褐色細胞腫クリーゼ,原因,症状,診断,治療[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(第二内科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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褐色細胞腫クリーゼ(本ページ)
クッシング症候群は、 高血圧・糖尿病・メタボ、実は副腎の病気/副腎腫瘍(クッシング症候群)、 アレルギー性鼻炎薬で副腎の病気に? を御覧ください。
原発性アルドステロン症は 高血圧、実は副腎の病気/副腎腫瘍(原発性アルドステロン症) を御覧ください。
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Summary
褐色細胞腫クリーゼは褐色細胞腫による高血圧クリーゼ。腹部圧迫、妊娠、過剰なストレス、メトクロプラミド、β遮断薬単独使用、ステロイド、ヨード造影剤、悪性褐色細胞腫治療による腫瘍崩壊が原因で腫瘍から高濃度カテコールアミンが放出されて生じる。直ちに降圧しなければ生命にかかわる。症状は高血圧クリーゼ、急激な循環血液量減少で脱水、心拍数が上がり過ぎ心原性ショック、腫瘍破裂で背部痛。急性期治療は降圧療法でαブロッカー[フェントラミン(フェントールアミン):レジチーン®]持続点滴、Ca拮抗剤(ニカルジピン:ペルジピン®)持続点滴、ニトロ剤ミリスロール®持続点滴。
Keywords
褐色細胞腫クリーゼ,褐色細胞腫,高血圧クリーゼ,βブロッカー,原因,症状,治療,αブロッカー,フェントラミン,診断
褐色細胞腫クリーゼとは、褐色細胞腫による高血圧クリーゼの事です。
高血圧クリーゼは、直ちに降圧しなければ生命にかかわる危険な状態です。
拡張期血圧(下の血圧)が120mmHg以上になり、高血圧脳症(頭痛・悪心・嘔吐・けいれん・意識障害)や、心不全・肺水腫・腎不全、眼底出血・乳頭浮腫を伴います。
褐色細胞腫クリーゼの原因は
- 腹部圧迫(重い物を持つ、前屈姿勢、スポーツのプレイ中)
- 妊娠(子宮による圧迫)
- 過剰なストレス:手術など
- 薬剤:①ドパミンD2受容体拮抗薬[スルピリド(ドグマチール®)、メトクロプラミド:プリンペラン®)、可能性は低いがドンペリドン(ナウゼリン®)]
②β遮断薬(βブロッカー)単独使用(血管平滑筋を弛緩させるβ2受容体をブロックするためα作用が増強[Clin Endocrinol (Oxf). 2006 Aug;65(2):186-90.]。αβブロッカーなら良い
③カフェイン
④ステロイド投与;グルココルチコイドは、tyrosine hydroxylase, dopamine ß-hydroxylase, phenylethanolamine N-methyltransferaseなどのカテコールアミン生合成酵素を誘導[Eur J Endocrinol. 2008 Mar;158(3):423-9.][Endocr Rev. 1998 Apr;19(2):101-43.]
⑤ヨード造影剤
- 悪性褐色細胞腫に対する治療:①CVD(抗癌剤)化学療法、②I-131 MIBG内照射、③放射線外照射、④経カテーテル動脈塞栓術(TAE)により腫瘍が崩壊する際、一気にカテコールアミンが放出されます。
などで、腫瘍から高濃度のカテコールアミンが放出されて生じます。
褐色細胞腫クリーゼの症状は、
- 高血圧クリーゼ;頭痛(39.5%)[J Endocrinol Invest. 2022 Dec;45(12):2313-2328.]
- 循環血液量の急激な減少による脱水・ショック
- 心拍数が上がり過ぎると、心原性ショックをおこし、逆に血圧正常化する事があります[Herz. 2014 Feb;39(1):156-60.]。例えば、心拍数169/分、血圧137/108mmHg(第55回 日本甲状腺学会 P1-03-12 バセドウ病治療中に褐色細胞腫クリーゼを来した1例)
- 褐色細胞腫多系統危機(pheochromocytoma multisystem crisis);心臓(99.0%)、肺(44.0%)、腎臓(21.5%)。高体温症、多臓器不全、脳症、不安定血圧が特徴。[J Endocrinol Invest. 2022 Dec;45(12):2313-2328.]
- 腫瘍内出血・褐色細胞腫腫瘍破裂による後腹膜への出血では、背部痛をともなう高血圧発作。
褐色細胞腫クリーゼの診断は、
- 褐色細胞腫の存在が既に判っており、腫瘍内出血がある場合、腹部超音波(エコー)、腹部単純CTで褐色細胞腫内の液面形成を確認
- 褐色細胞腫の存在が不明で、いきなり褐色細胞腫クリーゼをおこしている場合、迅速に褐色細胞腫を探します。ただし、ヨード造影剤の使用は原則禁忌。どうしても必要な場合、患者同意の上、フェントールアミン(フェントラミン:レジチーン®)を準備して行う。
褐色細胞腫クリーゼの治療は、
- 降圧療法(急性期):
αブロッカー[フェントラミン(フェントールアミン):レジチーン®]の持続点滴(血管拡張による頻脈を起こすので、経口でβブロッカー併用)
Ca拮抗剤(ニカルジピン:ペルジピン®)持続点滴
ニトロ剤ミリスロール®持続点滴
- 降圧療法(亜急性期):
α1ブロッカー(血管拡張による頻脈・不整脈を起こすのでβブロッカー併用)
αβブロッカー[カルベジロール(アーチスト®)、ラベタロール(トランデート®)]も使用可能だが、β作用の方が相対的に強いため、米国のガイドラインでは推奨されていない。(J Clin Endocrinol Metab. 2023 Apr 13;108(5):e200.)
- 心原性ショックの治療
体外式膜型人工肺(ECMO)とIMPELLA CP心臓ポンプ[J Card Surg. 2020 Sep;35(9):2367-2369.]
経皮的左心室補助装置(percutaneous left ventricular assist device)[J Cardiovasc Dev Dis. 2022 Feb 27;9(3):71.]
- 手術摘出:腹腔鏡下腫瘍摘出術
術前①選択的α1ブロッカー(ドキサゾシン:カルデナリン®)投与
②循環血液量の確保のため、一日10~12gの塩分摂取または生食点滴
褐色細胞腫クリーゼの死亡率は13.8%。吐き気と嘔吐は死亡率の高さと有意に相関。[J Endocrinol Invest. 2022 Dec;45(12):2313-2328.]
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