ダウン症候群(Down症候群)と甲状腺(甲状腺機能亢進症・バセドウ病,甲状腺機能低下症・橋本病)[長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌病態内科学教室で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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ダウン症候群児(CDC HPより)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。ダウン症候群,ターナー症候群,クラインフェルター症候群の自体の診療を行っておりません。
Summary
ダウン症候群(Down症候群)と甲状腺の病気は合併が多い(10-24%)①甲状腺機能亢進症・バセドウ病;思春期~20歳代で発症、発症年齢早い。男女差が小さい、橋本病の先行が多い、APS3型など他の自己免疫疾患の合併が多い、難治性は少なく寛解しやすい②原発性甲状腺機能低下症/橋本病;全年齢で発症、女性優位でなく、家族性は少ない、バセドウ病に移行しやすい③中枢性甲状腺機能低下症④先天性甲状腺機能低下症;新生児マススクリーニングをすり抜ける。母親の甲状腺機能低下症が原因でダウン症候群(Down症候群)の子供が生まれる医学的な根拠はない。
Keywords
ダウン症候群,甲状腺,甲状腺機能亢進症,甲状腺機能低下症,Down症候群,バセドウ病,橋本病,合併,先天性甲状腺機能低下症,中枢性甲状腺機能低下症
以下、18番染色体トリソミー(エドワーズ症候群),ウィリアムズ症候群,アルカプトン尿症,5p欠損症候群と甲状腺
トリソミーとは、本来、1対2本の染色体が、1本余分に合計3本ある病態です。21番染色体のトリソミーはダウン症候群(Down症候群)と呼ばれます。
ダウン症候群(Down症候群)に伴う甲状腺疾患は、
- 先天性甲状腺機能低下症;新生児マススクリーニングをすり抜ける可能性があるため、生後6か月以内はマメに甲状腺機能をチェック(Horm Res Paediatr 2017;87:170–8.)
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病(思春期~20歳代に多い);
発症年齢が早い
男女差が小さい
橋本病が先行しているケースは多い
APS(多腺性自己免疫症候群)3型など、他の自己免疫疾患の合併が多い
難治性のバセドウ病は少なく、寛解しやすい
(Eur J Endocrinol. 2010 Mar;162(3):591-5.)(Ital J Pediatr. 2015 Nov 11;41:87.)
- 甲状腺機能低下症(全年齢);
①中枢性甲状腺機能低下症
②原発性甲状腺機能低下症/橋本病(Horm Res Paediatr 2017;87:170–8.)
→女性優位でなく、家族性は少ないのが特徴(Hormones (Athens). 2015 Jul-Sep; 14(3):410-6.)
→一般の橋本病患者よりもバセドウ病に移行しやすい(Acta Biomed. 2015 Sep 14; 86(2):137-41.)
と、いずれの場合もあります。(Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2018 Feb;25(1):61-66.)
その他、
- 目がつり上がっていて小さい、耳の位置が低い
- 白内障、斜視・円錐角膜など弱視
- 40%に先天性心疾患[心室中隔欠損症(VSD)]
- 消化管閉鎖(十二指腸閉鎖や鎖肛):先天性心疾患に次いで多い大奇形
- 白血病
- 固形腫瘍は少ない(成長因子[growth factor)の発現が少ない可能性]
などを認めます。
ダウン症候群(Down症候群)の二大死因は先天性心疾患と呼吸器感染症です。出生後に何度か手術が必要になる場合はありますが、日本での平均寿命は50歳を超えています。
ケース①
ケース②
ケース③
心室中隔欠損症(VSD)は、小児先天性心疾患で最多。5mm以下の穴は無症状が多く、 90%が10歳までに自然閉鎖。成人しても手術を必要としない方もいますが、糖尿病などの免疫不全があると感染性心内膜炎 を引きおこす危険があります。逆流性収縮期雑音が特徴的です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)には妊活中、不妊治療中、妊娠中の甲状腺機能低下症女性が多く来院されていますが、時々、勘違いをされている方もおられます。
(X)甲状腺機能低下症の母親からでダウン症候群(Down症候群)の子供が生まれる
(〇)ダウン症候群(Down症候群)の子供は甲状腺機能低下症になる確率が高い
確かに、例え軽い甲状腺機能低下症(潜在性甲状腺機能低下症)であっても、不妊・流早産、妊娠高血圧、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)・子癇前症、骨盤位・前置胎盤、常位胎盤早期剥離、周産期死亡などのリスクが増加します。軽くない甲状腺機能低下症(顕在性甲状腺機能低下症)では、それに加えて妊娠糖尿病のリスクが上がり、無事出産しても児の脳に障害が出たり、知能指数が低くなる危険性が高くなります(橋本病/甲状腺機能低下症妊娠の問題点)。
しかし、母親の甲状腺機能低下症が原因でダウン症候群(Down症候群)の子供が生まれる医学的な根拠はありません。子供がダウン症候群(Down症候群)になる原因として一番有名なのは、高齢妊娠をはじめとする卵子の劣化です。
また、ダウン症候群(Down症候群)の主要な原因の一つに、母体の葉酸代謝異常があり、妊活中の葉酸摂取でダウン症候群(Down症候群)のリスクを減らせる可能性が報告されています(Downs Syndr Res Pract. 2008 Oct;12(2):93-7.)。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。