放射線被ばく(体内に入り込んで放射線を出す)を防ぐには、放射性ヨウ素(ヨウ素131)が甲状腺に入り込むのをブロックすればよいのです。
放射性ヨウ素(ヨウ素131)にさらされる前の24時間以内、 又はさらされた後の2時間以内に安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム:KI)を服用すると、甲状腺への放射性ヨウ素(ヨウ素131)の集積を90%以上減らせます。
ばく露後8時間以内なら、約40%減らせますが、ばく露後16 時間以上経つと安定ヨウ素剤の効果はほとんどありません。
福島県原発事故の時は、津波による電力喪失から放射性ヨウ素(ヨウ素131)が飛散する水素爆発まで時間が充分ありましたが、むしろそれは例外的。いきなり水素爆発する原発事故なら、保健所や自衛隊の特殊化学部隊が安定ヨウ素剤を供給するのが間に合いません。
安定ヨウ素剤の効果は、少なくとも24時間は持続するので、その間に非汚染地区に避難します。
ヨウ素アレルギーがある人はどうすればよいか?炭酸リチウムは、そう病・双極性障害・うつ病(季節性うつ病、SSRI単剤で治療効果が得られない場合)治療薬ですが、ヨウ素(ヨード)と同じように、[NIS(ナトリウム- ヨード シンポーター)から]甲状腺ホルモンをつくる濾胞細胞に取り込まれ、ヨウ素(ヨード)の取り込みを競合阻害します[Thyroid. 1998 Oct; 8(10):909-13.](炭酸リチウム(商品名リーマス)と甲状腺の関連)。
チェルノブイリ原子力発電所事故では、急性放射線障害患者の放射線好中球減少症に対して炭酸リチウム(900mg /日の治療量)が顕効した報告があります[Gematol Transfuziol. 1989 Mar;34(3):16-23.]。
ただ、いざ緊急時には誰もここまで頭が回らないし、安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム:KI)を可能な限り多くの人に配給するので精一杯と思いますが・・。
I-131より恐ろしいI-132
原発事故ではヨウ素131(I-131)よりも恐ろしい放射性ヨウ素が拡散されました。ヨウ素132(I-132)です[※甲状腺の検査で使うヨウ素123(I-123)ではありません]。
Te-132(テルル)は短半減期(3.2日)核種で、Te-132(テルル)がβ崩壊することでできる娘核種がI-132(半減期2.295時間)です。半減期が8.02日のI-131と比べると甲状腺への影響は少なそうに見えますが、実際は
- I-132のβ線量はI-131の2.6倍、ガンマ線量は5.6倍
- Te-132(テルル)に続くI-132の時間を置いた2回目の被ばく(修復されかけたDNAに第2波の打撃)
のため、I-131よりも大きな放射線障害になります。
グラフはウクライナ共和国に隣接するベラルーシ共和国のがん登録で、手術された甲状腺がん患者10万人当たりの比率を、年齢別にみたものです。小児(0-15歳未満)の甲状腺がん手術患者数は事故後4年で増加し、9-10年でピークに達します。その後は減少傾向ですが、被曝時の小児が青年期に移行するためです。15年後には被曝時の小児が全て青年期に移行し、事故前の水準に戻ります。
青年期も同じく事故後5年で増加し、その後は被曝時の小児も移行してくるため、右肩上がりに増えていきます。若年成人期も同様です。
[Hormones (Athens). Jul-Sep 2009;8(3):185-91.][Arq Bras Endocrinol Metabol. 2007 Jul;51(5):748-62.]
福島原発事故の被災地では、早急に小児の屋内退避が指示され、放射能汚染されていない支援物質が運び込まれたため、このような人的被ばくは皆無でした。
チェルノブイリ小児甲状腺癌の特徴は、Tuttleらがまとめたもの(Clin Oncol 23:268-275,2011)では
- 危険因子として、放射線被曝以外に、甲状腺癌の家族歴・甲状腺結節(しこり)・ヨード欠乏(日本人ではあり得ない)・肥満があります
- チェルノブイリ事故後6-25年の20年間で5000人以上の小児甲状腺癌が発生
- 放射線誘発の証拠となる特異的な遺伝子異常はなく、放射線と無関係の小児甲状腺乳頭癌の遺伝子変異と同じ
BRAF V600E 変異が事故後は約10-15%、年数が経ち発症年齢が小児→青年→若年成人→成人と上がると割合が増加
RET/PTC1 と RET/PTC3再配列が事故後は大半、年数が経ち同様に発症年齢が上がると減少
[Hormones (Athens). Jul-Sep 2009;8(3):185-91.](下のグラフ) - 早期発見に関らずリンパ節転移60-70%(進行型が半数以上)
- 早期発見に関らず遠隔転移10-15%
- 術後の放射性ヨウ素大量療法での治療成績が良好
- 短期再発率17%
- 再発率30%(平均観察期間10年)
- 死亡率1%以下
放射線誘発性および、放射線と無関係の小児甲状腺乳頭癌の遺伝子変異
歯科治療による放射線被曝で、甲状腺がんのリスクが上がるとの報告があります。
- 歯科用断層撮影(CT)の特に下顎CT スキャンを受けた45 歳以下の女性における甲状腺がん発生リスクは 100 万人当たり 12 例。ただしコントロール(対照群)が無いため、本当に下顎CT スキャンのせいか疑問が残ります(J Dent Res. 2015; 94(1): 27-35.)
- 歯科X線診断の回数が10 回以上の場合、甲状腺がん発症のオッズ比は 5.4[95%CI:1.1-26.7]で、歯科X線を受けた平均年齢は、女性 34.7 歳(10-65 歳)、男性 39 歳(6-69 歳)(Acta Oncol. 2010;49(4): 447-53.)
放射線治療により発生する放射線誘発性甲状腺癌(radiation induced second primary malignant neoplasm or second primary cancer)の原因は、
- 特に小児期・若年時・AYA(young adult)世代に発症した甲状腺以外の癌
①頭頚部癌、頭頚部の悪性リンパ腫、頭頚部が照射野に入る肺癌などに対する放射線外照射(体の外から放射線を当てる事)
②白血病の中枢神経再発に対する頭蓋・全脊髄照射、骨髄移植前の全身放射線照射
(Eur J Pediatr. 2016 May;175(5):677-83.)(Pediatr Radiol. 2006 Sep;36 Suppl 2(Suppl 2):121-5.)
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小児期に頭部白癬・扁桃腺腫大・胸腺腫大など良性疾患治療目的で行った放射線外照射(体の外から放射線を当てる事)。小児期における甲状腺へのX線照射では、0.1 Gy程度の低線量から有意な甲状腺癌リスクの増加が見られ、被曝量とともに直線的に増加(Radiat Res. 1995 Mar;141(3):259-77.)
- 脳腫瘍などに行う放射線内照射治療[腫瘍や患部に放射性同位元素(アイソトープ)を取り込ませる]
放射線誘発性甲状腺癌との因果関係を証明する事はできませんが、
- 数十年前、60Co(コバルト)を頭頚部癌に照射していた[筆者が出くわした症例]
- 30年前、嚢胞性の鞍上部頭蓋咽頭腫を摘出後、再発予防のため198Au(金)コロイド腫瘍腔内照射(26mCi)を施行した
(β 線を発生する放射線コロイド内照射治療は、局所的な効果があるが、全身への影響は少ないため70 年代に普及しました。)(第56回 日本甲状腺学会 P2-102 小児期の頭蓋咽頭腫に対する放射線コロイド内照射後に甲状腺乳頭癌を発症した1 例)
症例があります。被曝時の年齢が若いほど・累積(合計)放射線量が多いほど発症しやすくなります。40歳以上での被曝では発症しません。組織型は甲状腺乳頭癌のみになります。
放射線誘発性甲状腺癌は40歳未満の人が被曝した際に起こります。
原発事故後の放射線誘発性甲状腺癌予防は、放射性ヨウ素(I-131)を体内に入れない事に尽きます。
飛び散った放射性ヨウ素(I-131)の半減期(放射線量が半分になるまでの期間)は8日なので、3週間もすれば放射能はほぼ消失します。それまでの間、
- シェルター内、建物内から出ない
- 防護マスク・防護服の着用
- 放射能汚染された食物・水を摂らない
などの措置が必要です。
原発事故から放射性ヨウ素(I-131)が飛んで来るまで時間的余裕があれば、事故マニュアルに乗っ取り、行政が安定ヨウ素(ヨウ化カリウム;KI)を配布する可能性があります(現実的には行政も被災して機能停止、職員も出勤できない、交通も遮断され被災地に行けない等の理由で不可能に近い)。安定ヨウ素剤を事前に摂取すれば、放射性ヨウ素(I-131)が甲状腺へ取込まれるのを抑制できます。福島原発事故に見舞われた一部の地域では、水素爆発が起きる前に安定ヨウ素剤を内服すべきだったとされます。
夜間、休日、連休中など、行政が迅速に動かない時、役所自体が被災して機能停止した時は、「自分の身は自分で守るしかない」のです。安定ヨウ素(ヨウ化カリウム;KI)供給が期待できない時には、放射性ヨウ素(I-131)が甲状腺に入り込まないように、大量のヨード(ヨード)含有物[昆布(こんぶ)・ひじき・モズク]を食べ、昆布出汁(こんぶだし)をジャンジャン飲み、イソジンうがいを頻回にする・のどヌールスプレーを噴霧しまくるなどして、甲状腺を緊急停止させます。[あくまで、非常時のみです。普段は絶対にしてはいけません(うがい薬(イソジン/ポビドンヨード)で甲状腺障害)。]
[Thyroid. 2022 Jun;32(6):607-610.][Thyroid. 2012 Apr;22(4):344-6.][Thyroid. 2017 Jul;27(7):865-877.]
動物実験の報告ですが、マウスにあらかじめヨウ素(ヨード)含有物[干し昆布(こんぶ)、イソジン嗽薬希釈液、ヨード卵]を食べさせ、その6時間後にI-131(74kBq/匹)を経口投与すると、ヨード(ヨード)含有量に応じて I-131の甲状腺取込みは抑制されたそうです。(第60回 日本甲状腺学会 O9-2 放射性ヨウ素のマウス甲状腺取込みに影響を与える物質に関する 研究)
職業被曝による労災認定
労働基準法施行規則第 35 条別表第 1 の 2 七 職業がんに関係するもの」では、「電離放射線にさらされる業務による白血病,肺がん,皮膚がん,骨肉腫,甲状腺がん,多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫」が記載されています。該当する業務歴がある者は
- 早期発見のために特殊検診が定められる[現実に甲状腺がん検診のために甲状腺超音波(エコー)検査している所など見た事も、聞いた事も無いが]
- 退職後も健康手帳が発行され特殊健診を受けられる(筆者が知らないだけかな・・)
となっています。平成28年厚生労働省の「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」では、
放射線業務従事者に発症した甲状腺がんの労災補償は、以下の3項目を総合的に判断
- 被ばく線量が100 mSv(ミリシーベルト)以上[食品安全委員会による「食品中に含まれる放射性物質に 係る食品健康影響評価(2011 年 10 月」)、UNSCEAR「国連科学委員会による今後の作業計画を 指し示す報告書」]
- 放射線被ばくから、がん発症までの潜伏期間が5年以上(Exp Oncol. 2010; 32(3): 200-4.)
- 放射線被ばく以外のリスクファクターの有無[甲状腺刺激ホルモン(TSH)高値、ヨウ素(ヨード)過剰摂取]
これらは、チェルノブイリ原発事故のデータを根拠としています。
福島第一原子力発電所事故の労災認定
2016 年、厚生労働省は、福島第一原子力発電所事故作業で被ばくした東京電力(東電)40代男性社員に発生した甲状腺がんを労災認定しました。
日経ニュースによると、男性社員は1992年に東電に入社し、2012年4月まで放射線業務に従事。入社後の累積被曝線量は149.6ミリシーベルト、福島事故後が139.12ミリシーベルトなので、ほとんど事故後の被曝。2011年3月の原発事故は屋外で遭遇、事故発生後も対応に当たり、原子炉の水位計確認や燃料給油などを担当したそうです(非常に責任感が強い方のようです)。
2018 年、2人目の甲状腺がんが労災認定されました。50代男性社員は原発の協力会社[東京電力(東電)の関連会社でしょうか?]に勤め、1993年11月~2011年3月の約11年間(19年間とは書かれていないので業務から離れていた時期もあるのでしょうか?)複数の原発で放射線業務に従事。2011年の原発事故後は原発構内で電気設備の関連工事に従事し、緊急時の特例基準100ミリシーベルトを超える約108ミリシーベルトの被曝をされたそうです(本当、大変なお仕事で事故後の処理作業を行われた方に敬意を表します)。
職業被曝の線量限度
2007年の国際放射線防護委員会(ICRPの勧告では、職業被曝の線量限度を100mSv(ミリシーベルト)/5年 かつ 50mSv/年としています。(一般の人では1mSv/年)
職業被曝を避けるための甲状腺防護用具
客室乗務員(CA;キャビンアテンダント、スッチー)は、同じ年収の他職種に比べて、甲状腺がん、乳がん、子宮がん、頭頸部がん、メラノーマを含む皮膚がん、消化器(胃腸)がんの発生率が高く、しかも勤務歴が長いほど発生率がより高くなります。原因として、
- 飛行中に地球圏外から降り注ぐ放射線(ゲッター線も?)を浴びる
- 勤務時間が不規則で、体の免疫力が低下する(ただし、これは医師・看護師など医療従事者でも言える)
国際線なら特にひどく、一年中、睡眠不足・時差ボケがおこる
- 殺虫剤や防火材、ジェット燃料など発がん物質に接する頻度が高い
- 気圧の変化が健康に影響する可能性(これは特に血管系に)
が考えられます。
(Environ Health. 2018 Jun 26;17(1):49.)
また、客室乗務員は喉(のど)の違和感を含む呼吸器疾患の罹患率が高く、受動喫煙の影響と考えられます(今でこそ全面禁煙ですが)[Environ Health. 2011 Sep 24;10(1):81.]。
放射線甲状腺炎は、甲状腺以外の癌(頭頚部癌、頭頚部の悪性リンパ腫、頭頚部が照射野に入る肺癌・食道癌など)の放射線外照射(体の外から放射線を当てる事)により起こります。
放射線量により発症までの期間は異なり、数か月〜数十年後とされます。甲状腺組織の破壊が強いと甲状腺は萎縮し、甲状腺機能低下症になります。
外部からの放射線量が26 Gyを超えると放射線甲状腺炎による甲状腺機能低下症がおこります。また、前述の放射線誘発性甲状腺癌だけでなく、のう胞変性、破壊性甲状腺炎(無痛性甲状腺炎)、甲状腺機能亢進症/バセドウ病、良性濾胞腺腫、の発症率が上がります。[Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1995 Mar 30;31(5):1165-70.]
子宮頸がん頸部リンパ節転移に放射線外照射した後の放射線甲状腺炎 超音波(エコー)画像 超音波(エコー)画像 (拡大);内部は等エコー、比較的均一。
頚部食道がん放射線治療後だが橋本病
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
も御覧ください
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,天王寺区,東大阪市,浪速区も近く。