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家族性非自己免疫性甲状腺機能亢進症:FNAHと甲状腺機能性結節が混在;マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群[長崎甲状腺クリニック]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科、第二内科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

マッキューン・オルブライト症候群

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マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群のGタンパク結合受容体(GPCR)と、連動する刺激性Gタンパク(Gsαタンパク)。(Orphanet Journal of Rare Diseases20083:12)

典型的なマッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群(Medzzyより改変)

Summary

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群は常染色体優性遺伝性の刺激性Gタンパク(Gsα)遺伝子(GNAS1)変異。副甲状腺,甲状腺,副腎,下垂体,性腺など内分泌腺の自律性機能亢進と線維性骨異形成症、カフェオレ斑、生下時より両側第4 趾の短縮。非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症(FNAH)甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)が混在。甲状腺機能亢進症+線維性骨異形成症で骨量減少が加速。FGF23仲介性リン酸喪失、原発性副甲状腺機能亢進症クッシング症候群先端巨大症・、女児では思春期早発も。

Keywords

マッキューン・オルブライト症候群,McCune-Albright,Gsα,GNAS1,カフェオレ斑,甲状腺,線維性骨異形成症,非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症,甲状腺機能性結節,刺激性Gタンパク

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群とは

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群は、常染色体優性遺伝なのに稀な病気です。

甲状腺ホルモンを始め多種のホルモンは、Gタンパク結合受容体(GPCR)に結合、連動する刺激性Gタンパク(刺激型GTP結合蛋白-αサブユニット:Gsαタンパク)を活性化させ、ホルモン作用を発現させます。

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群では、刺激性Gタンパク(Gsαタンパク)をコードするGNAS1遺伝子変異が胎生期におこります。その結果、刺激性Gタンパク(Gsαタンパク)がホルモン結合なしに、勝手に活性化されてホルモン作用を発現します(活性型変異)。(N Engl J Med. 1991;325(24):1688-95.)

マッキューン・オルブライト症候群のメカニズム

刺激性Gタンパク(Gsαタンパク)が制御なく活性化した結果、

  1. 副甲状腺,甲状腺,副腎,下垂体,性腺など複数の内分泌腺が自律性機能亢進(要するに無制御にホルモンを産生する)
  2. 線維性骨異形成症(polyostotic fibrous dysplasia)(98%)
  3. 皮膚カフェオレ斑(cafe-au-lait spots)(85%)

をおこします。(Medicine(Baltimore). 1996;75(4):171-84.)

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群の甲状腺機能亢進症

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群の甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンが骨吸収(分解)を促進。甲状腺機能亢進症+線維性骨異形成症になるため、骨量減少が加速されます。(Horm Res Paediatr. 2012;78(3):151-7.)

脊椎変形による頚部可動域制限があると、甲状腺の触診は困難になる。

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群の甲状腺機能亢進症では、c-AMPを介した甲状腺内2型脱ヨード酵素(D2)活性化と、末梢血中での1型脱ヨード酵素(D1)活性上昇によりT3/T4比が高くなります。また、甲状腺超音波(エコー)検査では、年齢が若いと異常は出ませんが、ある程度の年齢になると以下の様な異常所見になります。(J Clin Endocrinol Metab. 2008 Jun;93(6):2383-9.)

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群の甲状腺機能亢進症は、変異細胞がモザイク状に分布するため、家族性非自己免疫性甲状腺機能亢進症(FNAH)のように、びまん性に甲状腺ホルモンを産生する領域と、甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫) と化して限局性に甲状腺ホルモンを産生する領域が混在します。(第58回 日本甲状腺学会 P2-3-5 McCune-Albright症候群に合併した甲状腺機能亢進症患者の画像検査の特徴)

甲状腺超音波(エコー)検査所見は、不均一で、高エコー領域と低エコー領域が混在します。 スイス チーズ様の嚢胞変性も起こります。(J Clin Endocrinol Metab. 1990 Dec;71(6):1596-601.)(J Clin Endocrinol Metab. 2008 Jun;93(6):2383-9.)

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群の甲状腺機能亢進症でも甲状腺クリーゼが起こる可能性はあります。[Horm Res. 2000;53(5):256-9.]

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群では、悪性腫瘍のリスクが高く、

  1. 骨肉腫(標準罹患率19.7、95%CI 3.5-48.9)
  2. 子宮頸がん(4.93、95%CI 1.7-8.2)
  3. 甲状腺がん(3.71、95%CI 1.1-7.8)
  4. 前立腺がん(3.08、95%CI 1.8-4.6)
  5. 黒色腫(2.01、95%CI 1.2-3.1)

[Calcif Tissue Int. 2021 Mar;108(3):346-353.]

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群の甲状腺機能亢進症

北里大学の報告では、共に小児期(4歳、10歳)でマッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群の甲状腺機能亢進症と診断され、

  1. 4歳例はメルカゾール投与のみ
  2. 10歳例は片葉のみI-123 甲状腺シンチグラムで集積が認められたため、片葉切除施行。それでも、潜在性甲状腺機能亢進症が持続したため、メルカゾールを使用

最終的に甲状腺機能正常化したそうです。(第57回 日本甲状腺学会 中毒性結節性甲状腺腫を有したMcCune-Albright 症候群の2症例)

インドでは、7歳女児に5 mCiの放射性ヨウ素(I-131)を使用し甲状腺機能亢進症を寛解させた報告があります。[Indian J Endocrinol Metab. 2012 Jul;16(4):654-6.]

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群の甲状腺機能亢進症は通常メチマゾール(メルカゾール)に反応しますが、寛解する可能性は低い(自己免疫ではないので当然だが)。したがって、根本的な治療である甲状腺摘出手術が好ましい。甲状腺手術は非常に小さな子供では難しいので、年齢が高くなるまで遅らせることが推奨されてきました(Orphanet J Rare Dis. 2012 May 24;7 Suppl 1(Suppl 1):S4.)。一方、骨変形を加速させるため、早く手術した方が良いと言う意見もあります(Glob Pediatr Health. 2019 Sep 9;6:2333794X19875153.)。脊椎変形による頚部可動域制限が生じると、甲状腺手術は困難になります。

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群でおこる病態

カフェオレ斑

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群でおこる病態は、

  1. 骨の多発性線維性骨異形成(polyostotic fibrous dysplasia)(98%);低身長、脊椎側弯・後弯のため胸郭変形(肺胞低換気を合併)、骨折。車椅子移動になる
  2. 甲状腺機能亢進症非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症機能性結節が混在、あるいはどちらか一方);約30%に認める
  3. FGF23仲介性リン酸喪失;低リン血症、若年時大腿骨・上腕骨・脛骨など骨折
     
  4. 原発性副甲状腺機能亢進症
  5. 高コルチゾール症(クッシング症候群
  6. 先端巨大症成長ホルモン過剰)
  7. 女児では、思春期早発が多い(小学生低学年で月経発来、膣出血、卵巣嚢胞、乳房発達)(52%)
  8. 皮膚カフェオレ斑(cafe-au-lait spots)(85%)
  9. 生下時より両側第4 趾の短縮
マッキューン・オルブライト症候群 皮膚カフェオレ斑
マッキューン・オルブライト症候群 線維性骨異形成症

皮膚カフェオレ斑(cafe-au-lait spots)(J Rare Dis. 2012 May 24;7 Suppl 1S4.)

線維性骨異形成症(polyostotic fibrous dysplasia)(Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2010 Nov-Dec;76(6)723.)

下、7歳女児。Tc99m-MDP全身骨スキャン・Tc99mテクネシウム甲状腺スキャン[Indian J Endocrinol Metab. 2012 Jul;16(4):654-6.]

マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群 Tc99m-MDP全身骨スキャン Tc99m過テクネシウム甲状腺スキャン

 

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長崎甲状腺クリニック(大阪)


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