甲状腺と糖尿病性感覚神経障害,糖尿病性筋萎縮症,糖尿病性単神経障害,糖尿病性疼痛性神経障害,糖尿病性舞踏病[橋本病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックに特化するため、糖尿病内科を廃止しました。現在、糖尿病性神経障害の診療を行っておりません。
糖尿病:専門の検査/治療[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー 長崎甲状腺クリニック大阪]
甲状腺専門・内分泌代謝・動脈硬化の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 大学院医学研究科 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
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[Nat Rev Dis Primers. 2019 Jun 13;5(1):42.より改変]
Summary
糖尿病性筋萎縮症は甲状腺中毒性ミオパチー(甲状腺機能亢進症/バセドウ病)・甲状腺機能低下性ミオパチー(甲状腺機能低下症)と鑑別要。糖尿病性単神経障害の糖尿病性外眼筋麻痺はバセドウ病眼症/甲状腺眼症と鑑別要。糖尿病性舞踏病は甲状腺機能亢進症/バセドウ病の舞踏病と鑑別。有痛性糖尿病性神経障害に使用する①うつ薬デュロキセチン(サインバルタ®)は高血圧、甲状腺機能亢進症/バセドウ病増悪②プレガバリン(リリカカプセル®)・ミロガバリン(タリージェ®)の副作用は、めまい、ふらつき、傾眠、低血糖③三環系抗うつ薬も甲状腺機能亢進症/バセドウ病を悪化。
Keywords
甲状腺,糖尿病性単神経障害,バセドウ病,糖尿病性神経障害,甲状腺機能亢進症,糖尿病性筋萎縮症,デュロキセチン,糖尿病,タリージェ,プレガバリン
糖尿病性神経障害は、糖尿病の三大合併症の中で、最も多く、最も早く起こります。持続する高血糖そのものと、栄養血管の障害による虚血が原因。
糖尿病性感覚神経障害(糖尿病性多発神経障害)の代表的症状は、両側手足の先におきる左右対称性のシビレ・痛み、あるいは感覚消失です。夜も眠れないほどのシビレ・痛みになる事もあります。
また、感覚が低下するため、痛みを感じず、足に傷や焼けどを負っても気が付かない場合(糖尿病足と閉塞性動脈硬化症・壊疽)や無痛性心筋梗塞の場合もあります。
潜在性甲状腺機能低下症では糖尿病性感覚神経障害(糖尿病性多発神経障害)の重症度が増し、血清TSHレベルは糖尿病性感覚神経障害(糖尿病性多発神経障害)の危険因子とされます[J Family Med Prim Care. 2022 Apr;11(4):1361-1368.][Diabetes Res Clin Pract. 2016 May;115:122-9.]。
血清遊離トリヨードサイロニン(FT3)レベルは、糖尿病における神経伝導と関連していて、FT3の低下は糖尿病性末梢神経障害における潜在的リスクの可能性[Exp Clin Endocrinol Diabetes. 2018 Sep;126(8):493-504.]。
有痛性糖尿病性神経障害、三叉神経痛にプレガバリン(リリカカプセル®)・ミロガバリン(タリージェ®)が使用されます。
糖尿病性神経障害治療薬メキシチール®(メキシレチン)では急性好酸球性肺炎をおこした報告があります。薬物アレルギー性肺炎で、末梢血好酸球が30%以上、気管支喘息様のせきや呼吸困難、ゼーゼーした喘鳴を認め、喘息の吸入薬は無効です。
傍腫瘍性感覚性ニューロパチー
傍腫瘍性感覚性ニューロパチー(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)は小細胞肺癌に伴うことが多く、ギラン・バレー症候群と同様に血中自己抗体(抗ガングリオシド抗体)が陽性になることがあります。糖尿病性感覚神経障害と鑑別要。
高齢者に多く、おしり・太ももの筋肉の疼痛、筋力低下、筋萎縮をおこす糖尿病性末梢神経障害の一つです。遠位筋優位の筋萎縮性側索硬化症(ALS)に似ていますが、糖尿病性筋萎縮症は近位型で痛みがあり、血糖コントロールで改善します。甲状腺中毒性ミオパチー(甲状腺機能亢進症/バセドウ病)・甲状腺機能低下性ミオパチー(甲状腺機能低下症)との鑑別が必要。
糖尿病性単神経障害は、脳神経、四肢・体幹神経の単発性神経障害。動脈硬化による神経栄養血管の血流障害が原因で、血糖コントロール状態、糖尿病罹病期間とは必ずしも相関しない。糖尿病性単神経障害は、自然軽快することが多い.
糖尿病性外眼筋麻痺
糖尿病性外眼筋麻痺は糖尿病の1%に合併、動脈硬化性血流障害で高齢者におこりやすいとされます。半数で発症前から眼窩内や眼周囲の痛みが先行。動眼神経麻痺が最も多く、眼球運動障害・眼瞼下垂をきたすが散瞳を生じないのが特徴(神経辺縁部は虚血が軽い)。次いで外転神経麻痺。滑車神経麻痺では頭部を健側に傾けると複視が改善します。3カ月で自然回復します。バセドウ病眼症/甲状腺眼症との鑑別要。
うつ薬デュロキセチン(商品名サインバルタ)は、セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬で、糖尿病性神経障害に伴う疼痛に保険適応があります。日本ペインクリニック学会のガイドラインでも神経障害性疼痛の第一推奨薬の一つです。
めまい、ふらつき、傾眠(眠い)などの副作用で、プレガバリン(リリカカプセル®)・ミロガバリン(タリージェ®)が使用できない時に有用。
しかし、高血圧、心疾患のある患者、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の患者には、心拍数増加,血圧上昇,高血圧クリーゼをおこすことがあり、慎重投与になっています。[抗うつ薬デュロキセチン(商品名サインバルタ)は、甲状腺機能亢進症/バセドウ病には要注意]
プレガバリン(リリカカプセル®)・ミロガバリン(タリージェ®)は電位依存性カルシウムチャネルのα2δリガンドで、神経細胞内へのカルシウム流入をブロックし、グルタミン酸など神経伝達物質の放出を妨げます。
プレガバリン(リリカカプセル®)も有痛性糖尿病性神経障害、三叉神経痛、線維筋痛症に適応があります。日本ペインクリニック学会のガイドラインでも神経障害性疼痛の第一推奨薬の一つです。ミロガバリン(タリージェ®)は、末梢性神経障害性疼痛のみ。
副作用として
- めまい、ふらつき、傾眠(眠い)、意識消失で自動車事故、転倒し骨折した報告があります。糖尿病性自律神経障害による起立性低血圧、甲状腺機能低下症/橋本病、甲状腺機能亢進症/バセドウ病でもめまいおこし得る(めまい・ふらつきと甲状腺)ため注意が必要。
- 同時に、低血糖をおこす可能性もあり、 低血糖をおこしやすい糖尿病、甲状腺機能低下症/橋本病、甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも低血糖おこし得る(甲状腺でも低血糖)ため注意が必要。
ロボット支援内視鏡手術で甲状腺摘出を受けた患者において、プレガバリンの周術期投与は術後早期疼痛の軽減に有効であったが、慢性疼痛は軽減しなかった[Surg Endosc. 2010 Nov;24(11):2776-81.]。
時代遅れも甚だしい三環系抗うつ薬、アミトリプチリン(トリプタノール®)、ノルトリプチリン(ノリトレン®)、イミプラミン(トフラニール®)は、日本ペインクリニック学会のガイドラインでも神経障害性疼痛の第一推奨薬になっているから驚きです。
疼痛性神経障害に対して、他国では最も一般的に使用され有効率も高いですが、抗コリン作用などの副作用のため日本では廃れてしまった薬です。三環系抗うつ薬は副交感神経をブロックし、相対的に交感神経を優位にするため、甲状腺ホルモン作用の増強から甲状腺機能亢進症/バセドウ病を悪化させます。また、長期間の活動性ある甲状腺眼症(バセドウ眼症)に使用すると緑内障発作の危険があります。(Ophthalmology. 1997 Jun;104(6):914-7.)
その他
- 不整脈治療薬メキシレチン(メキシチール®)は海外では無効とされ、国内でも慢性障害性疼痛に無効とされます。
- 抗うつ薬フルボキサミン(商品名. デプロメール、ルボックス)は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)ですが、
①メラトニン受容体作動薬―ロゼレム®(ラメルテオン)との併用禁忌
②甲状腺機能亢進症/バセドウ病性精神障害に使用すれば、脳内セロトニン濃度が上昇しセロトニン症候群 をおこす危険があります。
③脳下垂体のTSH分泌能低下[Encephale. 1997 Jan-Feb;23(1):48-55.]
④SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)
⑤高プロラクチン血症
などの副作用があり、三環系抗うつ薬より効果は劣る
- ミルナシプラン(トレドミン®)は抗うつ薬デュロキセチン(サインバルタ®)と同じくセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。神経障害性疼痛に保険適応がないにも関わらず、日本ペインクリニック学会のガイドラインでは第一推奨薬無効時の選択肢の一つです。セロトニン症候群 、SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)をおこす危険があります。
糖尿病性舞踏病は血糖コントロール不良の高齢者で突然発症する舞踏運動/バリズムです。
糖尿病性脳神経障害の一つですが機序不明です。大脳基底核の糖代謝障害、血流障害(虚血)・点状出血などの説があります。
MRIでは舞踏様不随意運動の反対側の被殻・大脳基底核が、MRI、T1WI画像で高信号になります。
糖尿病性舞踏病は、血糖コントロールにともない改善します。
舞踏病は甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも発症する事があります。(甲状腺機能亢進症/バセドウ病のアテトーゼ不随意運動・舞踏病様の不随意運動・バリズム)
甲状腺機能亢進症/バセドウ病に、血糖コントロール不良の糖尿病を伴っている場合、どちらが原因の舞踏様不随意運動か分かりません。血糖コントロールが改善しないのに、甲状腺ホルモンの改善だけで舞踏様不随意運動が改善すれば、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が原因だった事になります(逆も然り)。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病、糖尿病以外にも
- 副甲状腺機能低下症
- 経口避妊薬の使用
- 妊娠
でも舞踏病が起こります。
視神経脊髄炎(NMO)/視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、抗アクアポリン4(AQP-4)抗体により神経線維の髄鞘が壊れる脱髄疾患です。膵ベータ細胞を自己免疫で破壊する1型糖尿病との合併は健康人より多いとされます。神経症状の重複が紛らわしくなります。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区も近く。