甲状腺・内分泌と高ナトリウム血症,食塩中毒[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌病態内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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(Physiopaediaより)
長崎甲状腺クリニック(大阪)、甲状腺専門クリニックです。高ナトリウム血症自体の診療を行っておりません。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。高ナトリウム血症そのものの診療は行っておりません。
Summary
高ナトリウム血症は血清ナトリウム(Na)濃度145mEq/L以上で、脱水が原因。症状は脱水による口渇・高熱、浸透圧による脳神経細胞内脱水で頭痛・意識障害・けいれんなど中枢神経症状。脳血管も破綻、くも膜下出血・硬膜下血腫・脳内出血、脳浮腫・肺水腫。治療は大量補液。甲状腺クリーゼの脱水で高ナトリウム血症に。自殺目的など醤油(しょうゆ)大量摂取、食塩過剰摂取による食塩中毒、ナトリウム過剰輸液で高ナトリウム血症、1リットル(塩分100g以上)摂取で致死量、血清ナトリウム値185mEq/L以上で致命的。治療は胃洗浄、低張液大量輸液、血液透析、血漿交換。
Keywords
高ナトリウム血症,ナトリウム,Na,脱水,原因,症状,治療,甲状腺,食塩,しょうゆ
高ナトリウム血症は、血清ナトリウム(Na)濃度が145mEq/L以上の状態です。水分喪失量が水分摂取量よりも多い、脱水が原因。
高ナトリウム血症の症状は
- 口渇、高熱
- 頭痛、意識障害、けいれんなど中枢神経症状(浸透圧により、水が脳神経細胞から血管内へ移動する細胞内脱水)
高ナトリウム血症の治療は大量の補液。
甲状腺で高ナトリウム血症を来す状態は、甲状腺クリーゼのような究極の脱水状態に限られます。異常発汗など水分不足が原因。高熱と中枢神経症状により、甲状腺クリーゼの診断基準を、あっさり満たしてしまいます。
日本甲状腺学会においても高ナトリウム血症を伴う甲状腺クリーゼが報告されています。
- 札幌厚生病院の報告では、血清ナトリウム167 mEq/Lまで上昇、補液で改善したそうです。(第60回 日本甲状腺学会 P1-5-7 高ナトリウム血症と播種性血管内凝固症候群および横紋筋融解症 を合併した甲状腺クリーゼの1例)
- 横浜市立みなと赤十字病院の報告では、血清ナトリウム 155 mEq/Lまで上昇(第60回 日本甲状腺学会 P1-5-5 甲状腺クリーゼに高カルシウム血症を併発した1例)
その他、
- 神経サルコイドーシスに続発する汎下垂体機能低下症(尿崩症と中枢性甲状腺機能低下症を含む)が原因の脱水による高ナトリウム血症 [167 mEq/L]と高血清浸透圧の報告[381 mOsm/kg]。[Cureus. 2023 Aug 8;15(8):e43169.]
- 甲状腺髄様がん関連クッシング症候群に尿崩症を伴い高ナトリウム血症 [148 mEq/L]と高血清浸透圧[296 mOsm/kg]を来した報告[BMC Cancer. 2015 Sep 9;15:624.]
などがあります。
醤油(しょうゆ)の塩分濃度は10%以上につき、大量摂取で高ナトリウム血症をおこし死亡した報告があります。醤油(しょうゆ)を1リットル(致死量、塩分100g以上)も飲めばの話で、自殺目的かおふざけ以外はあり得ないでしょう。血中ナトリウム濃度は177 mEq/Lまで上昇したそうです。(Leg Med(Tokyo),2(2):84-87, 2000)
戦前は良くあったそうですが、現代は醤油(しょうゆ)なんか飲まなくても、睡眠薬を含め危険な薬が簡単に手に入るし、醤油(しょうゆ)を飲もうと言う発想自体あり得ません。中国では今もよくあるそうです。救命病棟24時シーズン2で自殺目的で醤油(しょうゆ)を飲んだ人(中高年女性)のエピソードがありました。
急激な高ナトリウム血症で、脳神経細胞内から水分が血管内に引き戻され細胞内脱水が起きます。
- 数時間以内で脱水による高熱、中枢神経障害(頭痛・けいれん・意識障害)
- 脳血管も破綻し、くも膜下出血・硬膜下血腫・脳内出血
- 脳浮腫・肺水腫
になります。
血清ナトリウム値185mEq/L以上になると致死的。(Leg Med (Tokyo). 2000; 2: 84–7.)
醤油(しょうゆ)大量摂取による高ナトリウム血症の治療は、
- 催吐、胃洗浄(摂取後 30 分~2 時間以内)
- 5%ブドウ糖静注、低張液大量輸液による排泄促進(12 時間以内)
- 活性炭には吸着しないので無効
- 血液透析、血漿交換
(J Emerg Med, 45(2):228-231, 2013)
醤油(しょうゆ)に含まれるヨウ素(ヨード)
醤油(しょうゆ)には食塩だけでなく、ヨウ素(ヨード)も含まれています。甲状腺の病気がある人も、日常生活で摂取する程度の醤油(しょうゆ)なら、ヨウ素(ヨード)含有量は軽微なので、制限の必要はありません。
例外的に、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に対するI-123 シンチグラフィー、アイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療、甲状腺癌全摘出後のI-131 アブレーション・アジュバント・治療は、わずかな量のヨウ素(ヨード)も制限しなければ、うまくいかないため、醤油(しょうゆ)も制限対象になります。
醤油(しょうゆ)以外の食塩過剰摂取による食塩中毒は、
- 大人が自ら食塩を食べる;統合失調症患者が、食塩そのまま約200gを約5~6時間かけて摂取(JJAAM. 2016; 27: 251-5.)
- 乳児が食塩を飲まされる;熱中症を心配した保護者が食塩5gを加えたイオン飲料を飲ませてしまった(2015年の事件)
などのパターンがあります。
病院内で同時期に複数の入院患者が高ナトリウム血症を来たす事があります。、特にICUでの同時多発性高ナトリウム血症は、目立つのですぐに分かります。
大抵は、ナトリウムの過剰輸液で
- 生理食塩水を一日2L以上点滴→自由水の維持液(3号輸液)に変更する
- ナトリウム化合物の抗生物質(セフトリアキソンナトリウムなど)→5%ブドウ糖液に変更する
抗利尿ホルモンに拮抗するバソプレシンV2-受容体拮抗薬のトルバプタン(サムスカ®)で、高カリウム血症・高ナトリウム血症をおこします。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,浪速区,生野区,天王寺区も近く。