下垂体腫瘍と視神経障害・内分泌エマージェンシー下垂体卒中・蓄膿(副鼻腔炎)で下垂体機能低下症(下垂体膿瘍)[橋本病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌病態内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
下垂体腫瘍による視交叉下方からの圧迫で両耳側半盲の視力障害。下垂体梗塞・出血が生じる下垂体卒中は大きな下垂体腺腫・妊娠出産(シーハン症候群)・ラトケ嚢胞(ラトケのう胞)・抗凝固剤・下垂体負荷試験・ブロモクリプチン/カベルゴリン・糖尿病が誘因。症状は雷鳴頭痛、視力視野障害、眼球運動障害、意識障害で緊急手術に。副腎不全に対し迅速ACTH試験後、直ちに副腎皮質ホルモン補充。下垂体膿瘍は敗血症/髄膜炎後, 蝶形骨洞炎[蓄膿(副鼻腔炎)]、下垂体腫瘍内壊死、下垂体腺腫手術後が原因で下垂体前葉機能低下、視力・視野障害、発熱・髄膜炎をおこす。診断は造影MRIで輪状増強、治療は脳外科手術。スパルフロキサシンも有効。
Keywords
下垂体腫瘍,下垂体梗塞,下垂体卒中,下垂体腺腫,両耳側半盲,視力視野障害,副腎不全,下垂体膿瘍,甲状腺
下垂体腺腫の5%に、梗塞・出血・出血性梗塞が生じます。
- 特に、大きな下垂体腺腫
- ラトケ嚢胞(ラトケのう胞)
- 妊娠出産(シーハン症候群)
- 抗凝固剤投与中
- 下垂体前葉機能低下症[Medicine (Baltimore). 2022 Dec 16;101(50):e32026.]
- 下垂体負荷試験
- ブロモクリプチン(パーロデル®)/カベルゴリン(カバサール®)投与
- 糖尿病、高コレステロール血症[Medicine (Baltimore). 2022 Dec 16;101(50):e32026.]
- 甲状腺乳頭癌(PTC)の下垂体転移[Surg Neurol Int. 2022 Jun 17;13:253.]
が下垂体卒中の誘因になります。
下垂体卒中の症状は、
- 雷鳴頭痛(生涯で最大の頭痛)(90%)
- 急激な両側の視力低下、視野障害(両耳側半盲)(50%)
- 眼球運動障害(50%)
- 意識障害(10%)
- 急性副腎不全と尿崩症
で、視力視野・意識障害は緊急手術の必要があり、遅れると失明します。経蝶形骨洞手術による下垂体腫瘍および血腫除去による視神経圧迫解除が標準的治療法。蝶形骨洞副鼻腔炎がある場合や、厚い蝶形骨壁(約10mm)のConchal typeでは、開頭減圧術により下垂体腫瘍および血腫除去。
また、副腎不全に対して迅速ACTH試験などを行い、直ちに副腎皮質ホルモン補充開始する必要があります。
教科書的な雷鳴頭痛とは限りません。例えば、いきなり大きな下垂体卒中を起こすのではなく、わずかな下垂体卒中を、ちびりちびり起こす事により、数年~十数年間、軽い頭痛を繰り返す場合があります(minor stroke)。ある時、頭痛が頻繁に起こるようになり(もちろん激痛ではありません)、CT、MRIを撮って初めて下垂体卒中が見つかります(minor stroke 時期のCT診断は困難で、MRIが必要)。
甲状腺乳頭癌の下垂体転移で下垂体卒中[Surg Neurol Int. 2022 Jun 17;13:253.]
生涯で最大の頭痛・徐々に増強する頭痛は要注意!
下垂体卒中のみならず、生涯で最大の頭痛・徐々に増強する頭痛は危険な頭痛です、要注意!
くも膜下出血が第一に考えられ、頭部CTにて診断されますが、前述の如く下垂体卒中のminor stroke はCT診断が困難で、MRIが必要。
甲状腺乳頭癌(PTC)の下垂体転移による下垂体卒中が報告されています[Surg Neurol Int. 2022 Jun 17;13:253.]。
下垂体膿瘍は
- 敗血症/髄膜炎後
- 蝶形骨洞炎の波及[蓄膿(副鼻腔炎);副鼻腔(蝶形骨洞)と頭蓋内は解剖学的に近接している。びまん性汎細気管支炎(DPB)、アスピリン喘息は、高率に副鼻腔炎を合併している。(急性副鼻腔炎で下垂体膿瘍・眼窩内膿瘍)]
- 下垂体腫瘍内壊死
- 下垂体腺腫の手術後
- ラトケ嚢胞[Surg Infect (Larchmt). 2014 Jun;15(3):358-60.]
が原因です。下垂体膿瘍の約30%は他の病変内に発生します[Surg Infect (Larchmt). 2014 Jun;15(3):358-60.]。
下垂体膿瘍の症状は
- 下垂体前葉機能低下症
- 視力・視野障害
- 発熱・髄膜炎
- 偶然かどうか不明だが無痛性甲状腺炎を合併[J Clin Neurosci. 2005 Feb;12(2):190-3.]
です。
下垂体膿瘍のMRI 診断は、T1低信号、T2高信号、DWI高信号、造影にて輪状(リング状)増強。
下垂体膿瘍の治療は、
- 脳外科手術が主体
- スパルフロキサシンの経口投与による治療が成功し、外科的治療は不要だった症例も報告されています。[「下垂体膿瘍に対するスパルフロキサシン経口投与による治療成功例」Internal Medicine. 47, (12), pp. 1147-1151, 2008-06. (一社)日本内科学会]
蝶形骨洞副鼻腔炎で眼窩先端部症候群・視神経障も
蝶形骨洞炎の波及[蓄膿(副鼻腔炎)]で、眼窩先端部症候群(眼瞼下垂も)や視神経障害も起こります。副鼻腔アスペルギルス症は、限局性の副鼻腔炎で、石灰化を伴い、骨破壊を起こします。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,浪速区,生野区も近く。