22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)と甲状腺,先天性甲状腺機能低下症(クレチン症),副甲状腺[橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌病態内科学教室で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)の診療を行っておりません。
Summary
22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)は22番染色体長腕の部分欠損で、欠損部位により臨床症状は多様。第三・第四鰓弓に由来する副甲状腺・胸腺・大動脈弓等心血管形成異常が主体。副甲状腺機能低下症(低カルシウム血症)、免疫不全、免疫異常により自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病、無痛性甲状腺炎)、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)・甲状腺形成不全、先天性心疾患(ファロー四徴症、心室中隔欠損症)、鼻根部平坦・鼻尖丸い、小下顎症、口蓋裂・軟口蓋閉鎖不全、低身長、精神発達遅延・精神神経障害、大脳基底核に石灰化(けいれん)。
Keywords
22q11.2欠失症候群,ディジョージ症候群,胸腺,甲状腺機能低下症,副甲状腺機能低下症,低カルシウム血症,免疫不全,甲状腺,バセドウ病,橋本病
22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)は、出生3000-6000人に1人と疾患頻度は高いのに、内分泌臨床をしていても遭遇する事がほとんどない疾患です。その理由は、小児期に心奇形を契機として診断され、小児循環器科、小児免疫科、小児内分泌内科でフォローされる事が多いからです。 また、小児副甲状腺機能低下症の60%を占め、小児内分泌内科で治療されています。
22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)は、22番染色体長腕の部分欠損で、欠損部位により臨床症状は多様です。第三・第四鰓弓に由来する副甲状腺・胸腺無形成症、大動脈弓等心血管形成異常(心室中隔欠損症など)が主体で、
- 副甲状腺機能低下症(低カルシウム血症)
- 免疫不全
軽度で、風邪を引きやすい程度が多い。
免疫異常により、自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病、無痛性甲状腺炎)の発生頻度が多い。(Cytogenet Genome Res 2009;124:113-120.) - 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)[J Pediatr Endocrinol Metab. 1998 Mar-Apr;11(2):273-6.];6.0%に甲状腺形成不全[Clin Endocrinol (Oxf). 2010 Jun;72(6):839-44.]
- 橋本病(慢性甲状腺炎)、甲状腺がん[BMC Endocr Disord. 2022 Nov 12;22(1):278.]
- 低ゴナドトロピン性遅発性性腺機能低下症[BMC Endocr Disord. 2022 Nov 12;22(1):278.]
- 2型糖尿病と肥満[EClinicalMedicine. 2020 Sep 10:26:100528.][Genet Med. 2017 Feb;19(2):204-208.]
- 先天性心疾患(80%);ファロー四徴症、肺動脈弁欠損、肺動脈閉鎖、心室中隔欠損症、大動脈弓離断など
- まれながら気管食道瘻、気管輪が少ない短気管、異常な甲状軟骨、喉頭軟化症、気管軟化症、気管支軟化症[Am J Otolaryngol. 2000 Sep-Oct;21(5):326-30.]
- 口蓋/咽頭形成障害;咽頭形成術の影響で、成人期に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を発症[Sleep Med. 2023 Apr;104:49-55.]
- 特徴的顔貌(鼻根部は平坦で鼻尖が丸い、小下顎症)、口蓋裂・軟口蓋閉鎖不全、低身長
- 精神発達遅延・精神神経障害
- 大脳基底核に石灰化(低カルシウム血症:偽性副甲状腺機能低下症 の様);けいれん
を認めます。
自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病)に副甲状腺機能低下症(低カルシウム血症)を合併すれば、22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)を疑いましょう!
典型的症状に乏しい22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)は、成人後に診断される場合があります。骨折でもしない限り、普通、成人になるまで血清カルシウムを調べることもないし、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)でない限り新生児マススクリーニングにも掛かりません。
- 香川大学の報告は、34歳で見つかった男性の22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)患者。(第57回 日本甲状腺学会 P1-033 22q11.2 欠失症候群診断時、副甲状腺機能低下症とバセドウ病を認めた症例)
- 横浜労災病院の報告は、61歳男性で小児期に精神発達遅滞、言語障害、難聴など先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)を疑う症状があるも、甲状腺・副甲状腺疾患が疑われたかどうか不明。おそらく、問題になるような先天性心疾患・免疫不全は無かったのでしょう。
50歳時、7cm大の腺腫様甲状腺腫に対し、甲状腺右葉切除術を施行。術前に低カルシウム血症(血清Ca 7.6 mg/dL)が見つかるも、副甲状腺機能低下症とは診断されず?、ビタミンD製剤投与のみ。
60歳時に横浜労災病院で、副甲状腺機能低下症、精神症状、特徴的顔貌より22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)が疑われ、染色体検査(FISH法)で確定したそうです。
(第60回 日本甲状腺学会P1-10-2 成人期に診断に至った22q11.2欠失症候群の一例)
前述の横浜労災病院が、日本国内で成人期に診断された22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)30数例の統計を取っています。
診断に至った契機は、
- 意識障害やけいれん発作による救急搬送(25%);おそらく低カルシウム血症によるものでしょう
- 無症候性副甲状腺機能低下症・心奇形の既往など、各種症候の組み合わせから疑われた(25%)
- 幻覚妄想などの精神症状で精神科受診(22%)
特徴は、
- 精神発達遅滞とは別に、38%の症例に統合失調症や精神疾患を合併
- 心奇形を有さない症例は多く、免疫不全を合併した症例も皆無
22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)であっても合併症が軽微だと、成人期に初めて症状が顕在化するようです。(第60回 日本甲状腺学会P1-10-2 成人期に診断に至った22q11.2欠失症候群の一例)
海外では、
- (タイ)成人期に副甲状腺機能低下症・特徴的顔貌・軽度の知的障害から22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)を診断されたケース(タイ)[Case Rep Endocrinol. 2013;2013:802793.]
- (メキシコ)成人期に副甲状腺機能低下症・軽症心房中隔欠損症(ASD)から22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)を診断されたケース[Cureus. 2023 Dec 11;15(12):e50367.]
が報告されており、低カルシウム血症・副甲状腺機能低下症が診断の契機になるようです。
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- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区も近く。