小児虐待(児童虐待)とその後の甲状腺機能障害・橋本病・バセドウ病[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。
Summary
小児虐待(児童虐待)の経験は被害児の生涯にわたる最悪のストレス因子。小児虐待を受けた経験を持つ非妊娠女性、妊婦、出産後女性は甲状腺機能障害の頻度が高い。小児虐待を受けた人は成人期に自己免疫疾患(橋本病・バセドウ病含む)の罹患率が高い。産後うつ病の女性では、小児期の性的虐待の経験が①橋本病自己抗体[抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]の陽性率を上昇させる②視床下部-下垂体-甲状腺系のバランスを崩す危険因子とされる。小児虐待の早期発見は育児中の母親や子どもが出しているサインを見逃さないこと。
Keywords
小児虐待,児童虐待,甲状腺機能障害,橋本病,バセドウ病,視床下部-下垂体-甲状腺系,甲状腺,妊娠,性的虐待,自己免疫疾患
小児虐待は、親になり切れない大人が、欲求不満を子供にぶつけるために発生します。令和2年の小児虐待(児童虐待)加害者数は、養親・継親が314人に対して実親が1,583人と圧倒的に多い(令和2年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況)。
一方、
- 被虐待者(虐待を受けた被害児)は、3歳、1歳、2歳の順に多い
- 虐待の種類は、心理的虐待、身体的虐待、親の怠慢・ネグレクト、性的虐待の順に多い
(令和3年度福祉行政報告例の概況)
小児虐待の経験は、被害児に生涯にわたる生物学的、心理学的、行動学的な影響を及ぼす最も広範で悪質なストレス因子です(Dev Psychobiol. 2010 Nov; 52(7):671-90.)。
小児虐待を受けた経験を持っている
- 非妊娠女性は、甲状腺機能障害の頻度が高いです。(Child Abuse Negl. 2006 Jun; 30(6):589-98.)(Int J Dev Neurosci. 2015 Dec; 47(Pt B):304-8.)
- 妊婦は、妊娠中に甲状腺機能低下症になる危険が高いとされます。視床下部-下垂体-甲状腺系のバランスを崩すためとされます(Psychoneuroendocrinology. 2017 Oct;84:190-196.)。
- 出産後女性は、甲状腺機能障害の頻度が高いです。(Psychiatry Res. 2012 Dec 30; 200(2-3):329-35.)
- 成人は、自己免疫疾患の罹患率が高い(もちろん、橋本病・バセドウ病も含む)(Psychosom Med. 2009 Feb; 71(2):243-50.)(Psychol Med. 2004 Apr; 34(3):509-20.)
産後うつ病の女性では、小児期の性的虐待の経験が
- 橋本病自己抗体[抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]の陽性率を上昇させる
- 視床下部-下垂体-甲状腺系のバランスを崩す
危険因子とされます(J Affect Disord. 2010 Apr;122(1-2):159-63.)。
幼い子どもは周囲に助けを求めることができません。育児中の母親や子どもが出しているサインを見逃さないことが、虐待の早期発見につながります(ただし、これだけでは、虐待の防止になりません)。地域の保健師による母子訪問などで、子供が予防接種を受けていないために虐待が発覚する事もあります。
小児虐待は早期発見して、行政(児童相談所)・司法(警察・検察・裁判所)の権限で救い出すしかありません。民間人が直接立ち入る事はできません。子供を診察する医師は、虐待の証拠を見逃さず、児童の情報を迅速に児童相談所に通報しなければなりません。傷害罪の可能性があれば警察への通報になります。
自分の子供を虐待する程、追いつめられている母親は、
- 笑顔が少ない
- 子どもに声をかけない
- 子どもにイライラして声を荒げる、怒鳴る
- 子どもの体を揺さぶったり、叩いたりする
などの特徴があります。
一方、虐待を受けている子どもは、
- 表情に乏しい(甲状腺機能低下症のよう)
-
爪や髪が汚れている(ネグレクトされている)
-
衣服でおおわれた部分に新旧、複数のあざ(皮下出血)や傷、煙草を押し付けられた火傷の跡(医師、看護師は絶対に見逃してはいけない)
- 母親や周囲の大人を警戒して近づかない
- 逆によく知らない大人に過剰に甘える(助けを求めている)
などの特徴があります。
虐待が疑われる子どもの診察を行う際に注意することは、
- 母子手帳を確認する;定期健診や予防接種を受診していない
- 意識障害があれば当然だが、頭部CT;硬膜下血腫、びまん性脳浮腫(傷害罪の可能性、警察へ通報)
- 手足のエックス線;骨折の有無。親が「外傷に心当たりはない」と言えば非常に怪しい。骨折しているのに心当たりがないのは不自然。(傷害罪の可能性、警察へ通報)
乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome)は、最も深刻な小児虐待症状の一つです。乳児の頭部は、体に対して比較的大きく、首の筋肉による安定性が低いため、揺さぶり(加速減速の繰り返し)で容易にダメージを受けます。揺さぶられた乳児の頭蓋内損傷には、硬膜下血腫、脳挫傷が認められます。
乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome)を疑った場合、網膜出血の有無を確認する。網膜出血は激しい揺さぶりや頭部外傷でも生じます。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区にも近い。