甲状腺癌骨転移(早期発見,診断,治療)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 超音波検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]

甲状腺：専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

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甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）は骨転移

甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）の脊椎転移

脊椎(胸椎・腰椎・仙骨)転移症状は、

1. ブロック注射しても良くならない難治性腰背部痛
    
2. 坐骨神経痛（BMJ Case Rep. 2011 Dec 1;2011:bcr1020115014.）
    
3. 下肢痛（しびれ）、下肢麻痺（不完全麻痺→完全麻痺）、下肢伸展挙上テスト陽性
    
4. 仙骨転移では馬尾症候群（膀胱直腸障害；排尿障害・排便障害、尿・便失禁、尿閉、会陰部の異常感覚・肛門周囲の感覚鈍麻）（Ned Tijdschr Geneeskd. 1998 Sep 26;142(39):2129-32.）
   膀胱直腸障害をきたしても残尿感は感じない。

になります。

（写真 JAFES 2017, 32(1) 57-59.）

第4頸椎より上位の転移で呼吸障害が生じます。

甲状腺乳頭癌の長管骨転移

甲状腺濾胞癌骨転移

甲状腺濾胞癌骨転移は、乳頭癌骨転移に比べ、

1. I-131を取り込み（集積し）やすいものの病勢コントロール困難が多い
2. 肺転移合併も多い

甲状腺濾胞癌の10年生存率は80％以上ですが、骨転移すると40%に低下し、かなり予後不良です。

甲状腺濾胞癌骨転移は、61%が孤立性転移、25.4%が多発性骨転移、13.6%が同時性肺転移。脊椎転移が最も多く、(33.9%)、次いで骨盤、頭蓋骨、長骨、胸骨。[Indian J Otolaryngol Head Neck Surg. 2018 Mar;70(1):10-14.]

多発骨転移をおこす微少浸潤型甲状腺濾胞癌

骨転移をおこす甲状腺微小濾胞癌

1cmに満たない甲状腺微小濾胞癌であっても、骨転移を起こす浸潤型甲状腺微小濾胞癌が存在します。すでに骨転移を起こしていれば、血清サイログロブリン高値から診断できる可能性はありますが、骨転移前なら穿刺細胞診でも診断できないため、見つける事は不可能です。(第56回 日本甲状腺学会 P2-083 P2-090 右下腿の疼痛を契機に診断された甲状腺濾胞癌骨転移の一例)

※微少浸潤型甲状腺濾胞癌＝癌の周囲に少しだけ広がる甲状腺濾胞癌
浸潤型甲状腺微小濾胞癌＝1cmに満たない大きさなのに、遠隔転移を起こす甲状腺濾胞癌

甲状腺濾胞癌は手術後10年してから骨転移もあり

甲状腺濾胞癌には甲状腺全摘手術後10年してから骨盤骨転移で見つかる症例もあります。（第54回 日本甲状腺学会 P171 甲状腺腫摘出10年後に骨盤転移にて診断された甲状腺濾胞癌の一例）

甲状腺濾胞癌の頭蓋骨転移・仙骨転移・胸骨転移

甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）骨転移の早期発見

甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）肺転移は、CT装置の普及によって、かなり小さい段階で発見され、より早期に治療可能となりました。しかし、骨転移は依然として進行した状態で発見され、治療が遅れるのが現状です。野口病院の報告によると、甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）手術後に発生した骨転移は、術後経過観察にも関わらず、臨床症状が出現してから診断に至るものがほとんどだそうです。（第59回 日本甲状腺学会P3-2-3 分化型甲状腺甲状腺癌の術後経過観察に対する考察 - 骨転移の検索について転移治療を行う立場から-）

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、甲状腺癌（あるいは甲状腺癌疑い）の肺転移検索で、肺CTを提携病院（東住吉森本病院）に依頼する折、（全身の骨を調べる訳にはいかないので）肺の撮影範囲内に写る、胸骨、肋骨、頸椎、胸椎、上腕骨を骨モードで撮影していただいております。また、（骨も含めた）肺以外の転移巣を早期に見つけるため、肺CTと6カ月の間隔で全身拡散強調MRI検査[DWIBS(ドゥイブス)]を受けることを勧めています。

また、甲状腺濾胞癌の骨転移は、血行性転移なので、甲状腺濾胞癌自体の大きさだけでは判断できません。

1. 転移先の骨で甲状腺濾胞癌が増殖すれば、サイログロブリンを産生します。甲状腺内の腫瘍サイズに比べ、明らかにサイログロブリンが高値なら遠隔転移（肺転移、骨転移）を疑わねばなりません。[ただし、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)陽性の橋本病（慢性甲状腺炎）を合併していれば、血清サイログロブリン値は低く出てしまうので、信用できません。それでも高値なら、実際はもっと高値と言う事になりますが。]）
   [Endocrinol Diabetes Metab Case Rep. 2013:2013:130051.][Endocr Pract. 2018 Aug;24(8):740-745.]
    
2. 濾胞性腫瘍で、かつ体のどこかに骨痛、関節痛があれば、甲状腺濾胞癌の骨転移を疑い、痛みがある周辺のCTを撮るべきです。[Am J Case Rep. 2022 Dec 7:23:e938510.]
   腕の痛みから甲状腺濾胞癌の骨転移が判明しても、肝心な甲状腺内に甲状腺濾胞癌を認めないケースもあります。筆者の想像では、卵巣甲状腺腫などの異所性甲状腺濾胞癌ではないでしょうか？[J Cancer Res Ther. 2018 Jan-Mar;14(2):447-450.]

甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）骨転移の診断

甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）骨転移は、通常の骨シンチでは取り込み（集積）が悪く、診断の役に立たない場合が多い。甲状腺全摘していれば、アイソトープ検査（I-123 シンチグラフィー、I-131 シンチグラフィー）が有用[取り込み（集積）が悪ければFDG-PET/CTが有用]。全身のMRI（DWIBS：ドゥイブス ）/CTにて転移巣を探し、最終的にはCTガイド下骨生検で確定診断します。（J Nucl Med 2007 Jun 48(6) 889-95.）

最近では、甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）骨転移の診断に、拡散強調MRIを全身で撮影するDWIBS(ドゥイブス、diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression)法を用います。

甲状腺濾胞癌脊椎転移のMRI画像です。甲状腺濾胞癌脊椎転移は他臓器癌の脊椎転移と異なり、発育速度が遅く、椎間板にも浸潤するため脊椎カリエスとの鑑別が難しい（甲状腺癌脊椎転移と鑑別を要する脊椎カリエス）。

（JAFES 2017, 32(1) 57-59.）

甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）骨転移の治療

甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）骨転移の治療

甲状腺髄様癌も骨転移

甲状腺髄様癌も骨転移します。甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌）と異なり、骨シンチグラフィーで取り込み（集積）よく、治療にはストロンチウム(89-Sr)内照射が有効。（第54回 日本甲状腺学会 P117 甲状腺髄様癌の骨転移の疼痛緩和にストロンチウム内照射療法が有効であった1例）

甲状腺髄様癌の骨転移は、脊椎と骨盤を中心として多発性に起こります。

1. 77%が6つ以上の多発性骨転移病変を有する
2. 脊椎転移が92%、骨盤転移が69%
3. 48%で骨転移症状、11%で骨転移による骨折、1.6％で脊髄圧迫

（J Clin Endocrinol Metab. 2016 Dec;101(12):4871-4877.）

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