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子宮頸癌・ヒトパピローマウイルス・ワクチン接種と甲状腺  [橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)

子宮がんと甲状腺

甲状腺専門内分泌代謝長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など)  糖尿病編 をクリックください。

(図 gan-mag.comより)

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。子宮がんの診療を行っておりません。

Summary

子宮頸癌甲状腺転移は非常にまれ。子宮頸がん予防(HPV;ヒトパピローマウイルス)ワクチンのガーダシル、サーバリックスで甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺機能亢進症/バセドウ病の副作用報告あり。複合性局所疼痛症候群(CRPS)症状は痛みだけでなく状腺機能亢進症/バセドウ病のような異常発汗、不随意の筋収縮なども。甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン剤の過量投与による甲状腺中毒症がCRPS発症に関与した報告あり。APS(多腺性自己免疫症候群)1型に尖圭コンジローマ、皮膚粘膜カンジダ症、白斑原発性副甲状腺機能低下症を合併した報告あり。

Keywords

子宮頸癌,ワクチン,ガーダシル,サーバリックス,甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,複合性局所疼痛症候群,CRPS

子宮頸癌の好発年齢は30~60 歳で、30 歳の若い年齢でも発症します(子宮頸がん検診は、20歳から受診可能)[甲状腺癌も若くで発症するため、重複癌はあり得る]。

子宮頸癌の年齢階層別死亡率

子宮頸癌の年齢階層別死亡率を見ると1995年以降に、40歳代と50歳代で増加傾向です。

子宮がん検診(子宮頸癌の細胞診)は、健康増進法に基づく健康増進事業として市町村が実施しています。子宮がん検診は対策型がん検診で、集団全体(日本国民)の死亡率を下げるために行われます(ちなみに個人の死亡率を下げるための任意型がん検診は人間ドックなどです)。有効性が確立された対策型がん検診は、子宮がん検診、乳がん検診(マンモグラフィ)、大腸がん検診(便潜血検査)の3つだけです。

厚生労働省の資料によると、2020年度の子宮頚がん検診(一般的に「子宮がん検診」と呼ばれている)の受診率は15.2%です。しかし、あくまで子宮頚がんだけで子宮内膜がん(子宮体癌)は「子宮がん検診」の対象になりません。

子宮頸癌と甲状腺がんの合併

ポイツ・ジェガーズ症候群(Peutz-Jeghers症候群)は、常染色体性優性遺伝による癌抑制遺伝子LKB1(STK11)の機能喪失型変異により、小腸ポリポーシス(過誤腫ポリープ)、多臓器悪性腫瘍が発生する病気です[ポイツ・ジェガーズ(Peutz-Jeghers)症候群]。甲状腺乳頭癌の肺転移と子宮頸部腺癌を合併したポイツ・ジェガーズ症候群(Peutz-Jeghers症候群)が報告されています。消化器癌は発生しなかった様です。(日臨外会誌 70(9) ,2902―2905,2009)

子宮頸癌の甲状腺転移(転移性甲状腺がん)

子宮頸癌の90%以上は、ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)の性行為感染が主な原因(性行為以外では感染しません)。

ヒトパピローマウイルス(HPV)には100種類以上のタイプがあり、中でも16型、18型が子宮頸癌の発生と強く関連し、約70%を占めます。それ以外の子宮頸癌リスクファクターとしては、喫煙が最も強い。

HPV16型と18型に感染すると、子宮頸がんになる危険性が未感染者に比べて数百倍高くなります。

しかも、感染から発癌までのスピードが速いため、20-40歳の若い世代に子宮頸がんが発生します。

子宮頸癌浸潤

  1. 骨盤壁に達する
  2. 腟壁下1/3 に達する

場合の病期はIII期になり、手術ができず、化学放射線療法の適応になります。

子宮頸癌浸潤が小骨盤を越えて広がる浸潤・転移はIV Bになり、治療による根治は望めないため、緩和目的の放射線単独照射、抗癌化学療法、終末期医療(ターミナルケア)/緩和ケア/ベストサポーティブケア(BSC)の適応となります。

子宮頸癌甲状腺転移は非常にまれです(Acta Medica (Hradec Kralove). 2016;59(3):97-99.)。

子宮頸癌の診断から4年後に甲状腺に転移を認めた報告があります。甲状腺転移だけでなく、肺転移、縦隔リンパ節転移も同時に認めています(Yale J Biol Med. 2006 Dec;79(3-4):165-8.)

下;子宮頸癌甲状腺転移 (左)細胞診標本 HE染色 (右)頚部リンパ節 組織標本 HE染色[Surgical Case Reports volume 7, Article number: 255 (2021) ]

子宮頸癌の甲状腺転移(転移性甲状腺がん)

子宮頸がん予防(HPV;ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種と甲状腺

子宮頸がん予防(HPV;ヒトパピローマウイルス)ワクチンとは

任意接種と思われがちなヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンですが、実は定期予防接種(決められた年齢になれば無料で受けられる予防接種)なのです。副反応が社会問題になった結果、「HPVワクチンの積極的勧奨を差し控える」厚生労働省通知が出され、してもしなくてもよい予防接種との誤解を招きました。現在では、その通知も撤廃されています。

学童期から思春期にかけてヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを接種すれば、HPV16型と18型感染のほとんどを予防できます。性交経験のある人は、すでに感染している可能性があるため、ワクチンの有効率が低下します。

現在、世界の主流になっている子宮頸がん予防HPV;ヒトパピローマウイルス)ワクチンは4価ワクチン(4種類のHPVに有効)のガーダシル®です。

2価ワクチンのサーバリックス®と比べて

  1. 守備範囲が広く[4種類のHPV(ヒトパピローマウイルス)に有効、尖圭コンジローマにも有効、外陰・膣上皮内腫瘍にも有効]
  2. 局所の疼痛・発赤、全身倦怠感などの有害事象はやや少ない
  3. 予防効果の持続期間は短い
子宮頸がん予防(HPV;ヒトパピローマウイルス)ワクチン

さらには、アジア人に多くみられるHPV52/58型を含めた5種類のウイルス様粒子をガーダシル®(4価HPVワクチン)に追加した9価ワクチンのシルガード®️が薬事承認されました。しかし、2022年6月の時点で、公費補助による予防接種の対象になっていません。

9価ワクチンでも子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)すべてをカバーできる訳では無いため、HPVワクチンを接種しても100%子宮頸がんを防ぐことはできません。そのため、例えHPVワクチンを接種していても、20歳以降は子宮頸がん検診を受る必要があります。

2022年1月から4月までの期間における、医療機関からのガーダシル®(4価HPVワクチン)副反応疑い報告頻度は0.0038%でした。

子宮頸がん予防(HPV;ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種と甲状腺

厚生労働省が行ったHPV-010試験では、HPVワクチンとの因果関係を問わず、接種後24ヶ月後までに医療機関を受診した新規発症の自己免疫疾患は、甲状腺機能低下症が最多。サーバリックス®群では553名中5人、ガーダシル®群も553名中5人で同数。この場合、甲状腺機能低下症橋本病(慢性甲状腺炎)と考えて良いでしょう。

バセドウ病はガーダシル®群でのみ1人、甲状腺機能亢進症も1人ですが、普通に考えれば甲状腺機能亢進症/バセドウ病で2人だと思います(本当、官主導のいい加減なところです)

シルガード®️でも、海外における製造販売後の安全性情報に自己免疫性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎もしくは無痛性甲状腺炎と推察されます)の報告があります。

英国ではHPV-16/18 AS04アジュバントワクチン接種後の自己免疫性甲状腺疾患発生率比は3.75倍でした(Hum Vaccin Immunother. 2016 Nov; 12(11):2862-2871.)。‎

デンマークとスウェーデンの女性3,126,790人を対象とした大規模な研究調査でも、ワクチン接種後に橋本病(慢性甲状腺炎)セリアック病局所性エリテマトーデス自己免疫性副腎皮質機能低下症(アジソン病)、レイノー病(膠原病の部分症状)のリスクが高くなるとされます。(J Intern Med. 2018 Feb;283(2):154-165.)

HPVワクチンにより自己免疫性甲状腺疾患(甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺機能亢進症/バセドウ病)が誘導された直接的な証拠はありません。ただ、ウイルス感染が自己免疫性甲状腺疾患を誘導する事象、

  1. 伝染性紅斑(リンゴ病)無痛性甲状腺炎橋本病発症
  2. 突発性発疹のウイルスで橋本病(慢性甲状腺炎)が発症
  3. ヘルペスウイルスの一種、エプスタイン‐バールウイルス (EBV) バセドウ病発症

あるいは亜急性甲状腺炎を発症させるケースが多いため、ウイルス感染と同じ免疫反応を誘導するワクチンで起きても不思議はありません。

ワクチンによる自己免疫の誘導は、autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants(ASIA)と呼ばれます。免疫反応を誘発する目的でワクチンに添加されるアジュバント(Adjuvant、免疫補助剤)が原因です(J Autoimmun. 2011 Feb; 36(1):4-8.)。インフルエンザワクチンB型肝炎ウイルスワクチンでも報告されています(インフルエンザワクチン接種で亜急性甲状腺炎)。

特に、HLA遺伝子のDRB1 *01を有する人に起こり易いとされます(Expert Rev Clin Immunol. 2013 Apr; 9(4):361-73.)。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、ガーダシル®、サーバリックス®ともに報告されています。複合性局所疼痛症候群(CRPSの原因は痛覚過敏とされ、原因となる有害事象(骨折等の外傷や神経損傷)は重症でないのに、不釣り合いな強い痛みが持続的に続く病態です。(MB Orthop. 2012; 25(10): 1-11)。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)の症状は痛みだけでなく多彩で、

  1. 自律神経症状(異常発汗等)(甲状腺機能亢進症/バセドウ病のよう)
  2. 感覚神経症状(痛覚過敏、交感神経依存性疼痛等)(甲状腺機能亢進症/バセドウ病のよう)
  3. 運動神経症状(不随意の筋収縮等)(甲状腺機能亢進症/バセドウ病のよう)
  4. 皮膚の萎縮性変化、関節可動域制限、運動機能低下

甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン剤投与が過量で、甲状腺中毒症から交感神経活動性亢進が起こり複合性局所疼痛症候群(CRPS)の一因となった報告があります。(Semergen. 2013 Nov-Dec;39(8):e75-8.)

子宮頸癌とバセドウ病・橋本病

子宮頸癌の手術方法は、切除範囲により子宮頸部円錐切除術→単純子宮全摘手術→準広汎子宮全摘出術→広汎子宮全摘出術があり、進行期度に応じて選択されます。

子宮のみでなく卵巣を合併切除した場合、女性ホルモン(エストロゲン)黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が低下し、自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病橋本病)が発症・増悪する危険性が増します。

子宮頸部異形成(高度扁平上皮内病変、High grade squamous intraepithelial lesion:HSIL)

前癌病変の子宮頸部異形成(高度扁平上皮内病変:High grade squamous intraepithelial lesion:HSIL)は、子宮頸部表面に中等度異形成(CIN2)または高度異形成・上皮内がん(CIN3)がみられる状態。

子宮頸部異形成(高度扁平上皮内病変、HSIL)は25 歳付近から増加します(子宮頸癌の好発年齢は30~60 歳)。子宮頸がん検診は20歳からなので、早期発見される可能性があります。子宮頸部狙い組織診(パンチバイオプシー)による病理組織診断で確定。

甲状腺疾患(甲状腺機能低下症/橋本病バセドウ病)は最も一般的な子宮頸部異形成(高度扁平%に上皮内病変:HSIL)の併存疾患であり、13.6%に認められます。[Ginekol Pol. 2022 Jan 24.]

甲状腺癌も若くで発症するため、子宮頸部異形成(高度扁平上皮内病変、HSIL)との合併はあり得ます。

子宮頸部異形成(高度扁平上皮内病変、HSIL)コルポスコピィ

子宮頸部異形成(高度扁平上皮内病変、HSIL)コルポスコピィ

子宮頸部異形成(高度扁平上皮内病変、HSIL)子宮頸部擦過細胞診

子宮頸部異形成(高度扁平上皮内病変、HSIL)子宮頸部擦過細胞診

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマは、子宮頸癌の原因であるハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV) とは異なるローリスク型HPV 6 型、11 型による性感染症で、性交後3週~8 か月(平均3 か月)で発症します。

尖圭コンジローマの症状は、痒みを伴う先端が尖ったカリフラワー状の疣贅(イボ)で痛みは無し。リンパ節腫脹も無し。

尖圭コンジローマの治療は、

  1. ベセルナクリーム5%®(イミキモド クリーム);外陰部・会陰部のみに塗布、腟内と子宮腟部には禁忌
  2. 外科切除、冷凍焼灼、電メス焼灼、レーザー蒸散

尖圭コンジローマの予防は、HPV4 価ワクチン4(4種類のHPVに有効)のガーダシル®。

APS(多腺性自己免疫症候群)1型尖圭コンジローマ、皮膚粘膜カンジダ症、白斑、角膜症、原発性副甲状腺機能低下症を合併した21歳女性の報告があります。‎[Dtsch Med Wochenschr. 1997 Nov 7;122(45):1382-6.]

甲状腺関連の上記以外の検査・治療      長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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