甲状腺と解熱鎮痛薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)のアスピリン不耐症・固定薬疹[橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック大阪]
動脈硬化:専門の検査/治療/知見[橋本病 バセドウ病 エコー検査 長崎甲状腺クリニック大阪]
甲状腺専門・動脈硬化の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科、2内科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。アスピリン不耐症・固定薬疹の診療を行っておりません。
Summary
解熱鎮痛薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)でシクロオキシゲナーゼ(COX-1)阻害によりプロスタグランディン(PG)E2が減少しアスピリン不耐症・固定薬疹。甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病で動脈硬化が進行。抗血小板薬バイアスピリンでアスピリン喘息/間質性肺炎おこすことも。サリチル酸中毒(アスピリン=アセチルサリチル酸)は代謝性アシドーシス。サリチル酸は活性型の遊離甲状腺ホルモン[Free T3(FT3),FreeT4(FT4)]を増加させ甲状腺機能亢進症/バセドウ病増悪、甲状腺中毒症と甲状腺クリーゼには禁忌。
Keywords
甲状腺機能低下症,橋本病,サリチル酸,バセドウ病,バイアスピリン,アスピリン喘息,甲状腺機能亢進症,甲状腺,アスピリン不耐症,固定薬疹
甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病では動脈硬化が進行し、狭心症/心筋梗塞の発症率が上がります。甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]で治療すれば、血管年齢など動脈硬化が改善することを、私、長崎俊樹が医学界で初めて証明しました(甲状腺と動脈硬化 )。
バイアスピリン®(アスピリン腸溶錠100mg)は「抗血小板薬」として血液が固まるのを防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞など脳動脈硬化性疾患を予防します。
アスピリンをはじめとする非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)では、シクロオキシゲナーゼ(COX-1)阻害によりプロスタグランディン(PG)E2やプロスタグランディン(PG)I2が減少し、
- 不耐症(アスピリン不耐症)
- 急性腎障害(Acute Kidney Injury: AKI);PGE2 やPGI2 による腎血管拡張系が低下→腎血流量低下
- ①Na 再吸収亢進;腎血流量低下に対して代償性に近位尿細管Na 再吸収が促進
②抗利尿ホルモン感受性亢進
により水分が貯留し薬剤性浮腫、薬剤性高血圧、SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群) - 血管拡張阻害により薬剤性高血圧
- 血小板のCOX-1 阻害により血小板凝集能が低下し出血リスクの増加、鼻出血
- 胃粘膜障害;びらん、NSAID 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
- 中枢神経症状;頭痛・めまい・抑うつなどの中枢神経症状
をおこす可能性があります。
アスピリン=アセチルサリチル酸
サリチル酸中毒(アスピリン中毒)は
- 代謝性アシドーシス(アニオンギャップ増加)と呼吸性アルカローシスの合併
- 酸化的リン酸化阻害→ATPの産生低下→代謝性アシドーシスから脳浮腫/脳障害
- 慢性サリチル酸中毒の初期症状は「音楽的な耳鳴り」
サリチル酸はタンパク結合性が高く、甲状腺ホルモン輸送タンパク[甲状腺ホルモン結合蛋白(TBG;thyroxine binding globulin)、トランスサイレチン(プレアルブミン)やアルブミン]と強力に結合します。甲状腺ホルモン輸送タンパクから解離させられた甲状腺ホルモンは、活性型の遊離甲状腺ホルモン[Free T3(FT3), FreeT4(FT4)]になって血中に増加するため、甲状腺機能亢進症と甲状腺クリーゼには禁忌。(炎症を抑える成分、痛みを止める成分で甲状腺ホルモンが上昇)
アスピリンは、母乳中への移行が報告されているため、やむを得ず投与する場合でも授乳婦には避けるべきです。乳児に出血傾向が現われる場合があります。(Clin Pediatr (Phila). 1981 Jan;20(1):53-4.)
また、イブプロフェン(ナロンエース®、イブ®など)も添付文書に「授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。[母乳中へ移行することが認められている。]」と書かれています。
一方、
- アセトアミノフェン(カロナール®)は妊娠~授乳中にも安全に使える
- ロキソプロフェン(ロキソニン®);添付文書には「授乳中の婦人に投与することを避け、やむをえず投与する場合には授乳を中止させること。[動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている。]」と記載されているが、ヒトでは母乳中へほとんど移行しないことが確認されています。国立成育医療研究センターの「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」のリストにロキソプロフェン(ロキソニン®)も記載されています。
アスピリンのみならず、ほとんどの解熱鎮痛薬でおこるNSAIDs(解熱鎮痛薬)不耐症(アスピリン不耐症)。不耐症は拒否反応の事で、アレルギーの免疫抗体は関与しません。
- ぜんそく型(アスピリン喘息=NSAIDs過敏喘息)(前述)
- じんましん型(皮膚型)
の2つがあります。
じんましん型は、通常は慢性じんましんがベースにあり、NSAIDs服薬により、じんましんや血管浮腫(まぶたや唇の腫れ)がおこり易くなります。 甲状腺の病気と同じく女性に多く、生理痛などで鎮痛薬を服薬される方は注意が必要。まぶたの腫れは、甲状腺眼症(バセドウ病眼症・橋本病眼症)のようです。
市販の風邪薬(かぜ薬)(NSAIDs;解熱鎮痛薬)を服用して数日後、口唇あるいは臀部、亀頭部に痛い、または痛痒い発赤(水疱の事も)が出現。風邪(かぜ)を引いて解熱鎮痛薬を飲む度、同じ部位に皮疹が出ます。あたかも、単純疱疹(単純ヘルペス)、範囲が広ければ帯状疱疹(たいじょうほうしん)のように見えますが、固定薬疹です。
固定薬疹の原因として解熱鎮痛剤(NSAIDs)が多く、去痰薬カルボシステインの場合もあります。
固定薬疹の診断は、
- リンパ球刺激試験(DLST)、パッチテストは病変部でしか陽性にならない
- 治癒後の色素沈着部に解熱鎮痛剤を塗布して検査
固定薬疹の鑑別として、単純疱疹(単純ヘルペス)、帯状疱疹(たいじょうほうしん)・水痘。
服薬を止めれば1週間程度で色素沈着を残して治癒します。局所の灼熱感/発赤が強ければステロイド軟こう使用。解熱鎮痛剤内服を継続した場合、致死率10-20%の中毒性表皮壊死症に進展する危険があります。
抗血小板剤パナルジン®(チクロピジン)とプラビックス®(クロピドグレル)は後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)をおこす可能性あり。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区、浪速区も近く。