亜急性甲状腺炎と鑑別を要する組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病、亜急性リンパ節炎)[橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺専門の検査/治療/知見③ 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学で得た知識・経験・行った研究、毎年どこかで開催される日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)の診療を行っておりません。
Summary
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病、亜急性リンパ節炎)は東洋人の若い女性に多く原因不明。橋本病合併の報告あり。急性扁桃腺炎・頚部リンパ節腫大のありふれた症状。亜急性甲状腺炎と鑑別要。白血球減少、血小板減少・汎血球減少、単球増多、異型リンパ球、LDH高値、CRP上昇、sIL2-R上昇し悪性リンパ腫と鑑別要。確定診断はリンパ節生検。甲状腺機能亢進症/バセドウ病合併はステロイド投与でどちらも軽快、抗甲状腺薬投与は白血球減少が回復してから。抗甲状腺薬の無顆粒球症は似た症状だが単球増加しない。偶然、甲状腺癌とリンパ節転移が見つかる事も。
keywords
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- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要する組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)(本ページ)
- 甲状腺に痛みを呈する疾患
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要するのう胞内出血(嚢胞内出血)
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要する急性化膿性甲状腺炎
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要する降下性壊死性縦隔炎
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要する橋本病急性増悪
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要する伝染性単核球症
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要する風疹
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要する流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要する急性喉頭蓋炎
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要するKiller sore throat[致死的な喉(のど)の痛み]
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要するブルセラ症(波状熱)
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要するトキソプラズマ症
- 亜急性甲状腺炎と鑑別を要するマイコプラズマ感染症・マイコプラズマ肺炎
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病、亜急性リンパ節炎、histiocytic necrotizing lymphadenitis)は、
- 東洋人の若い女性(30歳以下)に多い;亜急性甲状腺炎より発症年齢が若く、伝染性単核球症と同じような年齢層
- 原因不明;ウイルスや自己免疫の関与が疑われているが不明。甲状腺機能正常橋本病合併の報告あり[Korean J Pediatr. 2012 Nov;55(11):445-8.][J Endocrinol Invest. 1996 Feb;19(2):136-7.]
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)は急性扁桃腺炎・頚部リンパ節腫大のありふれた症状。亜急性甲状腺炎との鑑別要。
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)は、超音波(エコー)検査にて、良性(反応性)リンパ節腫大を認めます。
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)は、
- 白血球減少(約50%)、ときに血小板減少・汎血球減少、30%に単球増多、異型リンパ球が認められ、伝染性単核球症・風疹、血球貪食症候群(合併あり)と鑑別要
- LDH高値、CRP軽度上昇、sIL2-R (可溶性インターロイキン2受容体)上昇、フェリチン上昇を認め、悪性リンパ腫との鑑別も必要
- 画像的にはリンパ節周囲の脂肪織混濁(perinodal infiltration)が高率、造影CTでリンパ節内部の壊死を示す増強不良域(約16%)[AJNR Am J Neuroradiol. 2004 Jun-Jul;25(6):1099-102.]
- 確定診断はリンパ節生検になりますが、若い女性が多いため、早期に軽快すればそこまでしません。症状が4週間以上続く場合に行われる。
頚部超音波(エコー)検査にて、良性(反応性)リンパ節腫大と言い切れずに、症状が4週間以上続く場合、悪性リンパ腫の除外診断のためリンパ節生検。組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)はリンパ節に壊死巣・組織球と大型リンパ球が増殖する特異な組織所見。
[Orphanet J Rare Dis. 2006 May 23;1:18.]
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)と無顆粒球症
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)は、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の最も恐ろしい副作用の無顆粒球症と似た症状です。しかし、無顆粒球症では単球が増加しません。甲状腺機能亢進症/バセドウ病で抗甲状腺薬を服用中の方が組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)になると困ります。
偶然にも、組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)の治療中に、甲状腺腫などから甲状腺機能亢進症/バセドウ病の合併が見つかった場合、抗甲状腺薬投与は、白血球減少が回復してからの方が無難でしょう。ステロイド投与で、ついでに甲状腺機能亢進症/バセドウ病も抑えられるので、組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)が治るのを待ちましょう(第53回 日本甲状腺学会 P-200 頚部リンパ節炎の経過中にバセドウ病と診断された一例)。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病で3ヶ月前からメチマゾール(日本ではメルカゾール)を服用している38歳の男性が、組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)を発症し、骨髄培養で非常にまれな病原体Cupriavidus pauculusが同定された報告があります。[Infect Drug Resist. 2022 Mar 10:15:1019-1025.]
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)と甲状腺癌
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)を契機に、偶然、甲状腺乳頭癌と、リンパ節生検によるリンパ節転移が見つかった報告があります。手遅れになる前に見つかって良かったですね。[Int J Angiol. 2015 Jun;24(2):145-50.]
同じく、組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)を契機に、偶然、甲状腺髄様癌と甲状腺機能低下症/橋本病が見つかった報告があります。[Korean J Intern Med. 2016 Nov;31(6):1184-1186.]
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)は先行性・再発性の無菌性髄膜炎を合併する事が多いとされます。抗RNP抗体を介した髄膜へのリンパ球浸潤が考えられています(第113回日本内科学会 P484 組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)に伴う無菌性髄膜炎の病態)。
組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)は、自然治癒に1~数ヶ月かかることもあります。ステロイド投与1~2ヵ月で治癒し予後良好ですが、突然死・劇症肝炎で死亡例もあります。[Orphanet J Rare Dis. 2006 May 23;1:18.]
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。