B型慢性肝炎・B型肝炎ワクチン、急性A型肝炎・急性E型肝炎と甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会学術集会で入手した知見です。
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甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。
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[Hepatitis B Foundationより改変]
Summary
甲状腺機能亢進症/バセドウ病とB型慢性肝炎の合併で重篤(重症)な肝不全に。B型肝炎ウイルス(HBV)関連クリオグロブリン血症性血管炎に慢性甲状腺炎(橋本病)を合併した報告あり。亜急性甲状腺炎のステロイド治療においてB型肝炎ウイルスの再活性化予防治療が必要。B型肝炎ワクチンで亜急性甲状腺炎をおこした報告あり。急性A型肝炎と急性E型肝炎で甲状腺機能亢進症/バセドウ病発症する。A型肝炎ワクチン(HAワクチン)2回接種後、5%で抗甲状腺ミクロソーム抗体陽性化。急性E型肝炎で亜急性甲状腺炎誘発。
Keywords
甲状腺機能亢進症,バセドウ病,B型慢性肝炎,合併,B型肝炎ウイルス,橋本病,亜急性甲状腺炎,B型肝炎ワクチン,急性A型肝炎,急性E型肝炎
甲状腺機能亢進症/バセドウ病だけでも、様々な肝臓障害が起こります(甲状腺機能亢進症/バセドウ病と肝障害 )。ウイルス性肝炎(C型慢性肝炎・B型慢性肝炎)と甲状腺機能亢進症/バセドウ病が合併すれば、重篤(重症)な肝不全に至る事があります。報告例では、人工肝補助療法と甲状腺全摘手術を行い、すみやかに肝不全は改善したそうです。(日消誌 2015;112:94―100)
日本の肝臓癌死亡原因の十数%はB型肝炎ウィルス(HBV)持続感染です。
HBVキャリア[母子感染(垂直感染)が主な原因]では
- 10代後半-20代前半に肝炎発症
- 80~85%は非活動性キャリアに移行
10~15%は慢性肝炎→肝硬変
核酸アナログ製剤(エンテカビルなど)は、B型肝炎ウィルス(HBV)増殖過程の逆転写を阻害する薬です。
- 35歳未満HBe抗原陽性者は、最大2年以内にHBe抗体により抗原が自然消失しなければ治療になる
35歳未満HBe抗原陽性/陰性にかかわらず、ALT 31 IU/L・HBV DNA 4 copies/mL 以上であればペグインターフェロンα(Peg-IFNα)2aが第一選択
線維化進行例(血小板15万/μL 未満)はエンテカビル(Entecavir、バラクルード®)が第一選択
肝硬変ではエンテカビルが第一選択(HBV DNA 2.1 copies/mL)
- 35歳以上ではHBe抗原陽性/陰性ともにエンテカビルが第一選択
ペグインターフェロンα(Peg-IFNα)2a使用で甲状腺機能異常が起こり得ます。
B型肝炎ウイルス(HBV)関連クリオグロブリン血症性血管炎に慢性甲状腺炎(橋本病)を合併
B型肝炎ウイルス(HBV)関連クリオグロブリン血症性血管炎に、溶血性貧血と慢性甲状腺炎(橋本病)を合併した報告があります。[Kidney Blood Press Res. 2014;39(1):65-73.]
C型慢性肝炎に慢性甲状腺炎(橋本病)とクリオグロブリン血症を合併するのは珍しくありませんが・・・[Front Endocrinol (Lausanne). 2017 Jul 7;8:159.]。
亜急性甲状腺炎のステロイド治療でB型肝炎ウイルスが再活性化
B型肝炎キャリアや慢性B型肝炎患者が亜急性甲状腺炎に罹り、ステロイド治療を行う場合、B型肝炎ウイルスの再活性化予防治療も必要になります。(ステロイド治療前のB型肝炎・C型肝炎検査)
B型肝炎ワクチン
B型肝炎ワクチンは3回接種で1コース;初回接種の1カ月後に2回目接種、その6カ月後3回目接種。1コースでHBs抗体が十分に獲得できない場合、2コースまで接種(3コース目はない)
B型肝炎ワクチン接種で獲得された免疫抗体のHBs抗体は、時間経過と伴に次第に減弱、接種後8年以上で約60%が陰性化。しかし、免疫記憶は残り、B型肝炎ウイルスへの抵抗性は消えないので追加接種は必要ありません。
B型肝炎ウイルスキャリア妊婦における母子感染(垂直感染)予防には、出生後(可能なら12 時間以内に)新生児への免疫グロブリン投与とB型肝炎ワクチン接種が必要です。さらに1 か月後と6 か月後のB型肝炎ワクチン接種で、大半の母児感染を予防できます。
しかし、妊婦のウイルス量が多い場合やHBe 抗原陽性の場合は、既に胎内感染している可能性があります。
B型肝炎ワクチンで亜急性甲状腺炎をおこした報告があります。偶然なのか、抗原抗体反応により放出されたサイトカインが亜急性甲状腺炎を誘発したのか不明です。(Endocr J. 1998 Feb; 45(1):135.)
A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による急性肝炎、稀に劇症肝炎です。A型肝炎は慢性化しません。A型肝炎ウイルス(HAV)は汚染された食品・飲料水から経口感染するため、衛生状態の悪い東南アジアなどに渡航後、帰国してから発症します(輸入感染症)。しかし、日本国内でも外国産(糞便を飼料に使用している)の生牡蛎(かき)を食べれば感染します[ヨウ素(ヨード)が多いだけでは済まない。
A型肝炎の潜伏期間は1 か月前後です。IgM-HAV 抗体陽性。A型肝炎の特効薬はなく、治療は安静と対症療法。通常5~6 週で完全に治癒するが、稀に劇症化。
急性A型肝炎と甲状腺機能亢進症/バセドウ病の同時発症例が報告されており、急性A型肝炎が自己免疫を誘導してバセドウ病の発症に繋がる可能性が考えられます。
A型肝炎ワクチン(HAワクチン)を小児に2回接種した後、5%で抗甲状腺ミクロソーム抗体が陽性化しました[J Investig Allergol Clin Immunol. 2011;21(5):389-93.]。
E型肝炎は、E型肝炎ウイルス(HEV)感染による急性肝炎、稀に劇症肝炎です。E型肝炎は慢性化しません。E型肝炎ウイルス(HEV)は汚染された食品・飲料水から経口感染するため、衛生状態の悪い東南アジアなどに渡航後、帰国してから発症します(輸入感染症)。しかし、日本国内でもシカ・イノシシ・ブタの生肉(生焼けの肉)を食べれば感染します。
E型肝炎の潜伏期間は約6週間です。E型肝炎の特効薬はなく、治療は安静と対症療法。
E型肝炎ウイルス感染は自己免疫性肝炎および自己免疫性甲状腺炎疾患の引き金となる可能性があります。急性E型肝炎にによって引き起こされた甲状腺機能亢進症/バセドウ病の報告があります(BMJ Case Rep. 2012 Apr 23;2012:bcr1220115441.)
急性E型肝炎により亜急性甲状腺炎が誘発された報告もあります(Ann Hepatol. 2015 Jan-Feb;14(1):141-2.)。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,浪速区,生野区,天王寺区,東大阪市も近く。