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甲状腺濾胞癌の特殊型(好酸性細胞型,ハースル細胞癌,ヒュルトレ細胞癌,印環細胞型濾胞癌)と甲状腺異型腺腫[橋本病 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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ハースル細胞癌 超音波(エコー)画像

甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。

その他、甲状腺の基本的な事は甲状腺の基本(初心者用) 橋本病の基本(初心者用)を、高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

[ハースル細胞癌 超音波(エコー)画像 Ultrasoud Cases Infoより改変]

Summary

甲状腺濾胞癌好酸性細胞型[Hurthle cell carcinoma、ハースル細胞癌、ヒュルトレ細胞癌]は日本で非常に少なく、通常型濾胞癌と比べ①多発性②浸潤性強くリンパ節転移・遠隔転移しやすい③放射性ヨード感受性乏しい④予後に差があるか論争中。細胞診は良性濾胞腺腫好酸性細胞型と鑑別難だが通常型甲状腺濾胞癌と同じく微細・粗大石灰化が多発。甲状腺印環細胞型濾胞癌は超稀。甲状腺異型腺腫は組織学的に強い構造異型、細胞異型を示すが被膜浸潤・脈管侵襲なく甲状腺良性濾胞腺腫の特殊型に分類。しかしp53遺伝子変異を持ち、前がん病変と考えられる。

key Words

甲状腺濾胞癌,好酸性細胞型,Hurthle cell carcinoma,ハースル細胞癌,ヒュルトレ細胞癌,転移,予後,鑑別,印環細胞型濾胞癌,甲状腺異型腺腫

甲状腺濾胞癌の特殊型(好酸性細胞型,ハースル細胞癌,ヒュルトレ細胞癌,印環細胞型濾胞癌)

甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型) (専門的過ぎます、医療関係以外の方は無視してください)

甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)は、好酸性細胞が腫瘍の75%以上を占め、Hurthle cell carcinoma (ハースル細胞癌、ハーテル細胞癌、ヒュルトレ細胞癌)とも呼ばれます。男女比は1:2~1:4で女性に多い。日本では非常に少なく、通常型濾胞癌と生物学的に多くの点で異なります。(World J Surg Oncol. 2004 Aug 11;2:27.)

  1. 通常型濾胞癌は単発ですが、甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)は多発性が多い(Cancer. 2006 Apr 15; 106(8):1669-76.)
     
  2. 甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)通常型濾胞癌と比べて浸潤性が強く、リンパ節転移・遠隔転移しやすい(10–20%)。(Cancer. 2006 Apr 15; 106(8):1669-76.)
    通常型濾胞癌のリンパ節転移は稀
     
  3. 放射性ヨウ素(ヨード)内用療法は、通常型濾胞癌の75%程度が感受性を示すが,甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)の95%が感受性を示さないとされます(Curr Treat Options Oncol 2001;2:331-335.)
     
  4. 長年、通常型濾胞癌と予後に差異があるか否かの論争が繰り返されています。浸潤性の強さからして予後は悪いとされます(J Clin Oncol. 2001;19(10):2616–2625.)。しかし、遠隔転移した場合の5年生存率は80%(World J Surg. 2004 Dec; 28(12):1266-70.)、遠隔転移してない場合の5年生存率85.1%、10年生存率71.1%で、通常型濾胞癌とあまり変わりません(Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2003 Feb; 129(2):207-10.)。

    通常型濾胞癌485例と甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)73例を解析した伊藤病院の報告では、甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)は、
    ①高齢者が多い
    微小浸潤癌が多い
    ③初回手術時の遠隔転移が少ない
    ④予後に差は無い
    との事です。(第55回 日本甲状腺学会 P1-05-12 甲状腺機能好酸性細胞型濾胞癌の予後は通常型濾胞癌と比較して悪いのか?)

甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)の細胞診所見は、良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)と鑑別難です。しかし、エコー上、甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)は、多発性・リンパ節転移などの特徴があり、通常型甲状腺濾胞癌と同じく微細・粗大石灰化も多発します。(Onco Targets Ther. 2016 Nov 7;9:6873-6884.)

甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型) 超音波(エコー)画像
甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)細胞診

甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)細胞診(野口病院HPより)

甲状腺印環細胞型濾胞癌    (専門的過ぎます、医療関係以外の方は無視してください)

印環細胞型甲状腺腫瘍は非常にまれで、腺腫、過形成がそれぞれ約70%、20%、10%とされます。[Am J Surg Pathol. 1985 Oct;9(10):705-22.][Am J Clin Pathol. 2017 Sep 1;148(3):251-258.]

甲状腺印環細胞型濾胞癌は超稀な甲状腺濾胞癌です。日本甲状腺学会で報告されているものの、筆者は遭遇した事がありません。穿刺細胞診では印環細胞を確認できず、組織診(コア生検)にて好酸性物質を含み、核が偏在した印環細胞を認めます。印環細胞は胃のスキルス癌として有名ですが、免疫組織化学染色でサイログロブリンTTF-1、PAX8陽性になるのを確認すれば、胃スキルス癌の転移でない事が判ります。(第56回 日本甲状腺学会 P1-109 甲状腺印環細胞型濾胞癌の1 例)

甲状腺印環細胞型濾胞癌

甲状腺印環細胞型濾胞癌 (A)穿刺細胞診では印環細胞を確認できず (B)組織診(コア生検)にて印環細胞を確認 [Diagn Pathol. 2019 Nov 7;14(1):127.]

甲状腺濾胞癌なのか?否か?甲状腺異型腺腫

甲状腺異型腺腫甲状腺良性濾胞腺腫の特殊型に分類され(甲状腺濾胞癌には含まれない)、「組織学的に強い構造異型、細胞異型を示すが、被膜浸潤及び脈管侵襲を認めない」腫瘍とされます。

甲状腺濾胞癌は細胞異型に乏しく、良性濾胞腺腫と細胞診で鑑別できないのに被膜浸潤及び脈管侵襲を認めます。対照的に、甲状腺異型腺腫は細胞診で悪性(甲状腺低分化癌の疑い)と診断されても、最終的に手術標本で被膜浸潤及び脈管侵襲を認めず、良性の甲状腺異型腺腫と診断されます。

組織診(コア生検)でも甲状腺濾胞癌は構造異型に乏しく、採取した組織に運よく被膜浸潤及び脈管侵襲が見つかれば診断が付きます。甲状腺異型腺腫は構造異型が強いけれども、被膜浸潤及び脈管侵襲は見当たりません。

結局、手術標本でも被膜浸潤や脈管侵襲を証明できず、肺・骨への遠隔転移もありません。

筆者の考えですが、「甲状腺異型腺腫甲状腺低分化癌濾胞癌型が被膜浸潤、脈管侵襲、遠隔転移をおこす前の状態」を見ているだけ。また、筆者と同意見の論文もあり、甲状腺異型腺腫は癌抑制遺伝子のp53遺伝子変異を持っており、前がん病変であるとされます。(Hum Pathol. 2003 Jul;34(7):666-9)(Indian J Pathol Microbiol. 2013 Oct-Dec;56(4):399-401.)

甲状腺異型腺腫 組織

甲状腺異型腺腫 組織

甲状腺異型腺腫 p53染色

甲状腺異型腺腫 p53染色

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

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長崎甲状腺クリニック(大阪)


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