甲状腺と新型コロナウイルス(COVID-19) 2[甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学医学部附属病院 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
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感染症法における新型コロナウイルス感染症の位置付けは、国内で発生が確認されてから
- 約2週間後;指定感染症
- 約1年後;新型インフルエンザ等感染症
と変遷を続けました。
以降、新型コロナウイルス感染症対策は2類感染症相当でしたが、いよいよ5類感染症に引き下げになります。指定感染症で5類へ移行するのは新型コロナウイルス感染症が初めです[SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ、MERS(中東呼吸器症候群)は2類のまま]。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。新型コロナウイルスの診療、PCR検査を一切行っておりません。
新型コロナワクチンの取り扱いはありません。
Summary
加熱式タバコで新型コロナウイルス感染症リスクが上昇。新薬モルヌピラビル(ラゲブリオ®)は重症化リスクの高い(基礎疾患を有する)軽症患者に適応。甲状腺の病気では甲状腺癌のみ投与対象。新型コロナウイルスは高温多湿の地域でも感染し終息しない。完全防護とされる装備でも新型コロナウイルス感染は防げない。自衛隊の対生物兵器の完全密閉型防護服のみ可能。しかし新型コロナウイルス感染者が巻きちらすのを防ぐのにマスクは有用。子どもが重症化しにくい理由は謎。5類移行後は特に子供で免疫負債からコロナ以外のウイルスが季節を問わず大流行。
Keywords
甲状腺機能低下症,ラゲブリオ,甲状腺,新型コロナウイルス,マスク,免疫負債,バセドウ病,感染,アジア,子ども
甲状腺と新型コロナウイルス(part 1)
加熱式タバコ(アメリカの研究で加熱式タバコ、ニコチン等を含む電子タバコの事です)で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスクが上昇します。新型コロナウイルス(COVID-19)の陽性率は、
- 電子タバコのみの使用者で、非喫煙者の5.05倍(オッズ比)
- 紙タバコ・電子タバコ両方の使用者で、非喫煙者の6.97倍(オッズ比)
(J Adolesc Health. 2020 Aug 1:S1054-139X(20)30399-2.)
電子タバコと言っても、タバコの葉を使用している以上、紙タバコと大同小異に過ぎず、体の正常な免疫力(抵抗力)を低下させ、感染から体を守る気道粘膜バリアを障害します。
加熱式タバコ・電子タバコは紙タバコ同様、甲状腺にも有害です。(加熱式タバコ・電子タバコも「甲状腺に有害」)
新型コロナウイルス抗原検査で、ある程度信用できるのはデンカくらいです。それでも、感度は約50%(半分は見逃す)で、ウイルス量が少ないと陰性に出ます(偽陰性)。新型コロナウイルスはウイルス量が少なくとも発症します。
さらに新型コロナウイルスに感染していないのに陽性に出る偽陽性もあるので混乱に拍車が掛かるだけです。
新型コロナウイルス抗原検査はPCRの代用にはならないと言う事です。とは言え、PCR検査も絶対ではありません(新型コロナウイルスが再度陽性化・PCR検査が陰性化しても変な症状が続く)
新型インフルエンザ治療薬アビガン®(ファビピラビル)
今となっては、新型コロナウイルスには無効との結論が出ましたが、新型インフルエンザ治療薬アビガン®(ファビピラビル)が試験的に投与された時期がありました(国立感染症研究所などに限定されて)。タミフル無効の新型インフルエンザが出現した時に備えて、当時200万人分の備蓄があったとか。
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼを阻害するならば、同じRNAウイルスの新型コロナウイルスに効くかもしれないと言う期待からでした(抗HIV薬は効きませんでしたが)。アビガン®(ファビピラビル)を軽症、無症状の新型コロナウイルス感染者に試験投与した効いたと騒がれましたが、軽症、無症状なので、自前の免疫力で自然治癒したのか、本当に薬が効いたのか比較試験しなければ不明でした。結論では、アビガン®(ファビピラビル)投与してもしなくても有意差なし。また、重症化して肺炎まで起こした患者にも効きませんでした。
さらに、インフルエンザに使用した場合のデータですが、副作用もそれなりにあります。甲状腺の副作用報告は現時点でなく、甲状腺の病気の人に使っていけない理由もありません。
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には「禁忌」(妊活中・妊娠中の甲状腺患者には使えない)
- 精液中へ移行する(投与期間中及び投与終了後7日間まで)
エボラウイルス病(エボラ出血熱)治療薬レムデシビル
新型コロナウイルス肺炎に対する、エボラウイルス病(エボラ出血熱)治療薬レムデシビルの有効率は68%とされ(N Engl J Med. 2020 Apr 10.[Epub ahead of print])、日本で初の特例治療薬に認められました。しかし、世界保健機関(WHO)は「死亡率を改善する効果はほとんどない」という中間報告を発表しました。
モルヌピラビル(ラゲブリオ®)
新型コロナウイルス感染症に新薬モルヌピラビル(ラゲブリオ®)が特例承認されました。新型コロナウイルスのRNA 依存性 RNAポリメラーゼに作用し増殖を阻害します。重症化するリスクの高い(基礎疾患を有する)軽症患者に使用されます(新型コロナウイルスで重症化、死亡しやすい人)。残念ながら、日本感染症学会ガイドラインでは甲状腺の病気を持つ人は含まれていません。ただし、「活動性の癌」は含まれるため、甲状腺癌の人はモルヌピラビル(ラゲブリオ®)の投与対象になります。
インフルエンザウイルスなら気温が上昇すれば、自然と流行は治まりますが、新型コロナウイルスはどうでしょうか?
新型コロナウイルスは、高温多湿の地域でも感染します。 日本の8月の感染状況を見れば一目瞭然、新型コロナウイルスの感染拡大は、気温が上昇しても終息しません。ある意味、温暖化した地球に適合するよう進化したウイルスなのかもしれません。
パンデミックになった以上、ドイツのメルケル首相が言う様に、全人口のほとんど(70-80%)が感染するか、ワクチンで免疫を獲得すれば、終息するはずでした。しかし、ウイルスの変異とブレークスルー(軽症で済むがワクチンを2回接種しても感染する)によって終息は望めない状況です。
人口の数%の高齢者(日本ではワクチンの普及で死亡者は激減)、ワクチンを2回接種しても重症化する可能性がある免疫不全患者(糖尿病、心臓・肝臓・腎臓疾患を持つ人)は、新型コロナウイルス感染が致命的になります(新型コロナウイルスで重症化、死亡しやすい人)。しかし、よく考えてみれば高齢者、免疫不全患者は例え風邪やインフルエンザでも肺炎を起こして重症化するので、新型コロナウイルスに限った事ではありません。
オミクロン株であれ、デルタ株・初期型であれ新型コロナウイルス(COVID-19)感染の予防は言うまでもなく、
- 手洗い(下記)
- 消毒(下記)
- マスク(下記)
- うがい(うがい薬(イソジン/ポピドンヨード)で甲状腺障害)
- ソーシャルディスタンス
- 不要不急の外出制限(新型コロナウイルス感染経路と死亡)
です。
新型コロナウイルス感染の予防は、頻繁な手洗いです。 手に付着したウイルスが目、口、鼻などの粘膜に触れることで発生する感染を防ぎます。
N95以外の気休め的なマスクで明確に新型コロナウイルス感染を予防できるという医学的証拠はありません(と言うか、電子顕微鏡でしか見えないウイルスからしたら、マスクなんで「ざる」やで・・)。
写真は4月26日の産経新聞の一面、ニューヨーク市で新型コロナウイルス感染治療に当たっておられた医師の方です。このような完全防護とされる装備でも、自身が新型コロナウイルスに感染したそうです。ウイルスは1μm未満の大きさです。そう考えれば隙間だらけの防護です。自衛隊の対生物兵器の完全密閉型防護服で無い限り防ぐのは不可能です。
しかし、新型コロナウイルス感染して無症状な人も含めて、感染者がウイルスを巻きちらすのを防ぐのにマスクは有用です。N95マスクでなくても、使い捨ての不織布マスクで十分です。ウレタンマスク、布マスクも、しないより遥かにマシです。
60vol%以上の消毒用エタノールでなければ新型コロナウイルスを防げない
手指消毒に用いる消毒用エタノールの濃度は日本薬局方で76.9-81.4vol%と定められています。消毒用エタノール不足のため、新型コロナウイルス(COVID-19)の特例として、60vol%以上なら可とする厚生労働省通知が出ています。
ただし、甲状腺ホルモン値が正常化していない甲状腺機能低下症の人で、過度なアルコール消毒は、手荒れの原因になります。
オミクロン株への変異で軽症化が進みましたが、以前のデルタ株・初期の新型コロナウイルス(COVID-19)感染では後遺症で苦しむ人が多く発生しました。新型コロナ後遺症はLONG COVIDと命名され、
- 肺、心臓の回復不能な障害;軽症者でも起こったのが恐ろしい
- 集中治療後症候群;集中治療室(ICU)で治療を受けた後、身体の不調、精神症状、認知症
- 新型コロナウイルス感染症状が持続;平均2ヶ月経ってPCRが陰性化しているのに、約90%で急性期の症状が持続(JAMA. 2020 Aug 11;324(6):603-605.)
- ウイルス後疲労症候群;約3-4カ月経ってPCRが陰性化しているのに、約30%で体がだるい、物忘れする(記憶障害)、集中力低下、睡眠障害、脱毛(J Infect. 2020 Aug 25;S0163-4453(20)30562-4.)
などの病態が含まれます。重複する症状が多く、同じ病態を異なる視点から見ているだけかもしれません。
新型コロナウイルス感染から回復しても、再び感染するケースが続々と報告されています。すべての人が再感染するのか、現時点では誰にも分かりません。インフルエンザも1年経てば再感染するので、特に驚くことはないです。初期型→デルタ株→オミクロン株と変異を続け、微妙に抗原性が変化すれば当然でしょう。
初期型の新型コロナウイルス感染で問題だったのは、1回目は軽症でも2回目で重症化する危険性です。1回目で免疫が成立し、2回目に過剰な免疫反応が誘導される「抗体依存性感染増強(ADE)」の可能性があります(デング熱などでは起こります)。
デルタ株・オミクロン株などの変異株は子供でも感染する確率が高くなりましたが、重症化しやすい訳ではありません。子どもが新型コロナウイルス感染で重症化しにくい理由は謎。
- 子どもは、旧型コロナウイルス感冒(風邪)にかかりやすく、新型コロナウイルスに対する交差免疫を持っている可能性
- 子どもの免疫系は活性化されていて、迅速に新型コロナウイルスに対処している可能性
が考えられています。
2.を示唆する論文が出ています。新型コロナウイルス感染した小児患者は、年齢が低い程、インターロイキン-17A(IL-17A)とインターフェロンγ(IFN-γ)の血清濃度が高く、強力な免疫系反応で重症化を防いでいる可能性があります。(Sci Transl Med. 2020 Oct 7;12(564):eabd5487.)
5類移行後にコロナ以外のウイルスが、特に子供の間で季節を問わず大流行しています。夏に流行するはずのヘルパンギーナ、手足口病(エンテロウイルス)、アデノウイルス、秋から初春の感染症であるRSウイルス、冬が当たり前のインフルエンザ、鼻風邪のライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどのウイルスだけでなく、溶連菌感染までもが加わっています。
その原因は、ウイルス側でなく、人間側にあるようです。コロナ禍において3密の回避、ソーシャルディスタンスなど他者との接触を極力避けた結果、日常接触する様々なウイルスに対する免疫を獲得できなかった付け(免疫負債)がまとめて来たのが原因と考えられます。[Br J Hosp Med (Lond). 2022 Sep 2;83(9):1-3.][Infect Dis Now. 2021 Aug;51(5):418-423.]
- エンテロウイルスは亜急性甲状腺炎の原因で、甲状腺機能亢進症/バセドウ病発症の一部に関与している可能性
- アデノウイルスは亜急性甲状腺炎の原因
- RSウイルスは免疫不全患者(糖尿病、甲状腺機能低下症/橋本病)で重症化
- インフルエンザは亜急性甲状腺炎の原因
アデノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、溶連菌などは迅速診断キットがありますが、ヘルパンギーナ、手足口病(エンテロウイルス)にはありません。
アジア圏の人間は既にコロナウイルスにある程度の免疫を持つ(交差免疫説)
日本を含むアジアにおいて、初期型の新型コロナウイルス感染の致死率は1~3%と高かったですが、アメリカ、イタリア、スペイン、フランスでは致死率5%を超えていました。新型コロナウイルス感染の死亡者の約90%は欧米人です。
明らかに地域、あるいは人種により死亡率に差があります。ファクターXと呼ばれるものですが、なぜでしょうか?筆者と同じく大阪市立大学の甲状腺超音波(エコー)に参加している同僚で、公衆衛生の専門家が、興味深い説を提唱しています。
「旧型SARSコロナウイルスはアジアを中心に広がりました。その変異母体となった一般コロナウイルスも生息地はアジアが主体です。一般コロナウイルスは風邪の原因ウイルスとして日本の医者にはお馴染みです。つまり、アジア圏の人間は既に弱毒型のコロナウイルスに感染した事(感冒・カゼと済まされ)があり、ある程度の免疫を持っている(交差免疫)人が多いのではないか?」
と言うものです。ヨーロッパ圏、アメリカなどは一般コロナウイルスに一度も感染した事がなく、防御力が全く無い人が多いのかもしれません。
人種の差ではない
「人種の差(遺伝子の違い)が原因ではないか?」と言う人もいます。しかし、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の統計では、アジア系アメリカ人の新型コロナウイルス感染死亡率は6%で、白人と変わりありません。
日本の玄関で靴を脱ぐ習慣がバリケードになる
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
も御覧ください
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,浪速区,生野区,天王寺区,東大阪市も近く。