甲状腺と川崎病[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 甲状腺超音波エコー検査 長崎甲状腺クリニック大阪]
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動脈硬化:専門の検査/治療/知見 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
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Summary
川崎病は年々増加、自己免疫異常説は根強いが確証ない。橋本病(慢性甲状腺炎)と合併しやすいセリアック病の罹患率は高いが、本人の自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病)とは無関係。川崎病の症状は高熱、頸部リンパ節腫脹(亜急性甲状腺炎との鑑別要)、眼球結膜充血・イチゴ舌・不定形発疹(溶連菌感染症と似ている)、手足の硬性浮腫、心臓血管の炎症で、無治療なら約30%に冠動脈瘤。川崎病の急性期治療は、免疫グロブリン超大量注射(IVIG)投与で約80%が解熱、アスピリン療法。7病日以内に炎症反応抑えれば冠動脈瘤予防できる可能性高い。
Keywords
川崎病,橋本病,セリアック病,甲状腺,バセドウ病,亜急性甲状腺炎,溶連菌感染症,硬性浮腫,冠動脈瘤,自己免疫
川崎病の原因として自己免疫異常説は根強いが確証はない。川崎病の既往のある子供のセリアック病の罹患率は高いとされますが、自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病)とは無関係とされます。[Rheumatology (Oxford). 2006 Jul;45(7):847-50.]
しかしながら、セリアック病と橋本病(慢性甲状腺炎)の合併率は高いため、あながち無関係とも言えない気がします(パンや麦製品を食べると下痢、セリアック病と橋本病は密に関係)。
一方、母親の自己免疫性甲状腺炎が、小児、特に幼児における川崎病の危険因子である可能性が報告されています[J Pediatr. 2020 Jul;222:240-243.e1.]。
川崎病の病態は急性熱性全身性血管炎で、溶連菌感染症とよく似ています。共通の症状は
- 5日間以上の高熱
- 咽頭発赤、イチゴ舌
- 頸部リンパ節腫脹(亜急性甲状腺炎との鑑別要)
- 体幹の発疹
で、溶連菌感染症との鑑別必要だが、溶連菌キットは当てになりません。(A群ベータ溶連菌(A群溶血性レンサ球菌、化膿性連鎖球菌)による急性扁桃炎・咽頭炎 )
川崎病の症状は、
- 高熱(5日間以上);病勢の把握と治療効果判定に最も重要
- 眼球結膜充血(溶連菌感染症と異なる)
- 有名なイチゴ舌、口唇が口紅を付けた様に(溶連菌感染症と似ている)
- 不定形(特徴のない)発疹(溶連菌感染症と似ている)、BCG部の再発赤
- 手背は腫脹、手足の硬性浮腫(テカテカぱんぱん)、皮膚がむける(溶連菌感染症と異なる)
- 心臓血管の炎症で、無治療の場合、約30%に冠動脈瘤ができます。ほとんどは冠動脈近位部、冠動脈起始部と左冠動脈の左前下行枝と左回旋枝の分岐付近です。冠動脈瘤は血栓形成し、心筋梗塞、突然死をおこす危険があります。右冠動脈の場合、巨大冠動脈瘤で完全閉塞していても、再疎通し無症状の事があります。冠動脈血流の減少により僧帽弁閉鎖不全をおこす事も。
川崎病の検査所見は非特異的で白血球上昇とCRP高値。
川崎病と鑑別を要するのは、
- A群ベータ溶連菌(A群溶血性レンサ球菌、化膿性連鎖球菌)による急性扁桃炎・咽頭炎
- アデノウイルス感染症・咽頭結膜熱;硬性浮腫はない
- 麻疹(はしか);臨床経過が異なる。鼻汁・咳嗽を認め、硬性浮腫・頸部リンパ節腫脹はない
川崎病の急性期治療
川崎病の急性期治療は、
- 免疫グロブリン超大量注射(IVIG);冠動脈炎の発症予防および治療。単回、又は分割投与で約80%が解熱
- アスピリン療法;血栓形成の抑制、冠動脈病変の予防。検査所見が正常化するまで約1 か月投与。
- 免疫グロブリン超大量注射(IVIG)が効かない場合;メチルプレドニゾロンパルス療法(血栓形成を促進するため、重症例以外は使わない)、シクロスポリン、ウリナスタチン、関節リウマチ治療薬のTNFアルファ阻害薬[抗TNF-αモノクローナル抗体のインフリキシマブ(レミケード®)](川崎病急性期治療のガイドライン)。
川崎病の慢性期治療
冠動脈病変が残存した場合、アスピリンなどの抗血小板薬を続ける。
冠動脈病変のフォローアップを行い冠動脈造影も施行。左冠動脈主幹部、左前下行枝近位部、多枝の冠動脈瘤・冠動脈狭窄はバイパス血管吻合術が第一選択になります。バイパス血管の開存の確認のため、心電図同期の胸部造影CTを定期的に行う。
7病日以内の早期に急性期治療を行い、強い炎症反応を抑えれば、冠動脈瘤を予防できる可能性は高い。
川崎病の初回報告から40年以上経過し、半数以上は成人になったが、有効な治療法のない当時に発生した冠動脈瘤を持つ人が1万人以上いると推定されます。これらの人は、動脈硬化の危険因子もないのに心筋梗塞、突然死をおこす危険があります。川崎病の既往がある人は心臓血管系の精密検査が必要ですが、本人も親も川崎病に罹った事を忘れている場合があります。
冠動脈瘤が無くとも、定期検診を発病後1~2 年は3~6 か月ごと、3年後以降は年1 回行う。
因果関係は不明だが、新型コロナウイルス感染症の後、川崎病を発症した報告が国内外であります。原因不明の川崎病のメカニズムを解明する手掛かりになるかもしれません。[Lancet. 2020 Jun 6;395(10239):1771-1778.][Hosp Pediatr. 2020 Jun;10(6):537-540.]
新型コロナウイルス感染症に対する過剰免疫より引き起こされる多系炎症症候群は川崎病に似ています。[Rheumatol Int. 2021 Jan;41(1):19-32.]
川崎病と小児 COVID-19 関連多系統炎症性症候群(MIS-C)の共通点は、
- 長引く発熱
- 皮膚の発疹
- リンパ節腫脹
- 下痢
- 炎症性マーカー上昇
です。しかし、小児 COVID-19 関連多系統炎症性症候群(MIS-C)は
- 発症年齢が10代
- 腹部症状が多い
- 左室収縮機能障害や急性心不全が多い
などの点がやや異なります。[Paediatr Respir Rev. 2021 Jun;38:51-57.][Rheumatol Int. 2021 Jan;41(1):19-32.]
小児 COVID-19 関連多系統炎症性症候群(MIS-C)は、低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス)を伴います。[J Clin Res Pediatr Endocrinol. 2022 Dec 1;14(4):402-408.][J Endocrinol Invest. 2022 Jan;45(1):199-208.]
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