乳癌の甲状腺転移,甲状腺乳頭癌・甲状腺びまん性硬化型乳頭癌、橋本病(慢性甲状腺炎)びまん性砂粒状石灰化と鑑別[長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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乳癌甲状腺転移 超音波(エコー)画像[J Clin Ultrasound. 2014 Sep;42(7)430-2.]
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。乳腺の診療を行っておりません。
Summary
乳癌の甲状腺転移は稀だが、臨床上問題となる転移性甲状腺癌の原因として腎臓癌(腎細胞癌)に次ぐ多さ。乳癌の甲状腺転移と甲状腺乳頭癌は超音波エコー画像で同じ。乳癌の甲状腺転移でも血中サイログロブリンは甲状腺組織破壊により高値、CA15-3も高値。のう胞型腫瘤の乳癌は、のう胞液(嚢胞液)中CA15-3が高値。穿刺細胞診、組織診でサイログロブリン染色陰性、エストロゲンレセプター/プロゲステロンレセプター染色陽性[ただし、篩(ふるい・モルラ)型甲状腺乳頭癌も陽性]。乳癌甲状腺転移の約半数は、びまん浸潤型で橋本病(慢性甲状腺炎)、甲状腺びまん性硬化型乳頭癌と鑑別要。
Keywords
乳癌,甲状腺転移,転移性甲状腺癌,甲状腺乳頭癌,超音波,エコー,サイログロブリン,CA15-3,穿刺細胞診,鑑別
乳癌の転移先臓器は骨・肺・肝臓・脳が多く、乳癌の甲状腺転移は非常に稀。しかし、臨床上問題となる転移性甲状腺癌の原因として、腎臓癌(腎細胞癌)に次いで多い(別冊 日本臨牀領域別症候群シリーズ,内分泌症候群,上巻,日本臨牀社,大阪,1993,p321-323)。
乳腺、甲状腺ともにリンパ管と密接につながっています。センチネルリンパ節(見張り番リンパ節;流出したリンパ液が最初に辿り着くリンパ節)をスタート地点として、リンパの流れに沿って周囲へ転移します。
超音波(エコー)画像の違い
乳癌の甲状腺転移と甲状腺乳頭癌は超音波(エコー)画像で同じに見えます。先に乳癌が見つかって治療されている場合、乳癌の甲状腺転移を疑いますが、先に甲状腺腫瘤や甲状腺機能低下症が見つかった場合、甲状腺乳頭癌とリンパ節転移が疑われます。
当然、乳癌の甲状腺転移と甲状腺乳頭癌は治療方針が全く異なるため、必ず鑑別しなければなりません。
超音波(エコー)画像で同じに見えると言っても、よく観察すると全く同じではありません。筆者の経験で、甲状腺乳頭癌はリンパ節転移を伴いますが、甲状腺原発巣の方が主体で、腺内転移が多発したり、原発巣が大きくて周囲への浸潤を認めたりします。頚部リンパ節転移の道筋をたどると、乳房とは方向が違う外側頚部に辿り着いたりします。
一方、乳癌の甲状腺転移は、頚部リンパ節転移が主体で、甲状腺内の病変に比べて、圧倒的に数が多く、大きい。頚部リンパ節転移の道筋をたどると、鎖骨上窩から乳房に続いています[鎖骨上窩より下は超音波(エコー)では見えないので、CT 5mmスライスで観察]。
腫瘍マーカーの違い
甲状腺の腫瘍マーカーとなる血中サイログロブリンは、乳癌の甲状腺転移でも甲状腺組織の破壊により上昇するため鑑別の指標になりません。乳癌の腫瘍マーカーとなるCA15-3が高値なら、乳癌の甲状腺転移は濃厚になりますが、必ずしも上昇しないため低値では判断できません[Oncol Rep. 2018 Jul;40(1):145-154.]。また、CEAが高い場合、甲状腺髄様癌の可能性も考えられます。
のう胞型腫瘤(嚢胞型腫瘤)を形成する乳癌の甲状腺転移なら、のう胞液(嚢胞液)中のCA15-3は高値になる可能性があります。良性の乳腺嚢胞(乳腺のう胞)では、のう胞液(嚢胞液)中のCA15-3濃度は血中と同じレベルです(Int J Gynaecol Obstet. 1995 Feb;48(2):187-92.)。
また、膵嚢胞(膵のう胞)、特に粘液性膵嚢胞腺癌では、良性漿液性膵のう胞、良性粘液性膵のう胞、炎症性偽のう胞に比べ、のう胞液(嚢胞液)中のCA15-3濃度が10倍近い高値になります(Surgery. 1994 Jan;115(1):52-5.)。
穿刺細胞診、免疫染色の違い
穿刺細胞診あるいは組織診でサイログロブリン染色陽性なら甲状腺乳頭癌が確定。エストロゲンレセプター/プロゲステロンレセプター染色で陽性なら乳癌の甲状腺転移の可能性大[ただし、篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌(cribriform-morular variant)はエストロゲンレセプター/プロゲステロンレセプター染色陽性]。
[Afr Health Sci. 2017 Dec;17(4)1035-1043.より改変]
乳癌の甲状腺転移の約半数は、びまん浸潤型で
- 橋本病(慢性甲状腺炎)(橋本病の甲状腺内に広範な、びまん性砂粒状石灰化 )
- 甲状腺びまん性硬化型乳頭癌(DSPTC)
と誤診される危険性があります(Cancer 15: 557-565, 1962)(パジェット病(Paget病)と甲状腺)。
甲状腺にしか転移所見がない場合、甲状腺を摘出すれば、甲状腺内の乳がん細胞播種を防げるが、乳がん自体の予後は改善しないとされます (Clin Endocrinol( Oxf) 2007 ; 66 : 565-571)。頸部圧迫症状が強い場合、反回神経麻痺・気管浸潤がある場合、手術により改善する可能性があります。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。