温泉・入浴・お風呂・サウナ・マイクロバブルシャワーと甲状腺 [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 エコー検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等 糖尿病編 をクリックください
Summary
①長時間、熱い温泉に浸かる②サウナ室と水風呂の入浴を繰り返す③乾熱式のフィンランド式サウナ(80°C)の条件で心臓に過剰な負担が掛かり甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病では心臓血管障害、ヒートショック、突然死、入浴熱中症がおきる。含よう素泉はヨウ素(ヨード)を含み皮膚から吸収されるので甲状腺機能亢進症/バセドウ病には禁忌。甲状腺機能低下症症/橋本病もやめた方が良い。フィンランド式サウナでは甲状腺ホルモンに有意な変化ないが血清プロラクチン(PRL)は増加するため妊活中、不妊治療中、妊娠の女性は避けるべき。
Keywords
サウナ,水風呂.甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺機能低下症,橋本病,突然死,入浴熱中症,含よう素泉,プロラクチン
昭和23年に制定された温泉法では、湧出た水が摂氏25℃以上か、25℃以下でも温泉成分が規定値以上なら温泉と認められます。
温泉法では「温泉の成分、効用の適否について、見やすい場所に掲示しなければならない」と明記され、温泉に行くと必ず立て看板があります。
温泉の成分によっては、甲状腺の病気の人で注意を要する場合があります。
全ての温泉に共通の事
全ての温泉に共通の事として、
- 長時間、熱い温泉に浸かり続けると心臓に過剰な負担が掛かります
- 寒冷地、または冬場の露天風呂では湯との温度差によって急激に体内の循環動態が変化します。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、
など心臓・血管に障害、最悪、突然死を起こす危険あり。要注意です。
また、甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病では動脈硬化が進行し、狭心症/心筋梗塞、急性大動脈解離・大動脈瘤破裂 拡張期高血圧 をおこしやすい場合があります。
塩化物泉、炭酸水素塩泉
塩化物泉、炭酸水素塩泉は、ミネラルを豊富に含んでいます。飲用許可のある塩化物泉水の場合、ヨウ素(ヨード)を含んでいるなら、長期に飲んではダメです(別に旅行中、常識量飲むだけなら問題ない)。
含よう素泉
皮膚からのヨウ素(ヨード)吸収率はわずか0.1%なので、常識的な時間、浸かっているだけなら問題ありません。しかし、長時間、含よう素泉に浸かっていた場合のヨウ素(ヨード)吸収量は計り知れません。
含よう素泉水を飲むと、イソジンうがい液を飲んだような苦みがあります。
含よう素泉は、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の方には禁忌になります。大量のヨウ素(ヨード)が体に入ると甲状腺ホルモン合成が抑制され、逆に中途半端な量だと甲状腺ホルモン合成が促進され、どの道、良い事はありません。
禁忌にはなっていませんが、甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病でも皮膚からのヨウ素(ヨード)吸収による甲状腺ホルモンの合成抑制(持続性ウォルフチャイコフ効果)がおこるため、含よう素泉を避けた方が良いと思います。
たとえ甲状腺の病気が無い妊婦も、大量のヨウ素(ヨード)が体内に入ると甲状腺ホルモン合成が抑制され、一時的にも甲状腺機能低下症に至り、流早産をおこす危険があります。
温酸性泉、硫黄泉
温酸性泉、硫黄泉は、皮膚に対する刺激が強すぎるため、甲状腺機能が正常化していない甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症/バセドウ病、亜鉛欠乏の方には向きません(甲状腺ホルモン異常と皮膚・脱毛 )。場合によっては皮膚炎を起こす可能性があります。
旅館やホテルの管理された硫黄泉ではあり得ない事ですが、秘境など人の手が入っていない、誰も管理していない硫黄泉は硫化水素中毒に要注意です。人が簡単に入って来れないような場所なら、倒れていても発見されません。
硫化水素中毒で死亡すると体は緑色に、銀歯は黒く変色します。
高齢者の増加に伴って入浴中の死亡事故が増え続けています。2013年には1年間で1万9千人に及ぶ入浴中の突然死があったとされます。入浴中の死亡事故は
- ヒートショック(7%)
- 入浴熱中症(84%)
ヒートショック
寒い脱衣所から急に熱いお湯に入った時、あるいはサウナ室と水風呂の入浴を繰り返す時(超温冷交代浴)、体内は交感神経が優位となって、アドレナリンなどの物質が放出されます。その結果、血圧が変動して心筋梗塞をはじめとする心血管障害をおこします。
- 甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症から動脈硬化と狭心症/心筋梗塞
- 甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症から動脈硬化と急性大動脈解離、腹部大動脈瘤
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病から急性冠症候群、冠攣縮性狭心症
に至る危険があるため、甲状腺の病気のある人は、必ず御自分の主治医とよく相談しましょう。
サウナ愛好家には”ととのう”のが快感になる人がいます。アドレナリンの作用で気分がハイになっているのに、外気浴で副交感神経優位に切り替わると身体はリラックス状態になります。これが”ととのう”状態で、アドレナリンが代謝されるまでの約2分持続します。
また、心血管障害に至らなくても、入浴中の急激な血圧低下で脳血流が減少すると意識を失い溺死する危険もあります。
入浴熱中症
体温37度の人が41度のお湯に浸かると33分で体温が40度に、42度の湯なら26分に短縮されます。体温が40度を超えると熱中症の症状が出始め、42.5度で心室細動(Vf)をおこして突然死の危険性が生じます。高齢者は、感覚が低下し熱さを感じにくいため、入浴熱中症をおこす危険性が高くなります。また、体格が小さかったり、やせていると熱が体に蓄積しやすくなります。
甲状腺ホルモンが正常化していない甲状腺機能亢進症/バセドウ病では熱中症になりやすく、高齢者バセドウ病の人はさらに注意が必要です。甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人は、入浴の仕方を御自分の主治医と相談してください。
一部の水素入浴剤については国民生活センター、消費生活センターも注意を呼び掛けています。酸化カルシウムやアルミニウムが水と化学反応をおこして水素が発生するパック型入浴剤は、瞬時に高熱を発生させます。
国民生活センターのHPによると、「湯につけるとすぐに入浴剤の表面が90℃程度の高温になる、湯に入れて直ちに取り出すと、入浴剤表面から高温の蒸気が発生する」ため、浴槽に入れた水素入浴剤をすぐ取り出そうとして、火傷を負うトラブルが多数報告されているそうです。「取扱説明書をよく読み、ぬれた手やお湯に浸けた後は温度が下がるまで商品に直接触れないなど注意しましょう。」ともありますが、子供も含めて風呂に入る全員にそんなことを徹底させるのは無理があると思います。
また、全国の消費生活センターや医療機関ネットワークには
- 「水素が発生する入浴剤を使用したら湯の温度が高く火傷をした。」
- 「入浴剤を湯船に入れたら泡が出て湯温より高温になり驚いた」
との情報が寄せられているそうで、甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症の方も、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の方も、水素入浴剤で入浴熱中症やヒートショックにならないよう注意してください。
(参考、水素を発生するという入浴剤の注意点は?)
甲状腺および内分泌の病気のない健康な男女に、乾熱式のフィンランド式サウナ(80°C)に1日1回1時間 x 7日間入ってもらいホルモンの変化を調べた報告があります。
- 甲状腺ホルモンに有意な変化なし
- 副腎系;血漿ACTH、血清コルチゾールはわずかに減少
- 尿中カテコールアミンはわずかに増加
- 男性の血清成長ホルモン(GH)は16倍に増加し3日目以降に低下。血清プロラクチン(PRL)は2.3倍に増加し、低下せず(サウナ誘発性プロラクチン放出)。
- 女性の血清プロラクチン(PRL)は4倍以上に増加し、無月経に(サウナ誘発性プロラクチン放出)。
妊活中、不妊治療中、妊娠中の女性は、妊娠させないホルモンのプロラクチン(PRL)が増加するので、乾熱式のフィンランド式サウナ(80°C)を避けた方がよい(不妊症/習慣性流産・不育症と橋本病・甲状腺機能低下症)。
(Acta Physiol Scand. 1986 Nov;128(3):467-70.)
以上より、甲状腺の患者であってもなくても、筆者はサウナを勧めません。一般的に正しいとされるサウナの入り方は、
-
いきなり熱いところに行かず、徐々に熱いところへ移動していく(血圧の変動を最小限に抑え、心臓に負担を掛けない)
-
熱は上に昇るため、上下2段のシートでは上段の方が熱くなります。いきなり上段に座らず、下段で体を慣らす
マイクロバブルシャワーヘッドの高圧水流は洗浄効果が高く、皮脂がよく落ちる優れものです。しかし、どんな良いものでも使い方を間違えれば大変なことになります。
マイクロバブルシャワーで、甲状腺のう胞(甲状腺嚢胞)内に出血をおこす可能性があります。高圧のマイクロバブルシャワーヘッドを甲状腺の直上皮膚に至近距離から当てれば、甲状腺に打撃を与えます。 たまたま、当てた場所に甲状腺のう胞性腫瘍や単純のう胞(単純嚢胞)があれば、のう胞壁(嚢胞壁)に亀裂が入り出血します。
下に写真は、10年以上、変化がなかった良性嚢胞腺腫(良性のう胞腺腫)の患者さんです。10年以上、正常だった血清サイログロブリン値が初めて上昇したため、超音波エコー検査を行うと、のう胞(嚢胞)内に器質化し始めた血栓が見つかりました。たまたま、3か月前に年次フォローの超音波エコー検査で変化ないのを確認しており、詳しく問診したところ、マイクロバブルシャワーヘッドを購入し、良性嚢胞腺腫(良性のう胞腺腫)の直上皮膚に押し当てていたそうです。
くれぐれも、説明書をよく読んで正しく使いましょう。
マイクロバブルシャワーで、のう胞内出血(嚢胞内出血) 3か月前
マイクロバブルシャワーで、のう胞内出血(嚢胞内出血) 3か月前
マイクロバブルシャワーで、のう胞内出血(嚢胞内出血) 3か月前(拡大)
マイクロバブルシャワーで、のう胞内出血(嚢胞内出血)
マイクロバブルシャワーで、のう胞内出血(嚢胞内出血) ドプラーモード
マイクロバブルシャワーで、のう胞内出血(嚢胞内出血) 3か月後;のう胞(嚢胞)内の血腫は完全に吸収されて消滅
マイクロバブルシャワーで、のう胞内出血(嚢胞内出血) 9か月後;のう胞(嚢胞)は出血前よりも縮小
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区にも近い。