糖尿病壊疽,糖尿病ガス壊疽,ウェルシュ菌,パスツレラ菌,破傷風,ユーパスタ,ヨウ素中毒[橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
糖尿病:専門の検査治療[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー 長崎甲状腺クリニック大阪]
甲状腺専門・内分泌代謝・動脈硬化の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学大学院医学研究科(現、大阪公立大学大学院医学研究科) 代謝内分泌病態内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックに特化するため、糖尿病内科を廃止しました。糖尿病壊疽の治療を行っておりません。
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Summary
糖尿病ガス壊疽は嫌気性グラム陽性桿菌で芽胞形成するウェルシュ菌感染。気腫性急性化膿性甲状腺炎、生体内毒素型食中毒の原因にも。糖尿病患者ではネコ・イヌ・ウサギの咬み傷・引っ搔き傷にパスツレラ菌が感染し蜂窩織炎・敗血症に。糖尿病足からの破傷風菌(嫌気性菌クロストリジウム・テタニ)感染報告は多く、破傷風毒素による死亡リスクが高い。糖尿病性足壊疽にヨード(ヨウ素)含有軟膏剤(ユーパスタ®;精製白糖・ポビドンヨード軟膏)を長期間使用し急激な甲状腺機能低下症に[急性ヨード(ヨウ素)中毒]。フルニエ壊疽は陰部や肛門周囲のガス壊疽・壊死性筋膜炎。
Keywords
糖尿病ガス壊疽,ウェルシュ菌,甲状腺,パスツレラ菌,破傷風,糖尿病性足壊疽,ユーパスタ,ポビドンヨード軟膏,甲状腺機能低下症,ヨウ素中毒
糖尿病ガス壊疽の最も多い原因はClostridium perfringens(ウェルシュ菌)感染。ウェルシュ菌は、嫌気性のグラム陽性桿菌で芽胞を形成し、
- 糖尿病ガス壊疽を起こす。抗生剤が効きやすいはずですが血流が悪い足には十分届きません。
- 気腫性急性化膿性甲状腺炎と甲状腺膿瘍
- 腸管毒素(エンテロトキシン)による生体内毒素型食中毒をおこします。小腸内で芽胞型に移行する時にエンテロトキシンを産生。芽胞型ウェルシュ菌は、セレウス菌とともに加熱で殺菌できない。食中毒に糖尿病は関係ありません。
4類感染症の破傷風は、嫌気性菌(クロストリジウム・テタニ、破傷風菌)が傷口から入り感染する。破傷風毒素による死亡リスクは50%で、65歳以上、糖尿病、予防接種を受けていない人で高くなります。糖尿病足からの感染報告が多く、日本でも年間100例ほどが破傷風菌に感染します。
2024年から1000円札の肖像画になる北里柴三郎が破傷風菌の純粋培養に成功したのは有名な話です。
破傷風菌は土の中なら、どこにでもいるため、傷口が土に触れると感染します。ガーデニングで感染する事もあります。3~21日の潜伏期を経て発症。
破傷風の症状は、
- 口を開けにくい(開口障害)ため、食べ難い・食事が飲み込めない(甲状腺の病気と勘違いされる事も)、しゃべり難い(ろれつが回っていない様なしゃべり方)。首筋が凝った様な感じ、寝汗、歯ぎしりなどの症状も。(病期第一期)
- 顔面筋硬直して、作り笑いのような表情(破傷風顔貌)(病期第二期)
- 頚部硬直、背中が反るように痛む(後弓反張・反弓緊張)→全身強直性痙攣(けいれん)に至ります。作用範囲は筋肉のみなので、意識は鮮明。死ぬまで苦しみ、やがて呼吸が障害され窒息します。(病期第三期)
破傷風の確定診断となる嫌気性菌培養同定は、非常に時間が掛かり間に合わないため、臨床経過で診断します。
破傷風の治療は
- 抗生物質ペニシリン(破傷風菌を殺菌するが毒素は消せない)
- 抗破傷風(毒素)免疫グロブリン(放出された破傷風毒素を中和)
- 破傷風の予防接種(破傷風トキソイド;毒素を無毒化したもの)再投与
- 創部の開放、デブリードマン
- 病期第三期は、筋弛緩薬を使った人工呼吸管理が必要になります。
破傷風予防接種(破傷風トキソイド;毒素を無毒化したもの)を受けていない方が大勢います(IASR.2009, 30;65-66)。
- 1968年以前の生まれ;未接種
- 1975-1981年生まれ;未接種の人もいる
- 1995年以降の生まれ;未接種の人もいる
4種混合ワクチン=ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ
破傷風トキソイドは10年毎の追加接種が必要ですが、保健センターから通知が来るわけでなく、受ける必要性を知っている人はほとんどありません。行っている医療機関も一握りです(忘れ去られた予防接種)。
破傷風予防接種を受けていない、予防接種後10年以上経過している、受けたかどうか不明の方は、
- きれいで小さな傷(裂傷)なら破傷風トキソイドのみ投与
- それ以外(傷口が汚染、挫創)、受傷後6時間以上経過しているなら、破傷風トキソイド、破傷風グロブリン投与
破傷風が発症した場合の死亡率は40%を超えます
フルニエ壊疽(Fournier壊疽)は外傷、尿路感染などから、陰部や肛門周囲に急速に炎症が進行して起きるガス壊疽・壊死性筋膜炎です。
糖尿病やクリオグロブリン血症などの、免疫低下・血流障害に
などが感染しておこります。
糖尿病性足壊疽にヨード(ヨウ素)含有軟膏剤(ユーパスタ®;精製白糖・ポビドンヨード軟膏)を4カ月間使用し、急激な甲状腺機能低下症と急性ヨード(ヨウ素)中毒による意識障害、片麻痺を起こした高齢男性(82歳)の報告があります。
鑑別として、粘液水腫性昏睡、橋本脳症も考えられますが、ユーパスタ®中止後、数日で回復したため否定的です。
意識障害、片麻痺時のTSH 76.7 μIU/mL, FT3 1.3 pg/mL, FT4 0.2 ng/dLで、一見、甲状腺機能低下症の程度は大した事ないように見えますが、FT3, FT4に見合うだけのTSH上昇がなく、脳神経(視床下部-下垂体系)の機能障害があると考えられます(高齢者にはよくあることですが・・)。また、自己抗体陽性で橋本病を持っていた様です[急性ヨード(ヨウ素)中毒前の甲状腺機能は不明]。[Intern Med. 2011;50(21):2627-32.](第53回 日本甲状腺学会 P-13 糖尿病性足壊疽の軟膏治療によるヨードの経皮的吸収により意識障害をきたした橋本病合併ヨード中毒の一例)
他の症例では、閉塞性動脈硬化症(ASO)にヨード(ヨウ素)含有軟膏剤(ユーパスタ®)を数カ月使用し、同じ様に甲状腺機能低下症をおこした。尿中ヨード(ヨウ素)1700 μg/L、Cr補正して 7180 μg/g・Crと高値、中止後20日で 25 μg/L、106 μg/g・Crに改善したそうです。89歳女性で、腎機能低下もあるため、ヨード(ヨウ素)排泄障害も一因と考えられます。(第53回 日本甲状腺学会 P-26 ユーパスタ®の長期使用が増悪因子と考えられた粘液水腫の1例)
ヨード(ヨウ素)含有軟膏剤の適切な使用
無治療の褥瘡で浸出液が多い創面は、感染を伴っている可能性があり、①感染制御と②浸出液を吸収する(水溶性でなければならない)ため、ヨード(ヨウ素)含有軟膏剤を使用。浸出液が無くなれば、肉芽形成促進剤(オルセノン軟膏、プロスタンディン軟膏)に変更。
感染制御にゲーベンクリームは油性なので不適、ゲンタシン軟膏は耐性菌の問題から原則禁忌。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,天王寺区,東大阪市,浪速区も近く。