石灰化と甲状腺腫瘍、甲状腺癌、橋本病[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
①石灰化した甲状腺腫瘍は石灰化していないものよりも悪性の確率が高いため注意が必要。石灰化した甲状腺腫瘍が全て甲状腺癌ではなく、石灰化しない甲状腺癌も珍しくない。甲状腺悪性リンパ腫は石灰化しない。②甲状腺内の石灰化は、甲状腺腫瘍内の石灰化か、橋本病(慢性甲状腺炎)の炎症に伴う甲状腺本体の石灰化か鑑別要。③橋本病の甲状腺内に存在する広範・びまん性砂粒状石灰化は甲状腺びまん性硬化型乳頭癌・乳癌の甲状腺転移と鑑別要。④被膜が石灰化した腫瘍・・卵殻状石灰化は、良悪性・組織型を超音波(エコー)検査で鑑別できない。
Keywords
石灰化,甲状腺腫瘍,甲状腺癌,甲状腺悪性リンパ腫,橋本病,慢性甲状腺炎,甲状腺,砂粒状石灰化,超音波,エコー
石灰化した甲状腺腫瘍は、石灰化していない甲状腺腫瘍よりも悪性である確率が高いため、注意が必要です。
もちろん、石灰化した甲状腺腫瘍が全て甲状腺癌と言う訳ではありません。また、石灰化しない甲状腺癌も珍しくありません。
甲状腺原発悪性リンパ腫は、悪性ですが石灰化する事はありません。
甲状腺超音波(エコー)検査で、甲状腺内部に石灰化が見つかった時、それが甲状腺腫瘍内部の石灰化なのか、橋本病(慢性甲状腺炎)の炎症に伴う甲状腺組織(甲状腺本体)の石灰化なのか鑑別しなければなりません。
甲状腺腫瘍内部の石灰化なら、石灰化した甲状腺腫瘍は、石灰化していない甲状腺腫瘍よりも悪性である確率が高いからです(石灰化した甲状腺腫瘍が全て甲状腺癌と言う訳ではありません)。
下の超音波(エコー)画像は、一見、単なる甲状腺組織の石灰化に見えますが、拡大してみると石灰化の周囲が低エコーになっていて、甲状腺腫瘍内部の石灰化なのが分かります。
ケース1
ケース2
ケース3
ケース4
ケース5
唯一CT、MRIが甲状腺超音波(エコー)検査より優れている点の1つは、超音波が届かない“死角”の評価が可能なことです。超音波は石灰化を通過できないため、広範囲な石灰化の下は見えません。CTを行った結果、破線状石灰化の正体は石灰の塊でした。これでは、破線状石灰化の部分に穿刺細胞診しても細胞は採取できません。(唯一CT、MRIが甲状腺超音波(エコー)検査より優れている点)
卵殻状石灰化 甲状腺濾胞腺腫①
卵殻状石灰化 甲状腺濾胞腺腫②
卵殻状石灰化 腺腫様結節①
卵殻状石灰化 腺腫様結節②
卵殻状石灰化 ただの石灰化
被膜が石灰化した腫瘍・卵殻状石灰化(前項)は、良悪性いずれの可能性も、いかなる組織型もあり得ます。
-
腺腫様甲状腺腫
- 甲状腺のう胞腺腫(甲状腺嚢胞腺腫)
-
甲状腺濾胞癌
-
甲状腺乳頭癌
-
甲状腺低分化がん
いずれであっても、超音波(エコー)検査上の見え方はほとんど同じで鑑別難。
鑑別できるとすれば、石灰化被膜・卵殻状石灰化の外側へ内部の低エコー領域が染み出すように広がっている所見。それは甲状腺癌が石灰化被膜・卵殻状石灰化を越えて周囲に浸潤している所見です。
しかも、被膜が石灰化した腫瘍・卵殻状石灰化は、
- 穿刺細胞診をしようにも、針が石灰化被膜を通り抜けない事がある
- 超音波(エコー)プローブ(探子)による用手圧迫の歪が、石灰化被膜で打ち消されるため、エラストグラフィーは無効
被膜石灰化 内部は液体で、被膜が石灰化した甲状腺のう胞腺腫(甲状腺嚢胞腺腫)です。
被膜石灰化 内部は液体(甲状腺のう胞腺腫(甲状腺嚢胞腺腫))
甲状腺内に広範囲な(長い線状、あるいは弧状の)石灰化があっても、超音波は石灰(Ca)を通過できないため、その下が腫瘍なのか否か超音波(エコー)検査では分かりません。
このような超音波が届かない“死角”の評価にCTが有用な事があります。下のCT写真を見ると、腫瘍でなく石灰の塊なのが分かります。穿刺しても針が入らないはずです。
橋本病の甲状腺内に広範な、びまん性砂粒状石灰化
橋本病の甲状腺内に広範な、びまん性砂粒状石灰化を認める事があります。甲状腺びまん性硬化型乳頭癌(DSPTC) の様にも見えますが、年期の入った線維化の強い甲状腺に多く、若年成人女性に多い甲状腺びまん性硬化型乳頭癌(DSPTC) とは異なります。穿刺細胞診すれば容易に診断できるので、鑑別診断に困りません。
また、乳癌の甲状腺転移も、びまん性砂粒状石灰化になる場合が多く、鑑別を要します。
橋本病の多発性局所性石灰化 超音波(エコー)画像;甲状腺びまん性硬化型乳頭癌(DSPTC)、乳癌の甲状腺転移 とは穿刺細胞診をしなければ鑑別できません。
橋本病のびまん性砂粒状石灰化+粗大石灰化 or 甲状腺腫瘍のびまん性砂粒状石灰化+粗大石灰化
甲状腺びまん性硬化型乳頭癌(DSPTC)、乳癌の甲状腺転移の超音波(エコー)画像
甲状腺びまん性硬化型乳頭癌(DSPTC) 超音波(エコー)画像 (Ultrasonography. 2017 Apr 36(2) 103–110.)
乳癌の甲状腺転移 超音波(エコー)画像(日臨外会誌 77(5),1043―1048,2016)
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。