甲状腺と神経線維腫・神経鞘腫(シュワノーマ)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 年次学術集会で入手した知見です。
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Summary
甲状腺原発の良性非上皮性腫瘍は非常に稀。甲状腺神経鞘腫(シュワノーマ)の報告例が複数。超音波(エコー)画像は①充実性、均一エコー型②不均一エコー型③辺縁増強を伴う嚢胞型。穿刺細胞診は紡錘形細胞よりさらに細長い”うなぎ様核(eel-like nuclei)”を持つ細胞。しかし、十分な組織片が得られない事多く、術前診断が付くのは約半数。頚部神経線維腫は迷走神経・交感神経幹・腕神経叢から発生、紡錘形で血流を認ず。多発性内分泌腺腫症2B型(MEN2B)で甲状腺髄様癌、副腎褐色細胞腫合併も。頸部神経鞘腫と甲状腺癌の合併ある。
Keywords
甲状腺,神経鞘腫,シュワノーマ,超音波,エコー,頚部神経線維腫,甲状腺髄様癌,頸部神経鞘腫,甲状腺癌,迷走神経
甲状腺原発の良性非上皮性腫瘍(上皮性は良性濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫)は非常に稀で、血管系腫瘍、平滑筋腫瘍、神経系腫瘍などが報告されています。
甲状腺神経鞘腫(シュワノーマ)の報告例が複数あります(Surg Today. 2013 Jan;43(1):106-9.)(J Surg Case Rep. 2014 Sep 23;2014(9). pii: rju094.)
末梢神経の髄鞘から発生する腫瘍は、神経線維腫(neurofibroma)、神経鞘腫(schwannoma)の2つで病理組織学的に近似します。
頚部神経線維腫は迷走神経・交感神経幹・腕神経叢から発生し、紡錘形で内部血流を認めないのが特徴です。
頚部神経線維腫を見つけたら、
- 多発性内分泌腺腫症2B型(MEN2B)の可能性があるため、甲状腺髄様癌、副腎褐色細胞腫の合併
-
神経線維腫症Ⅰ型(NF1、レックリングハウゼン病)の一病変としての可能性
などを調べる必要あります。
(写真 BMC Neurol. 2017 Feb 6;17(1)26.BMC Neurol. 2017 Feb 6;17(1)26.)
神経鞘腫は神経鞘中のSchwann細胞から発生する良性腫瘍で、25-50%は頭頸部領域に発症します(Cancer 24 : 355-366, 1969.)。頸部神経鞘腫の34%迷走神経、17%腕神経叢、16%頸神経由来です(頭頸部外科Mook No.2(斎藤等編).122~133頁,金原出版,東京,1986.)。
頸部神経鞘腫の症状は
- 無痛性の頸部腫瘤が多い
- 発生母体神経に由来する症状(喉頭頸 60:461~467,1988.)
①迷走神経発生では腫瘤圧迫により咳漱・嘔気・頻脈などの迷走神経刺激症状、嗄声
②腕神経叢発生では上肢への放散痛・圧痛・し びれ感
③交感神経発生ではHorner症候群
多発性の場合、取り残しがあると症状改善しない
頚部神経鞘腫(schwannoma)は硬く、血流に乏しい腫瘤で、発生母体の神経(写真では迷走神経)に連続しています。
- 充実性、均一エコー型(solid pattern);エラストグラフィーでは硬い
- 不均一エコー型(multiple microcystic pattern)
- 辺縁増強を伴う嚢胞型(cystic pattern)
があります(耳鼻34:677 ~683 ,1988.)。
頚部神経鞘腫(schwannoma)は、穿刺細胞診では、紡錘形細胞よりさらに細長い「うなぎ様核(eel-like nuclei)」を持つ細胞です(Cancer Cytopathol. 2015 Mar;123(3):171-9.)。しかし、十分な組織片が得られない事も多く、術前の診断が付くのは約半数です。組織診ができれば、紡錘形細胞が錯綜する構造で、免疫染色ではS-100陽性です。
頸部神経鞘腫と甲状腺癌の合併
神経線維腫と異なり、神経鞘腫が悪性腫瘍を合併し易い事はありません。しかし、報告例はあります。
- 頸部迷走神経鞘腫と同側の甲状腺髄様癌の合併[多発性内分泌腺腫症2B型(MEN2B)かどうか不明](耳喉頭頸60:461~467,1988.)
- 頸部神経鞘腫と甲状腺微小癌の合併(耳鼻臨床 補63:37~42,1993.)
などです。
もっとも頻度が高い神経鞘腫(シュワノーマ)は聴神経腫瘍です。聴神経腫瘍の症状は
- 耳鳴・聴力低下(蝸牛神経障害)
- めまい、ふらつき(上前庭神経、下前庭神経障害)
- 顔面神経麻痺
などです。
これらの症状がある場合や、腫瘍が大きく脳を圧迫している場合は
- 手術摘出+残存腫瘍にサイバ-ナイフ、ガンマナイフの放射線治療
- 放射線治療のみ
聴神経は非常に脆いため、術後の麻痺を考えた上でどちらにするのか決めます。
聴神経鞘腫に次いで多いのが三叉神経鞘腫で、舌下神経鞘腫もある。
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- 甲状腺編
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。