高リン(P)血症,リン利尿ホルモン(FGF23)と腎性副甲状腺機能亢進症・甲状腺[橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌病態内科学講座で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。高リン血症、腎性副甲状腺機能亢進症の診療を行っておりません。
Summary
高リン血症は血清リン(P)濃度4.5mg/dL以上、原因は①低カルシウム血症性;慢性腎臓病(CKD)、副甲状腺機能低下症②高カルシウム血症性;サルコイドーシス、ビタミンD中毒。骨芽細胞で産生されるリン利尿ホルモン(FGF23)分泌促進→腎臓近位尿細管のリン再吸収低下・活性型ビタミンD産生抑制→低カルシウム血症・2次性(腎性)副甲状腺機能亢進症→①骨粗鬆症・骨軟化症②動脈硬化・血管石灰化→心血管障害(生命予後直結)。治療はリン制限(加工食品・清涼飲料水)、リン吸着剤[セベラマー、炭酸ランタン、スクロオキシ水酸化鉄(甲状腺ホルモン剤チラーヂンS吸収障害)]
Keywords
高リン血症,リン,P,低カルシウム血症,甲状腺機能低下症,高カルシウム血症性,リン利尿ホルモン,FGF23,腎性副甲状腺機能亢進症,リン吸着剤
高リン血症は血清リン(P)濃度が4.5 mg/dL以上の状態。 高リン血症の原因は、
低カルシウム血症に伴う
- 慢性腎臓病(CKD);腎機能低下(GFR< 30 mL/min)によりリン(P)排泄ができなくなる
- 副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、偽性偽性副甲状腺機能低下症
- 代謝性または呼吸性のアシドーシス
高カルシウム血症に伴う
低カルシウム血症、高カルシウム血症が治療対象になる場合は多いため、高リン血症に目が行く事は少ない。
骨芽細胞で産生されるリン利尿ホルモン(FGF23;fibroblast growth factor 23,線維芽細胞成長因子23)分泌は、高リン血症によって促進されます。
FGF23は
- 腎臓の近位尿細管におけるリンの再吸収を減弱させる
- 腎臓での活性型ビタミンD産生も抑制する
ため、
- 低カルシウム(Ca)血症
- 2次性(腎性)副甲状腺機能亢進症;代償性にPTH(副甲状腺ホルモン)分泌過剰(血中カルシウムを上昇させるための代償反応)
→骨粗鬆症・骨軟化症→骨折、寝たきりになり、弱って死亡(J Bone Miner Res. 2016 Jun;31(6):1146-57.)(Bone. 2013 Feb;52(2):562-7.)
→血管石灰化(J Am Soc Nephrol. 2008 Feb;19(2):213-6.)→心血管障害(生命予後に直結)(Ther Apher Dial. 2013 Apr;17(2):221-8.)
(詳細は CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常) )
高リン血症により動脈硬化(血管中膜石灰化、リン酸カルシウムが蓄積)が促進されます(Am J Kidney Dis. 1998 Apr;31(4):607-17.)(J Atheroscler Thromb. 2015;22(11):1197-206.)。
高リン血症により、老化が促進、不妊の原因になります(J Toxicol Sci. 2015 Feb;40(1):55-69.)(FASEB J: Official Publ Federation Am Soc Exp Biol. 2010;24:3562–71.)。
高リン血症の治療は、
- リン制限;リンは、あらゆる食品に含まれ、特に蛋白質中に多いため蛋白制限食が必要(Nat Rev Nephrol. 2011;7:369-84.)。しかし、蛋白制限は栄養状態の悪化、免疫力の低下につながるため、現実には無理。
豆類など植物性蛋白食材に含まれるリンは、腸からの吸収悪いフィチン酸塩の形で存在するため、植物性蛋白摂取が有用。
特に自然食品でない
①加工食品(インスタントラーメン、ハム)
②練り製品(かまぼこ、ソーセージ)
③調整飲料水・清涼飲料水;特にコーラ系、定期的に摂取する人は骨密度が低い
には、発色剤として、または麺の歯ごたえを良くする(かんすいなど)、清涼感・スッキリ感を演出するのに大量のリン酸添加物が含まれます。自然食品中心にするだけでも血清リン(P)濃度が低下します(J Ren Nutr. 2017 Mar;27(2):97-105)。でも現実には無理ですが・・・。
- リン吸着剤
①アルミニウム含有制酸薬(アルサルミン®、スクラルファート®)は甲状腺ホルモン(チラーヂンS)吸収障害、アルミニウム認知症、アルミニウム骨軟化症;透析患者には向かない
②炭酸カルシウム(アスパラカルシウム®、カルタン®)、酢酸カルシウム;透析患者は(カルシウム)x(リン)が過剰になり血管石灰化が生じる、甲状腺ホルモン(チラーヂン)吸収障害
③セベラマー(レナジェル®、フォスブロック®);カルシウムを含まないリン酸結合性ポリマー(透析患者に使用、食直前服用)、甲状腺ホルモン(チラーヂン)吸収障害(Int Urol Nephrol. 2007;39(2):599-602.)
④ビキサロマー(キックリン®);リン酸結合性ポリマーで、セベラマーと比べ膨潤しにくく、腹部膨満や便秘など消化器系の副作用が少ない。過塩素血症性の代謝性アシドーシスを起こさない。胆汁酸の吸着能が低く、ビタミンの吸収障害が少ない。
⑤炭酸ランタン(ホスレノール®);カルシウムを含有しない(透析患者に使用、食直前服用)、甲状腺ホルモン(チラー⑥スクロオキシ水酸化鉄、クエン酸第二鉄(リオナ®);鉄欠乏治療とリン吸着両方の作用(透析患者に使用)、甲状腺ホルモン(チラーヂン)吸収障害
- 食塩水による利尿;腎機能が正常な場合の急性高リン血症治療
- 血液透析(腎不全患者)
腎性副甲状腺機能亢進症の機序
リン蓄積による高リン血症は、骨芽細胞で産生されるリン利尿ホルモン(FGF23;fibroblast growth factor 23,線維芽細胞成長因子23)分泌を促進します。FGF23は
- 腎臓の近位尿細管でのリンの再吸収を減弱させ、
- 腎臓での活性型ビタミンD産生も抑制するため、
- 低カルシウム(Ca)血症
- 2次性(腎性)副甲状腺機能亢進症:血中カルシウムを上昇させるため、代償性にPTH(副甲状腺ホルモン)分泌過剰→副甲状腺過形成
による骨破壊の亢進・血管石灰化による心血管障害(生命予後に直結)がおこります(J Bone Miner Res. 2016 Jun;31(6):1146-57.)(Bone. 2013 Feb;52(2):562-7.)(Ther Apher Dial. 2013 Apr;17(2):221-8.)。
腎性副甲状腺機能亢進症の症状
- 骨粗鬆症・骨軟化症→骨折、寝たきりになり弱って死亡(J Bone Miner Res. 2016 Jun;31(6):1146-57.)(Bone. 2013 Feb;52(2):562-7.)
骨痛(線維性骨炎おこすほどの重症例)
骨髄線維化による造血能低下→貧血(Am J Kidney Dis. 2009 May;53(5):823-34.)
- 動脈硬化(血管中膜石灰化、リン酸カルシウムが蓄積)が促進されます(Am J Kidney Dis. 1998;31:607-617.)(J Atheroscler Thromb. 2015;22:1197-206.)。→心血管障害(生命予後に直結)(Ther Apher Dial. 2013 Apr;17(2):221-8.)
副甲状腺ホルモン(PTH)が心臓に直接作用し、心室性不整脈、左室収縮能・拡張能を低下
- 高リン血症により血清カルシウムが皮膚に沈着(皮膚石灰沈着症)
- 低カルシウム(Ca)血症の症状
- 副甲状腺ホルモン(PTH)によるかゆみ(難治性の掻痒症)
- 老化が促進(J Toxicol Sci. 2015 Feb;40(1):55-69.)
- 不妊の原因(FASEB J: Official Publ Federation Am Soc Exp Biol. 2010;24:3562–71.)。
腎性副甲状腺機能亢進症の治療
腎性副甲状腺機能亢進症の治療は高リン血症の治療
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。