DWIBS(ドゥイブス)、拡散強調MRIと甲状腺がん,肺転移,骨転移,脳転移、癌スクリーニング[橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
長崎甲状腺クリニック(大阪)では甲状腺癌手術後の経過観察の受け入れを停止しております(増えすぎた)。
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、提携先の東住吉森本病院にDWIBS(ドゥイブス)を依頼しております。
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学付属病院 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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甲状腺癌の骨転移 DWIBS(ドゥイブス)[J Med Imaging Radiat Oncol. 2013 Jun;57(3):297-305.]
DWIBS(ドゥイブス)、拡散強調MRIと甲状腺がん,肺転移,骨転移,脳転移、癌スクリーニング(本ページ)
Summary
diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression (DWIBS:ドゥイブス) 法は拡散強調MRIを全身で撮影する方法。人間ドックの癌スクリーニングに有用。甲状腺がんはDWIBS(ドゥイブス)が適した癌とされるが甲状腺超音波(エコー)検査と比べれば遥かに劣る。肺がんの診断には不向きで甲状腺癌の肺転移検索に使えず致命的。甲状腺癌の骨転移にはかなり有用。分化型甲状腺癌(乳頭癌・濾胞癌患者の骨転移検出精度は94%でFDG-PET/CTとほぼ同じ。甲状腺がんの脳転移検索には脳MRIの方が有用。稀な転移にも有用。
Keywords
diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression,DWIBS,ドゥイブス,拡散強調MRI,癌スクリーニング,甲状腺がん,甲状腺癌,肺転移,骨転移,脳転移
diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression (DWIBS:ドゥイブス) 法は、拡散強調MRIを全身で撮影する方法です。悪性腫瘍(がん)は細胞密度が高く(細胞が詰まっているため細胞間距離が狭い)、細胞間の水の動きが少ないのに着目した方法です。
FDG-PET/CTと比べて、
- 放射線被曝は無い
- 注射は不要。当然、注射後1時間の安静・検査後に放射能が下がるまで待機も不要
- 30~40分の短時間で済む(FDG-PET/CTは注射を含め約3時間)
- 糖尿病・腎不全でも検査に支障なし
- 既存の3.0テスラMRIを使用するため安くて済む
など、利点ばかりが取り上げられますが、所詮MRIである点を忘れてはいけません。DWIBS(ドゥイブス)はMRIの横断画像(スライス画像)を縦に繋ぎ合わせたものなので、スライス厚(スライス間隔)が大きければ小さい病変は写りません。例えば、1cmスライスで行った場合、1cm以下の病変はスライス間隔内に収って写らない可能性があります。30~40分の短時間で全身をMRI撮影するなら数ミリスライス(thinスライス)で行うのは無理があります(しかし、広く浅くの癌スクリーニングには使えます)。(甲状腺にCT、MRIは有用でない)
DWIBS(ドゥイブス)が適した癌は
- 頚部:
甲状腺がん[ただし、甲状腺超音波(エコー)検査と比べれば遥かに劣ります]
咽頭がん(喉頭ファイバースコープ、CT/MRIと比べれば遥かに劣ります)
頭頚部癌[頸部超音波(エコー)検査、喉頭ファイバースコープ、CT/MRIと比べれば遥かに劣ります][Tomography. 2022 Oct 9;8(5):2522-2532.]
- 胸部:
食道がん(胃カメラと比べれば遥かに劣ります)
乳がん[マンモグラフィー、乳腺超音波(エコー)検査と比べれば遥かに劣ります]
- 腹部:
肝臓がん・胆のうがん[腹部超音波(エコー)検査、造影CT・MRIと比べれば遥かに劣ります]
胆管がん[超音波内視鏡検査、造影CT・MRIと比べれば遥かに劣ります]
大腸がん(大腸ファイバースコープ、コロネルCT検査と比べれば遥かに劣ります)
子宮がん、卵巣がん[子宮がん検診、超音波(エコー)検査、CT・MRIと比べれば遥かに劣ります]
尿路系がん(腎臓・尿管・膀胱・前立腺)[前立腺PSA、超音波(エコー)検査、CT・MRIと比べれば遥かに劣ります] - その他:悪性リンパ腫(まあ、どこにできるか分からないので丁度いいかも)
要するに、個別の癌を調べるにはDWIBS(ドゥイブス)より遥かに高精度の検査が存在する。DWIBS(ドゥイブス)が万能なら他の癌検診はすべて不要になってしまいます。現実にそんなことは起きていないが、いちいち全部調べてられないケース、例えば
- 人間ドック(広く浅く)の癌スクリーニング
- 不明熱が続き、炎症の位置・原因が特定できない
- CRP陽性が続き、炎症の位置・原因が特定できない
などで有用です。
致命的なのは、胃がん・肺がんの診断には不向きなこと(甲状腺癌において最も多い、最も重要な遠隔転移である肺転移 検索に使えないのは致命的)。(東海大学工学部「MRIを活用した新たながん診断法を開発」医用生体工学科・高原太郎教授)[名古屋市医師会健診センター DWIBSドック(全身がん検査]
※ただし、次項のごとく、肺がん切除後の転移巣の検出には有用[Thorac Cancer. 2021 Mar;12(5):676-684.][Eur Radiol. 2012 Dec;22(12):2859-67.]。(要するに、肺がんの原発巣を見つけるには使えない)
肺癌、乳癌、前立腺がんでは、遠隔転移の検索、術後抗がん剤治療の効果判定などに応用が進んでいます。 甲状腺癌の肺転移 以外の転移臓器検索、特に骨転移 にはかなり有用です。
DWIBS法による分化型甲状腺癌(甲状腺乳頭癌・濾胞癌:DTC)患者の骨転移検出精度は94%で、FDG-PET/CTと同等でした[Supplemental value of diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression (DWIBS) technique to whole-body magnetic resonance imaging in detection of bone metastases from thyroid cancer. J Med Imaging Radiat Oncol. 2013 Jun;57(3):297-305.]。
FDG-PET/CTでは検出できなかった脊椎転移を見つけた報告もあります(第65回 日本甲状腺学会 P16-1 甲状腺がん術後再発診断における全身MRI検査(DWIBS法)の有用性)。拡散強調画像では、脂肪抑制により動的細胞が検出できるためです。
甲状腺がんの脳転移にも有用かもしれませんが、脳MRIの方が遥かに有用。
その他、普通ではおこらないような稀な転移
- 甲状腺乳頭癌の下咽頭転移
- 甲状腺様低位鼻咽頭乳頭腺癌
- 甲状腺乳頭癌の上顎洞転移
- 甲状腺濾胞癌、濾胞型甲状腺乳頭癌の孤立性肝転移
- 甲状腺髄様癌の肝臓転移
- 甲状腺乳頭癌の膵臓転移
- 甲状腺癌の腎臓転移
- 甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌の膀胱転移
にも有用かもしれません。
結論として、DWIBS(ドゥイブス)は
- 人間ドックの癌スクリーニングには有用
- 甲状腺がんの発見、甲状腺がんの頸部局所再発の診断においては、甲状腺超音波(エコー)検査の足元にも及ばない
- 甲状腺癌の肺転移 検索には使えない
- 甲状腺癌の骨転移 検索にはかなり有用
- 甲状腺がんの脳転移 検索には脳MRIの方が有用
- 稀な臓器転移には有用かもしれない
甲状腺癌の骨転移 DWIBS[J Med Imaging Radiat Oncol. 2013 Jun;57(3):297-305.]
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