線維筋痛症・慢性疲労症候群と甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科(内分泌骨リウマチ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) 糖尿病編 をクリックください。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックにつき、線維筋痛症・慢性疲労症候群の診療を行っておりません。
Summary
線維筋痛症はストレス関連疾患なので血液検査に異常なし[炎症反応なし、抗核抗体(ANA)陰性]。甲状腺ホルモンのアンバランス(甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症)、自己免疫甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)の炎症性サイトカインが原因との説あり。特に抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)との相関が強いとされる。線維筋痛症→甲状腺異常→膠原病の順に発症し重症化するとされる。慢性疲労症候群では低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス)が多く甲状腺機能低下症/橋本病などと鑑別要で、線維筋痛症やバセドウ病・橋本病を発症しやすい。
Keywords
甲状腺,TPO抗体,ストレス,甲状腺機能低下症,低T3症候群,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,線維筋痛症,慢性疲労症候群,橋本病
線維筋痛症とは、炎症反応なし・抗核抗体(ANA)陰性など検査異常がないのに、全身または1部分に激しい痛みが生じる病態。痛みの部位が移動し、天候により痛みの強さが変化します。
筋痛症と言うものの、関節痛が主体で、多数の関節と筋肉に圧痛を認めます。しかし、関節の腫脹・変形は無し。(MPO-ANCA関連血管炎と鑑別要)
線維筋痛症は、ストレスが誘因で発症するストレス関連疾患です。過度のストレスにより、痛みを緩和する神経機能が低下する機序が考えられています。
線維筋痛症は、
- 微熱
- 睡眠障害・抑うつ;ストレスがさらに線維筋痛症を増悪
- 慢性疲労症候群
- うつ、不眠、過敏性腸症候群(IBS)、過活動性膀胱、逆流性食道炎など
- ドライアイ[橋本病(慢性甲状腺炎)合併シェーグレン症候群(ドライアイ,口内乾燥) の様]
- 記憶障害、集中力欠如
- むずむず脚症候群(レストレスレッグ症候群);不眠・ストレスがさらに線維筋痛症を増悪
などの合併も多いです。
線維筋痛症はストレス関連疾患なので、血液検査に異常が出ません[炎症反応なし、抗核抗体(ANA)陰性]。
最近、線維筋痛症の原因は、
- 甲状腺ホルモンのアンバランス(甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症)
- 自己免疫甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)における炎症性サイトカイン
との説も増えています(Clin Rheumatol. 2014 Jul;33(7):885-91.)。
橋本病(慢性甲状腺炎)の30~60%に線維筋痛症を認めるとの報告がありますが、いくらなんでもそこまで多くありません。特に抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)との相関が強いとされます(Exp Clin Endocrinol Diabetes. 2012 Jul;120(7):401-4.)[Clin Exp Rheumatol. 2022 Jun;40(6):1210-1220.]。
早石病院の報告では、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)陽性が28%、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性が18%とされます(第64回 日本甲状腺学会 35-3 線維筋痛症と甲状腺疾患の関連)
また、線維筋痛症→甲状腺異常→膠原病の順に発症し重症化するとの説があります。
抗てんかん薬ガバペンチンと同系の神経因性疼痛治療薬プレガバリン(リリカカプセル®)は、神経障害性疼痛や線維筋痛症に保険適応があります。

慢性疲労症候群の原因は不明な点が多いですが、神経質・几帳面な人に多く、
- 抗甲状腺薬メルカゾールなどで薬剤性過敏症症候群をおこすヘルペスウイルス6(HHV6)
- 脳内セロトニン合成増加(甲状腺機能低下症では減少)
など免疫系、神経系、内分泌系の異常が考えられます。
慢性疲労症候群では
- 視床下部下垂体副腎軸(視床下部-下垂体-副腎のホルモン調節経路)に異常を来し、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の日内変動が乱れる(Turk J Med Sci. 2017 Aug 23;47(4):1097-1103.)
- 血漿ノルアドレナリン・アドレナリン、血漿FT4が有意に高く、尿コルチゾール/クレアチニン比の有意に低い(J Transl Med. 2016 May 5;14(1):121.)
とされます。
慢性疲労症候群から線維筋痛症や自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)を起こしやすいとされます(Front Immunol. 2018 Feb 15;9:229.)。
慢性疲労症候群では全身状態が悪くなるため、低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス)のことが多いです(Front Endocrinol (Lausanne). 2018 Mar 20;9:97.)
慢性疲労症候群には漢方薬・ビタミンB12・大量ビタミンC、抗うつ剤や精神安定剤が効く場合もあります。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
も御覧ください
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く。