アトピー性皮膚炎・デュピルマブ(デュピクセント®)・アレルギー性接触性皮膚炎とバセドウ病・橋本病・無痛性甲状腺炎[長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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デュピルマブによる無痛性甲状腺炎[Endocrinol Diabetes Metab Case Rep. 2020 Jun 16;2020:20-0030.]
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。アレルギー自体の診療を行っておりません。
Summary
小児アトピー性皮膚炎患者では自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)有病率が高(13.67%)。デュピルマブ(デュピクセント)[IL-4(インターロイキン-4)とIL-13を直接抑制]治療開始後、無痛性甲状腺炎や甲状腺機能正常橋本病を発症した報告あり。臨床試験で0.2-0.3%に甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症。ヘルパーT細胞の一つTh1細胞は、遅延型(IV型)アレルギー反応のアレルギー性接触性皮膚炎、橋本病(慢性甲状腺炎)、1型糖尿病などに関与。JAK阻害薬オルミエント®(バリシチニブ)で甲状腺腫、バセドウ病発症の報告。
Keywords
アトピー性皮膚炎,甲状腺,バセドウ病,橋本病,デュピルマブ,デュピクセント,甲状腺機能亢進症,アレルギー性接触性皮膚炎,オルミエント,バリシチニブ
小児アトピー性皮膚炎患者では自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)の有病率が高いとされます(13.67%-18.9%)。[World J Clin Pediatr. 2016 Aug 8;5(3):288-92.][J Am Acad Dermatol. 2023 Oct;89(4):e175-e176.][Indian Dermatol Online J. 2023 Dec 1;15(1):45–48.]
免疫細胞であるヘルパーT細胞(エフェクターCD4+ T細胞)は、Th1細胞(細胞性免疫)、Th2細胞[液性免疫:免疫グロブリン→TSH受容体抗体(TRAb)]、Th17細胞に分類され、何が優位になるかで、橋本病・バセドウ病いずれになるか決まります(橋本病とバセドウ病は入れ替わる)。一方、アトピー性皮膚炎はTh2細胞による免疫反応です。[Indian Dermatol Online J. 2023 Dec 1;15(1):45–48.]
デュピルマブ(デュピクセント®)はアトピー性皮膚炎や気管支喘息、慢性副鼻腔炎などの治療に使用される生物学的製剤です。インターロイキン阻害薬として、炎症性サイトカインのIL-4(インターロイキン-4)とIL-13を直接抑えることで、皮膚の炎症反応を抑制します。具体的には、IL-4受容体アルファサブユニット(IL-4Rα)に結合し、リガンドであるIL-4およびIL-13を介したシグナル伝達を阻害します。
ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の治療で、十分な効果が得られない場合に使用されます。
デュピルマブ治療開始後、
- 4か月で無痛性甲状腺炎を発症した49歳男性[Endocrinol Diabetes Metab Case Rep. 2020 Jun 16;2020:20-0030.]
- 無痛性甲状腺炎を発症した15歳児[Allergol Immunopathol (Madr). 2023 May 1;51(3):181-185.]
- 甲状腺機能正常橋本病を発症した46歳の女性;デュピルマブ中止後、抗サイログロブリン抗体陰性化[Acta Derm Venereol. 2025 Feb 5;105:adv41250.]
- 腸と皮膚症状の急速な改善により、ステロイド漸減できたIPEX症候群[Front Immunol. 2023 Jan 11;13:995304.]
の報告があります。
サノフィ株式会社 が公表している臨床試験結果「デュピルマブ(遺伝子組換え) CTD第二部-臨床概要 2.7.6 個々の試験のまとめ 」において、甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症が0.2-0.3%で認められたとされます。
筆者の想像ですが、インターロイキン阻害による炎症性サイトカインの変化により、免疫系のバランスが崩れて自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)が発症するのではないかと考えます。
デュピルマブによる無痛性甲状腺炎[Endocrinol Diabetes Metab Case Rep. 2020 Jun 16;2020:20-0030.]
バリシチニブ(オルミエント®)はヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(JAK1/JAK2阻害薬)で、既存治療で効果不十分な
- 関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)[Ther Adv Musculoskelet Dis. 2017 Feb;9(2):37-44.]
- アトピー性皮膚炎
- 多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎
- 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2) による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)[Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Treatment Guidelines: National Institutes of Health (US); 2021 Apr 21-2024 Mar 1.]
- 円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)
に保険適応があります。
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤は複数のサイトカインを一度に抑制するため、良くも悪くも自己免疫性甲状腺疾患への影響があってもおかしくありません。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症によるサイトカインストーム誘発性甲状腺機能障害の予防になり得ます。[Drug Des Devel Ther. 2024 Sep 20;18:4215-4240.]
遅延型(IV型)アレルギー反応には、アレルギー性接触性皮膚炎、金属アレルギーや薬剤アレルギー[チラーヂンSによる薬剤性肝障害(アレルギー性肝障害)]などが含まれます。
ヘルパーT細胞(エフェクターCD4+ T細胞)の一つであるTh1細胞は、遅延型(IV型)アレルギー反応のアレルギー性接触性皮膚炎、橋本病(慢性甲状腺炎)、1型糖尿病、多発性硬化症(MS)などに関与しています。
だからと言って、アレルギー性接触性皮膚炎により橋本病(慢性甲状腺炎)や1型糖尿病が増悪する報告はありません。
パッチテストはIV型(遅延型)アレルギー反応の検査法で、通常48 時間後に判定します。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。