皮膚のマスクトラブル、過度なアルコール消毒と甲状腺[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。皮膚疾患の診療を行っておりません。
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 附属病院 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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- 甲状腺ホルモン異常と皮膚・脱毛①
- 甲状腺と皮膚の異常②
- 甲状腺と皮膚の異常③悪性腫瘍編(甲状腺乳頭癌・濾胞癌・未分化癌の皮膚浸潤・転移、悪性黒色腫、ボーエン病、基底細胞母斑症候群、パジェット病、メルケル細胞がん)
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Summary
マスクを常時着用する事による皮膚障害(マスクトラブル)はアトピー性皮膚炎増悪[自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)の合併多い]・接触皮膚炎(IV型過敏症)・尋常性ざ瘡(にきび)(ざ瘡ケロイドは甲状腺機能低下症発症リスク高い)・カポジ水痘様発疹症。特に発汗量が多く蒸れやすい甲状腺機能亢進症/バセドウ病、皮膚の油分が少なく乾燥しやすい甲状腺機能低下症/橋本病、亜鉛欠乏症患者は要注意。特に甲状腺機能低下症では、過度なアルコール消毒が手荒れ・皮膚バリア損傷の原因に。
Keywords
マスク,マスクトラブル,アトピー性皮膚炎,バセドウ病,橋本病,接触皮膚炎,ざ瘡,甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,アルコール消毒
新型コロナウイルス感染症および、その他感染症予防のため、マスクを常時着用する事による皮膚障害(マスクトラブル)が増加しています。マスクトラブルの本体は
- アトピー性皮膚炎の増悪[自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)の合併が多い]
- 接触皮膚炎(IV型過敏症)
- 尋常性ざ瘡(にきび);皮脂が毛穴に詰まり、毛穴の中でアクネ菌が増殖→炎症、膿が出る。ざ瘡ケロイドは甲状腺機能低下症を発症するリスクが高い[Int J Dermatol. 2021 Apr;60(4):466-470.]
- カポジ水痘様発疹症(Kaposi's varicelliform eruption);単純ヘルペスウイルス、コクサッキーウイィルス、ワクチニアウイルス感染。アトピー性皮膚炎の不適切治療など皮疹のコントロールが悪い状態で感染。水疱内容をスライドガラスに塗布、数分間染色後に顕微鏡でウィルス性巨細胞を確認(Tzanckテスト:ツァンク試験)
長時間、マスクをしていると皮膚の角質に過剰な水分が溜まり、マスクに油分が吸い取られ、皮膚のバリア機能が低下します。
特に、発汗量が多く、蒸れやすい甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人、皮膚の油分が少なく、乾燥しやすい甲状腺機能低下症/橋本病、亜鉛欠乏症の人は要注意。
マスクトラブルの予防は、
- 最も新型コロナウイルス感染症予防効果の高い不織布マスクを止めるのは難しい。そこで、薄いガーゼを中に挟むと、過剰な水分がガーゼに吸収され、マスクトラブルが軽減される可能性がある
- 新型コロナウイルス感染症予防効果は高くないが、肌に優しい綿100%マスクに変える
- 石鹸による洗顔;尋常性ざ瘡の原因となる皮膚常在菌を洗い流す。顔は洗いにくい場所だが、しっかり洗う。石けんは泡立てれば、洗浄力を発揮する。タオルやスポンジで洗うと角質層が剝がれ、皮膚のバリア機能が低下するので手のひらで優しく洗う。最後は、よくすすいで石鹸を落とす。
- スキンケアを怠らない(保湿薬、化粧水、乳液の使用は問題ない)
人本来の呼吸は鼻呼吸です。鼻は粘液と線毛により異物排泄と加温加湿を行う感染防御器官でもあります。マスク生活に慣れてしまい、マスクを外している時も口呼吸している場合があります。マスクというフィルターが無い状態で口呼吸すると、
- 細菌やウイルスが直接、気管や肺に侵入してきて感染症を起こしやすくなる
- 口内が乾燥して、口内炎・口腔潰瘍・舌炎、齲歯(虫歯)・歯肉炎、口臭、喉(のど)の違和感、喉(のど)に引っかかる感じ[嚥下(えんげ)時の違和感]、嚥下障害(甲状腺の病気と勘違いする)の原因になる
[Int J Orthod Milwaukee. 2016 Summer;27(2):51-54.]
[Healthcare (Basel). 2022 Sep 13;10(9):1755.より改変]
新型コロナウイルス 感染症対策に手指の高濃度アルコール消毒は欠かせません。その一方で、過度のアルコール消毒は手荒れの原因になります。何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。
皮膚表面の角質層は細菌やカビ(真菌)、ウイルス、アレルゲン物質の侵入を防ぐバリアとなり、弱酸性の角質層とそこに含まれる抗菌ペプチドが細菌の繫殖を防いでいます。
過度の手指アルコール消毒は、角質層の皮脂を取り除いてしまうため、皮膚が本来持っているバリア機能を損ない
- 手荒れ→炎症により、さらに皮膚のバリア機能が低下
- 手湿疹
- 細菌やカビ(真菌)、ウイルスが手に感染しやすくなる
- アレルゲン物質が侵入しやすくなる
などの弊害がおこります。特に、甲状腺ホルモン値が正常化していない甲状腺機能低下症ではダメージが大きくなります。
アルコール消毒は、あくまで石けんによる手洗いができない時の代用です(新型コロナウイルス感染の予防)。ノロウイルス感染症などにアルコール消毒は無効です。食器を洗う洗剤も、アルコールを含まないなら、手荒れが起こり難いです。
アルコール(エタノール)は、粘膜や創傷部位に対して刺激性を持つため、最初から手に傷(創傷)がある場合、使用できません。
塩化ベンザルコニウムは、粘膜や創傷部位にも使用できますが、インフルエンザウイルスやノロウイルスに対する消毒効果はありません(一般細菌や酵母様真菌には有効)。
しかし、新型コロナウイルスには十分な効果があります。これは、塩化ベンザルコニウムの界面活性作用によって、新型コロナウイルスのエンベロープ(脂質でできた外膜)が破壊されるためです。有効濃度は0.05%(500ppm)以上。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
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