小児橋本病・小児無痛性甲状腺炎[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学附属病院(現、大阪公立大学附属病院) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は小児科ではありません。20歳未満の方の診療を行っておりません。
Summary
小児橋本病の3/4は甲状腺機能正常で、5年以内に30%が無痛性甲状腺炎を発症。3-6歳で超音波(エコー)検査の橋本病性変化(慢性炎症)が認められる。長崎甲状腺クリニック(大阪)の超高解像度超音波診断装置で小児橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊の程度を評価。小児橋本病の破壊性のう胞(嚢胞変性)は境界が不明瞭、一方、成長過程で現れるコロイドのう胞(コロイド嚢胞)は境界が比較的明瞭、甲状腺自体も白く(等エコー)、目は細かく、破壊性変化を認めない。小児橋本病での橋本病抗体[抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]陽性率低い。
Keywords
小児,甲状腺機能,無痛性甲状腺炎,エコー,検査,橋本病,抗サイログロブリン抗体,Tg抗体,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体,TPO抗体
小児期に診断される橋本病の約3/4(75%)は、甲状腺機能正常とされます(成人橋本病では、約2/3が甲状腺機能正常)。しかし、小児期に診断される甲状腺機能正常橋本病の約30%は、5年以内に無痛性甲状腺炎をおこすとされます。(第58回 日本甲状腺学会近 P1-8-4 小児期に診断された機能正常橋本病の自然経過)
約1/4(25%)を占める甲状腺機能低下症まで進行した小児橋本病患者は、寒がり、易疲労性、徐脈、便秘、浮腫、無気力など成人でも見られる一般的な症状に加えて、
- 骨代謝の低下と2次的な成長ホルモン(GH)分泌不全による成長障害[身長の伸びの低下(低身長)、貧血、ソマトメジンC(IGF-1)低値等を認める]をおこします。早期に発見して、甲状腺ホルモン補充治療が必要です
3歳以上の小児橋本病による重度甲状腺機能低下症(TSH>30 μIU/mL)では、成長に深刻な影響が出ますが、甲状腺ホルモン補充後に一定の成長キャッチアップはあります(Exp Clin Endocrinol Diabetes. 2021 Oct 4.)。
- 脳神経の活動低下による学力低下
- 思春期早発や乳房腫大、多嚢胞性卵巣(高プロラクチン血症の影響か?)[Endocr Pract. 2007 Oct;13(6):652-5.]
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、超高解像度の超音波診断装置を用いて、小児橋本病(慢性甲状腺炎)における破壊の程度を評価します。以下の写真の様に、例え3歳でも(当院の最年少記録)、6歳くらいなら普通に、超音波(エコー)検査で橋本病性変化(慢性炎症所見)が認められます。
4歳女児の橋本病 超音波(エコー)画像 (拡大);コロイド嚢胞(コロイドのう胞)も散見されます。
6歳女児の橋本病 超音波(エコー)画像 (拡大);成長の過程で現れるコロイド嚢胞(コロイドのう胞)と異なる破壊性の嚢胞(嚢胞変性)
7歳女児の橋本病 超音波(エコー)画像;辺縁が不整(凸凹)、甲状腺全体が腫れていて、かつ変形が強い(いびつな形)。内部にのう胞変性(嚢胞変性)多数あり。これだけではコロイド嚢胞(コロイドのう胞)か、破壊性の嚢胞変性か鑑別難。
11歳女児の橋本病 コロイド嚢胞(コロイドのう胞)合併 超音波(エコー)画像(横断)
11歳女児の橋本病 コロイド嚢胞(コロイドのう胞)合併 超音波(エコー)画像(縦断);下極背側に集中するのう胞(嚢胞)は、辺縁明瞭、溶け切らない甲状腺組織を一切含まないため、橋本病の破壊によるのう胞変性(嚢胞変性)でなく、コロイド嚢胞(コロイドのう胞)と考えられます。
12歳の橋本病 超音波(エコー)画像;辺縁がやや不整(凸凹)、甲状腺全体がやや腫れていて、少し黒い色調(低エコー)、内部はわずかに目が粗い。のう胞(嚢胞)多数あり、これだけではコロイド嚢胞(コロイドのう胞)か、破壊性の嚢胞変性か鑑別難だが、前述の炎症を示唆する所見から慢性甲状腺炎(橋本病)。
13歳女児の橋本病 超音波(エコー)画像 (水平断);辺縁がやや不整(凸凹)、甲状腺全体が著明に腫れ、内部は不均一で目が粗い。のう胞変性(嚢胞変性)多数あり、明らかコロイド嚢胞(コロイドのう胞)と異なる破壊性の嚢胞変性。
コロイド嚢胞との鑑別
上記の小児橋本病 超音波(エコー)画像(拡大)で見られる破壊性のう胞(嚢胞変性)は、周囲との境界が不明瞭なものが多く、内部に溶け掛けの組織も見られます。一方、成長の過程で現れるコロイド嚢胞(コロイドのう胞)は周囲との境界が比較的明瞭で、写真の如く、甲状腺自体も白く(等エコー)、目が細かく、破壊性変化を認めません。[コロイド嚢胞(コロイドのう胞)]
元々、橋本病抗体[抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]は年齢と共に陽性率が高くなるため、小児橋本病では陽性率が低いです。
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)のみを有する小児橋本病患者は、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)のみを有する小児橋本病患者よりも高いTSHレベルを示しました[Hormones (Athens). 2022 Jun;21(2):271-276.]。
抗体陰性小児橋本病患者は12.3%存在し、抗体陽性患者に比べて甲状腺機能低下症の有病率が低く、甲状腺病変の重症度も低い[Hormones (Athens). 2022 Jun;21(2):271-276.]。
小児橋本病では、血液中の橋本病抗体[抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]が陽性になるより早く、デジタルハイビジョン超音波(エコー)上の変化が出ます。
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、橋本病の70%は遺伝性である事に注目し、同伴の保護者の甲状腺超音波(エコー)検査と橋本病抗体測定を行います。それにより、将来、子供がどこまで甲状腺を破壊されるか、どこまで橋本病抗体が上昇するかを予測します。
小児橋本病患者における甲状腺乳頭がん(PTC)の発生頻度は0.67〜7.87%とされます。甲状腺結節を有する小児橋本病患者では、5.13〜35%が甲状腺乳頭がん(PTC)でした。[J Pediatr Endocrinol Metab. 2020 Nov 12;33(12):1511-1517.]
小児無痛性甲状腺炎は稀とされ、報告されている最少年齢は9-11歳です(Endocrinol Jpn. 1991 Apr;38(2):219-22.)。しかし、甲状腺機能正常の小児橋本病患者の約30%は、5年以内に無痛性甲状腺炎をおこすと報告されます(第58回 日本甲状腺学会近 P1-8-4 小児期に診断された機能正常橋本病の自然経過)。
無痛性甲状腺炎の詳細は、 無痛性甲状腺炎 を御覧下さい。
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く。