甲状腺の病気にCT、MRIは有用でない[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科学で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会集会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
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Summary
CT、MRIは甲状腺の画像診断に有用でない。甲状腺の質的診断(良悪性、のう胞・腫瘍の鑑別)にCT、MRIを用いてはならない。甲状腺超音波(エコー)検査は第一選択かつ最終診断。CT、MRIは①5-10mm以内の病変が写らない②甲状腺腫瘍と周囲組織と同じCT値・MRI信号強度なら境界線が写らない③のう胞と腫瘍の鑑別難④血管を見る造影剤使用は1回だけ。水溶性ヨード造影剤で影響⑤放射線被曝。唯一CT、MRIが優れている点は①縦隔内、広範囲な石灰化下など超音波が届かない死角の評価②甲状腺癌の被膜浸潤・周囲組織/臓器浸潤の評価③甲状腺癌の遠隔転移(肺・骨・脳など)。
Keywords
CT,MRI,甲状腺,画像診断,超音波,エコー,検査,甲状腺腫瘍,放射線被曝,甲状腺癌
甲状腺専門医でなくとも、甲状腺の診療を行う医師・看護師・臨床検査技師あるいは放射線科専門医の常識として、「CT、MRIは甲状腺の画像診断に有用でない」。特に、「甲状腺内部の状態・腫瘍の有無の評価、質的診断[良悪性の鑑別、のう胞(嚢胞)と腫瘍の鑑別]にCT、MRIを用いてはならない。
CT、MRIでは甲状腺腫瘍に対する特異的な所見に乏しく、「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2018」では「甲状腺結節の鑑別診断に、CT、MRI、FDG-PET検査は行わないように推奨」されています。また、日本医学放射線学会による「画像診断ガイドライン 2021年版」では、「甲状腺腫瘤に対するCT、MRIは、腺外へ浸潤する病変の広がり診断や、気管・食道・血管などの周囲臓器診断、リンパ節転移の有無を評価するために行う」と書かれています。
まともな放射線科医は必ずCT、MRI所見に「CT、MRIで甲状腺の質的診断はできません。必ず超音波検査で確認ください」とのコメントを記載します。
※ただし、CT、MRI は甲状腺腫瘍自体の診断に有用でないものの、これらの高精細・多方向再構成画像は甲状腺腫瘤の周囲浸潤の評価・リンパ節転移・遠隔転移の評価には有用です。
甲状腺超音波(エコー)検査は、甲状腺における画像診断の第一選択かつ最終診断となります。しかし、甲状腺超音波(エコー)診断には熟練の技術を用するため、できない医師がほとんどです。そのため総合病院では、臨床検査技師に甲状腺超音波(エコー)検査を丸投げしますが、最終診断を医師でない者に丸投げすると言う、ある意味、非常に危険な行為です(しかし、それが現実。なぜか、検査レポートの診断医は、その場にいないはずの依頼医の名前になっている事が多い)。
CT、MRIは、
- 精密でも5mm、通常10mmスライスで撮影するため、解像度が悪く、5-10mm以内の病変が写らない確率が高い[甲状腺超音波(エコー)検査は、3mm大(条件次第では2mm大)の甲状腺癌でも見つかります。また、甲状腺乳頭癌において最大の特徴である微細な砂粒状石灰化(psammoma body)は5mm未満のため、CT・MRIでは写りません。]
- 甲状腺腫瘍でも、周囲の甲状腺組織と同じCT値・MRI信号強度の場合、腫瘍の境界線はCT、MRI画像に写らない甲状腺超音波(エコー)検査でも、同一のエコー輝度になりますが、わずか1mmの境界線でもあれば検出可能。
- 甲状腺組織の不均一さと甲状腺腫瘍を鑑別できない
- 甲状腺のう胞(甲状腺嚢胞)は粘稠な液体なので、腫瘍組織とCT値・MRI信号強度がほぼ同じになり、甲状腺腫瘍と鑑別不可能
- 甲状腺超音波(エコー)検査ではドプラーモードを用いて、甲状腺内血流・甲状腺腫瘍内血流が、簡単に反復してわかる。しかし、CT、MRIではヨード造影剤使用して1回だけ、甲状腺腫瘍あるいは甲状腺の特定部分が造影されるかのみ診断できる。当然、甲状腺内の血管径は5mm未満ですので、CT、MRIでは写りませんが、甲状腺超音波(エコー)検査では1本1本、個別の血管まで見えます。
さらに、CT、MRIで使用する水溶性ヨード造影剤は、一時的に甲状腺ホルモン合成・分泌を抑制し、その影響は1か月程続きます。甲状腺機能が正常化していない、未治療あるいは治療途中の甲状腺機能亢進症/バセドウ病、無痛性甲状腺炎、機能性結節(甲状腺ホルモン産生腫瘍)で、ヨード造影剤を使用すると甲状腺クリーゼを引き起こす可能性があるので、禁忌とされる
ヨード造影剤は、腎不全の方(ヨード造影剤腎症)、気管支喘息発作を2年以内に起こしている方、ヨードアレルギー(ヨード造影剤アレルギー)のある方、褐色細胞腫を持っている方(褐色細胞腫クリーゼ)には、おこなえない
- CTでは1回の撮影につき1mCiの放射線被曝するため、短期間に何回も行えない。MRIはペースメーカーの方には原則おこなえない(厳格な条件と煩雑な手続でやっと行える。)
CTでは結節に見えるが甲状腺のう胞腺腫(甲状腺嚢胞腺腫 CT画像
CTでは結節に見えるが、実は甲状腺のう胞腺腫(甲状腺嚢胞腺腫の超音波(エコー)画像。のう胞内の粘稠なコロイド様物質(要するにドロドロの液体)がCTでは腫瘍組織の様に見えただけです。甲状腺のう胞腺腫(甲状腺嚢胞腺腫の細胞は壁に沿っての単層配列になります。
唯一CT、MRIが甲状腺超音波(エコー)検査より優れている点は、
甲状腺内の石灰化 or 甲状腺腫瘍?
ケース①
甲状腺内石灰化のCT画像です。被膜が石灰化した腫瘍でなく、完全な石灰化である事が分かります。
甲状腺内の石灰化 or 甲状腺腫瘍か分からない場合、CTやMRIが有用な場合があります(甲状腺内の石灰化 or 甲状腺腫瘍?)。
ケース②
しかし、高性能超音波診断装置なら石灰化の下が見える事も
高性能超音波診断装置なら石灰化の下が見える事もあります。長崎甲状腺クリニック(大阪)に設置されたARIETTA 850 SE(甲状腺特化型) なら写真の通りです。
甲状腺膿瘍は甲状腺超音波(エコー)検査で非特異的な低エコー領域になり、穿刺検体で膿を証明するしかありません。しかし、造影CT検査ではリング状増強がくっきり見え、一目瞭然で甲状腺膿瘍と分かります。(急性化膿性甲状腺炎と甲状腺膿瘍)
小さい病変を見つけるのに役に立たないCT、MRIでも、偶然、はっきり見える甲状腺腫瘍が見つかる事があります(甲状腺偶発腫)。副腎偶発腫と言う言葉は一般的なので、甲状腺偶発腫(thyroid incidentaloma)と言って良いと思います。
胸部CT/脊椎MRI/脳MRI などで偶然見つかる甲状腺腫瘍は悪性が多く、28%とされます(BMJ. 2018 Jun 18;361:k2387.)
エコーでもCTでもSOL(甲状腺結節および甲状腺のう胞)と石灰化の鑑別ができないケースがあります。最終的には穿刺細胞診で細胞あるいはのう胞液(嚢胞液)を採取するしかありません。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。