妊娠高血圧、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)・妊娠高血圧腎症・加重型妊娠高血圧腎症[橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
妊娠前期において抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性なら、妊娠高血圧症候群のリスクが高いが、重症度は甲状腺機能障害と関連しない。甲状腺機能亢進症の母親も妊娠高血圧症候群のリスクが高い(バセドウ病妊娠がハイリスク妊娠である理由)。潜在性甲状腺機能低下症、顕在性甲状腺機能低下症ともに妊娠高血圧のリスクが高い。妊娠高血圧は子宮胎盤機能不全(胎児発育不全)に。妊娠高血圧治療は160/110 mmHg以上で降圧薬使用)[メチルド-パ・ヒドララジン・ラベタロール・ニフェジピン・アムロジピン]。
Keywords
妊娠前期,妊娠高血圧症候群,甲状腺,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺機能低下症,妊娠高血圧,胎児,治療,降圧薬
妊娠後は、女性ホルモンによる血管拡張作用で血圧が緩やかに低下。妊娠中期、最低血圧になった後、緩やかに上昇し、妊娠40 週前後で妊娠前血圧に戻る。
妊娠高血圧症候群は、かつて『妊娠中毒症』と呼ばれていたもので、妊婦の5%(20人に1人)に起こります。妊娠高血圧症候群を分類すると
- 妊娠高血圧
- 妊娠高血圧腎症
- 加重型妊娠高血圧腎症
- 高血圧合併妊娠;高血圧が妊娠前~妊娠20 週までに存在し、加重型妊娠高血圧腎症を発症していない
に分かれます。
妊娠末期(妊娠32~40週)に発症することが多く、早期に発症する程、重症になります。
- 母体は妊娠高血圧、蛋白尿、子癇前症→けいれん発作(子癇)、脳出血、肝障害、腎障害、HELLP 症候群(ヘルプ症候群)、急性妊娠脂肪肝
- 胎児は胎盤機能の低下→胎盤血流量減少→酸素・栄養供給が低下→発育不全、常位胎盤早期剥離、胎児機能不全、、未熟児、早産、子宮内胎児死亡
妊娠前期において抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)が陽性なら、妊娠高血圧症候群のリスクが高い(Clin Endocrinol (Oxf). 2018 Jun;88(6):928-935.)。しかし、妊娠高血圧症候群の重症度は甲状腺機能障害と関連しない(J Pregnancy. 2012;2012:742695.)
また、甲状腺機能亢進症の母親も妊娠高血圧症候群のリスクが高くなります(4.2倍)(J Clin Endocrinol Metab. 2014 Dec;99(12):E2591-8.)。バセドウ病妊娠がハイリスク妊娠である理由の一つです(妊娠とバセドウ病 )。
妊娠高血圧の治療は
- 安静と入院が中心で、食塩制限をおこないません。
- 160 mmHg/110 mmHg以上で降圧薬使用(降圧目標は収縮期血圧140~150mmHg、拡張期血圧90~100mmHg)
・メチルド-パ(中枢性交感神経抑制薬)・ヒドララジン(血管拡張薬);添付文書では「妊婦に投与する場合、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」と明記
・ラベタロール(αβ遮断薬);日本高血圧ガイドライン2009では使用可能、添付文書にも「妊婦に投与する場合、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」となっています。
・ニフェジピン・アムロジピン;2022年12月、添付文書が改訂されて、「妊婦に投与する場合、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」となったため、妊娠周期を問わず投与可能になりました。
※以前は、「妊娠20週未満又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと」でした
- 利尿剤は循環血液量を低下させ、ACEI/ARBは胎児死亡を引きおこすため使用しない。
薬が効かない急激で重症の妊娠高血圧には、最終手段として緊急帝王切開を行い、母体の降圧と胎児の救出を行います。
妊娠高血圧は周産期リスクが高く、悪化すると胎盤機能が低下します。臍帯(へそのお)から酸素や栄養が胎児に届きにくくなり、胎児発育が悪くなります(子宮内胎児発育遅延)。 また、早産率も高くなります(第113回日本内科学会 P66 高血圧合併妊娠に対する早期の内科的介入の有用性に関する検討)。
妊娠高血圧腎症は妊娠高血圧症に
- 蛋白尿(0.3g/日以上)
- 蛋白尿を認めなくても肝臓障害、腎臓障害、脳卒中、神経障害、血液凝固異常、子宮胎盤機能不全(胎児発育不全、臍帯動脈血流波形異常、死産など)
を合併する状態。
重度の妊娠高血圧腎症(血圧160 mmHg/110 mmHg以上かつ蛋白2+など)では子癇予防のため、硫酸マグネシウム投与が推奨されます。
加重型妊娠高血圧腎症は、
-
高血圧症が妊娠前~妊娠20 週までに存在し、妊娠20 週以降に蛋白尿または子宮胎盤機能不全を発症
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高血圧と蛋白尿が妊娠前~妊娠20 週までに存在し、妊娠20 週以降にいずれかが増悪
-
蛋白尿のみの腎疾患が妊娠前~妊娠20 週までに存在し、妊娠20 週以降に高血圧を発症
妊娠高血圧症候群が、出産後2年以内に通常の高血圧症へ移行する確率は28.4%で、コントロール群(非妊娠高血圧症候群)9.1%に対して有意に高い。特に、出産後6カ月以内が最も多いです。(BJOG. 2021 Feb;128(3):495-503.)
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,浪速区も近く。