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劇症1型糖尿病とバセドウ病・甲状腺機能亢進症の合併[橋本病 動脈硬化 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

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劇症1型糖尿病とバセドウ病・甲状腺機能亢進症の合併

長崎甲状腺クリニック ゆるキャラ Jo

動脈硬化した血管に甲状腺が! バセドウ病の甲状腺がモデル)

長崎甲状腺クリニック(大阪)では甲状腺専門クリニックに特化するため、糖尿病内科を廃止しました。

劇症1型糖尿病とバセドウ病の合併

Summary

劇症1型糖尿病は約1週間以内でインスリン分泌能が廃絶し糖尿病性ケトーシスか糖尿病性ケトアシドーシスに陥る危険な糖尿病抗GAD抗体など膵島関連自己抗体陰性、HLA DRB1*04:05-DQB1*04:01と関連、妊娠契機に発症あり、約70%は上気道炎症状、消化器症状の前駆症状、約98%は発症時に膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1など)が上昇。劇症1型糖尿病バセドウ病橋本病(慢性甲状腺炎)の合併報告あり。免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)で劇症1型糖尿病無痛性甲状腺炎を同時発症した報告もあり。

Keywords

劇症1型糖尿病,糖尿病性ケトアシドーシス,HLA,アミラーゼ,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,橋本病,免疫チェックポイント阻害薬,無痛性甲状腺炎,甲状腺

劇症1型糖尿病とは

劇症1型糖尿病は、約1週間以内でインスリン分泌能が廃絶し、糖尿病性ケトーシスあるいは糖尿病性ケトアシドーシスに陥る危険な糖尿病です。

  1. 抗GAD抗体など膵島関連自己抗体が陰性。
     
  2. HLA DRB1*04:05-DQB1*04:01との関連が明らか
    ※HLA-DRのアミノ酸多型によってバセドウ病橋本病いずれになるか決まるとの報告があります(J Autoimmun. 2008;30(1-2):58–62.)(ついに甲状腺にもHLA遺伝子診断)
     
  3. 妊娠に関連して発症することがある(甲状腺機能亢進症/バセドウ病妊娠契機に発症する場合がある[Thyroid Res. 2017 Aug 8:10:4.])
     
  4. 約70%の患者で前駆症状として上気道炎症状(発熱、咽頭痛など)、消化器症状(上腹部痛、悪心・嘔吐など)がある(亜急性甲状腺炎もウイルス感染の前駆症状あり)
     
  5. 約98%の患者で発症時に膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1など)が上昇

(糖尿病55:815-820, 2012)

筆者が理解できないのは、診断基準にある「初診時の(随時)血糖値288 mg/dL 以上、かつ HbA1C 値<8.5%」という点です。HbA1C 値 8.0-8.4%の元々コントロール不良糖尿病が、不節制・ストレス・感染症・炎症・妊娠などで一気に悪化しただけかもしれません。報告例など見ると、抗GAD抗体陽性なのに劇症1型糖尿病と言ったり、インスリン分泌能が保たれているのに劇症1型糖尿病言ったり、甲状腺が専門の筆者には理解できません。

劇症1型糖尿病とバセドウ病の合併

劇症1型糖尿病バセドウ病の合併は比較的稀ですが、症例報告はあります[Diabetes Care. 2002 Oct;25(10):1894-5.][糖尿病 Vol. 51 (2008)  No. 12  P 1087-1092]。言うまでもなく糖尿病性ケトアシドーシスをおこします。

1型糖尿病合併甲状腺機能亢進症/バセドウ病[APS(多腺性自己免疫症候群)3A型]は、両者の相乗効果で急激な血糖上昇を来すため、HbA1Cが大して高くないのに糖尿病性ケトアシドーシスに至る場合がありり、あたかも劇症1型糖尿病の様です。しかし、1型糖尿病合併甲状腺機能亢進症/バセドウ病ではインスリン分泌能が完全に廃絶していないケースもあり、抗GAD抗体など膵島関連自己抗体が陽性になるため、劇症1型糖尿病と違う事が分かります。(第60回 日本甲状腺学会 P1-1-8 バセドウ病を伴う自己免疫性1型糖尿病が劇症1型糖尿病様に発症し、急性壊死性食道炎を合併した1例)

また、一過性のバセドウ病抗体(TRAb)上昇を認めた劇症1型糖尿病の報告もあります。[Diabetes Care. 2002 May;25(5):935-6.]

劇症1型糖尿病と無痛性甲状腺炎の合併

免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)で劇症1型糖尿病無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)を同時発症した報告もあります(Tohoku J Exp Med. 2018 Jan;244(1):33-40.)。このケースでは、ただ単に免疫関連副作用[免疫関連有害事象 (immune-related adverse event, irAE)としての自己免疫性インスリン依存型糖尿病が、超加速されて発症しただけと筆者は考えています。(診断基準は同一でも特発性の劇症1型糖尿病は根本的に異なると思います)

Drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms (DRESS)による劇症1型糖尿病無痛性甲状腺炎の同時発症報告もあります。[Avicenna J Med. 2017 Apr-Jun;7(2):67-70.]

一方、時間差を置いて無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)と劇症1型糖尿病が発症するケースもあります。アテゾリズマブ投与後1か月で無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)を発症し、さらにその9か月後(すでに甲状腺機能低下症状態)に劇症1型糖尿病をおこしたそうです。(第66回 日本甲状腺学会 P15-5 進展型小細胞肺癌にアテゾリズマブ投与後、無痛性甲状腺炎と劇症1型糖尿病をきたした1例)

アテゾリズマブ誘発性劇症1型糖尿病は、投薬中止数か月後(4-9カ月)にも発生する可能性があります[Respirol Case Rep. 2020 Nov 15;8(9):e00685.]。

免疫チェックポイント阻害薬と劇症1型糖尿病

[Biology (Basel). 2022 Nov 15;11(11):1662.より改変]

劇症1型糖尿病と橋本病(慢性甲状腺炎)の合併

劇症1型糖尿病橋本病(慢性甲状腺炎)の合併報告はありますが、偶然の合併かもしれません

  1. 40代男性、甲状腺機能正常橋本病;腸チフスワクチン接種数日後に、糖尿病性ケトアシ ドーシスをおこす
  2. 70代男性、甲状腺機能正常橋本病抗GAD抗体 12.4 U/mL(>5.0 U/mL)、HLA DRB1*04:03DQB1*03:02,DRB1*13:02-DQB1*06:09
  3. 71 歳女性、甲状腺機能正常橋本病薬剤誘発性過敏症(DIHS)におけるHHV-6の再活性化に関連して発症。抗 GAD抗体抗IA-2抗体は陰性。プレドニゾロン中止後、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行。[Int J Dermatol. 2013 Mar;52(3):355-7.]

と、どう言う訳か男性が多いです。(第62回 日本甲状腺学会 O8-1 劇症1型糖尿病4例における自己免疫性甲状腺疾患合併)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

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  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
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