甲状腺未分化癌 [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波検査(エコー) 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。
その他、甲状腺の基本的な事は甲状腺の基本(初心者用) 橋本病の基本(初心者用)を、高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。
Summary:
甲状腺未分化癌は全甲状腺癌の1〜2%、甲状腺癌死の14〜39%を占め極めて悪性度が高い。高齢者に多く、男女比は最も小さく、甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)の併存が特徴。症状は急激に増大する硬い頸部腫瘤、頸部痛。超音波検査(エコー)所見、細胞診検査で容易に診断できる。周囲臓器に浸潤、遠隔転移は肺・骨・脳など。限局型のstage Ⅳ Aは、根治手術可能で生存期間1年以上、周囲臓器に進展(stage Ⅳ B)、遠隔転移(stage Ⅳ C)は根治手術を期待できず、放射線外照射・化学療法・分子標的薬治療で、平均余命6カ月程。バルプロ酸併用で抗がん剤効果上がる。
Keywords:
甲状腺未分化癌,甲状腺癌,症状,頸部痛,浸潤,遠隔転移,治療,手術,超音波,細胞診
- 甲状腺未分化癌の特殊例 (甲状腺専門医以外は知らなくても良いです)
甲状腺未分化癌(Anaplastic thyroid carcinoma:ATC)は全甲状腺癌の僅か1〜2%ですが、甲状腺癌死の14〜39%を占める極めて悪性度が高い甲状腺癌です(Cancer. 1998 Dec 15;83(12):2638-48.)。
甲状腺未分化癌は
- 高齢者に多い
- 男女比が最も小さい
- 甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)が併存する(甲状腺未分化癌の予後には影響しない[Laryngoscope. 2022 Jul 2.])
のが特徴です。
甲状腺未分化癌は、
- 原発性(あるいはde novo) ;最初から甲状腺未分化癌
- 2次性;甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)が未分化転化。最初の甲状腺手術から再発結節が未分化転化するまでの期間中央値は106か月(範囲6〜437か月)[Endocr Pathol. 2021 Sep;32(3):347-356.]
の2種類があります。両者を比較すると
- 臨床経過や予後に差は無し
- TERT promoter, PIK3CA, TP53遺伝子変異も差は無し
- 原発性(あるいはde novo) の方がサイズが大きい
- 2次性の方が、甲状腺乳頭癌に多いBRAF変異の陽性率は高いが、甲状腺濾胞癌に多いRAS変異の陽性率に差は無い
[Endocr Pathol. 2021 Dec;32(4):489-500.]
甲状腺専門医以外は知らなくても良いのですが、
- 甲状腺良性腫瘍や甲状腺髄様癌の併存もあります。その理由は 甲状腺癌の発癌理論(芽細胞発癌) を御覧下さい。
- 甲状腺乳頭癌の転移性リンパ節における充実性/島状増殖およびホブネイル細胞変化は、その後、未分化転化する危険因子です[Endocr Pathol. 2021 Sep;32(3):347-356.]
甲状腺未分化癌の症状は、
- 短期間(週単位のことが多い)で急激に増大する硬い頸部腫瘤(甲状腺腫瘤)
- 急激な増大に伴う頸部痛(首の痛み)、嗄声(かすれ声)、嚥下困難(飲み込みにくい)、呼吸困難(息苦しい)
- 発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状
- 甲状腺の急激な破壊による一過性の甲状腺中毒症症状(甲状腺ホルモン過剰症状)、その後の甲状腺機能低下症症状
- 皮膚浸潤し、皮膚発赤(腫瘍の上の皮膚が赤くなる)
- 気管浸潤し、咳嗽(咳);耳鼻咽喉科へ行き、喉頭ファイバーで声門下の粘膜不整が見つかる。頚部CTでは気管粘膜下に腫瘍が進展し、頚部食道癌を疑われる事がある。
- 気管・食道を越え、心筋浸潤すると直接死因になります。心不全、致死性不整脈(第530回 日本甲状腺学会 P6 病理解剖で診断された心筋転移を伴う甲状腺未分化癌の一例)[Endocr Relat Cancer. 2001 Mar;8(1):71-3.][Acta Med Okayama. 2006 Apr;60(2):135-40.]
- 上大静脈を閉塞し、顔面浮腫(顔のむくみ)[上大静脈症候群(SVC症候群)]
- 腫瘍が副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)産生し、高カルシウム血症[腫瘍随伴体液性高カルシウム(Ca)血症(humoral hypercalcemia of malignancy: HHM)][Endocr J. 2004 Jun;51(3):303-10.]
- 遠隔転移は、肺と胸膜が約90%前後、骨転移が5~15%、脳転移5%、皮膚、肝臓、腎臓、膵臓、心臓、副腎など,あらゆる部位へ転移(Thyroid Cancer, NJ :Humana Press, Totowa, 2006, p629-632.)
血液検査
甲状腺未分化癌の血液検査所見は、
- 白血球増多、CRP高値の炎症反応
- 高LDH
- 甲状腺中毒症所見(甲状腺ホルモン軽度高値、肝障害、低コレステロール、低クレアチニンなど)、その後の甲状腺機能低下症所見
画像診断
細胞診検査
(以下の細胞診の所見は、医療関係者以外の方は無視してください。写真のみご覧になり、「こんなものか」と思っていただければ十分です。)
甲状腺未分化癌の細胞は非常に特徴的で、誰でも診断できます。ただし、細胞が採れればの話です。甲状腺未分化癌は壊死組織が多く、そこを採っても診断不能です。
- 周囲に血流が存在し壊死していない箇所
- 卵殻状石灰化より広がる低エコーの先進部
から採取。
細胞診所見は、
- 大型の腫瘍細胞、多核巨細胞、紡錘形細胞、扁平上皮への分化を示す細胞と多様
- 腫瘍細胞間の結合性低下が著しく、散在
- 核径は甲状腺分化癌に比べ数倍大きい
- 核小体やクロマチン顆粒の肥大が著明
- 好酸性小球体を有するrhabdoid細胞がみられる(写真:バーチャル臨床甲状腺カレッジより改変)
- 背景には、好中球や壊死物質
(写真;バーチャル臨床甲状腺カレッジより)
報告症例における甲状腺未分化癌摘出標本の免疫染色は、
- 以下の甲状腺腫瘍マーカー陰性
Thyroglobulin(サイログロブリン;甲状腺分化癌・良性濾胞腺腫・腺腫様結節で陽性)、Calcitonin(カルシトニン)とCEA(甲状腺髄様癌で陽性)、HBME-1(甲状腺乳頭癌の組織マーカー, 90%以上で陽性[Endocr Pathol 2010;21:80–9.])、甲状腺ペルオキシダーゼ(peroxidase、濾胞腺腫で陽性率が高い[Oncol Lett. 2017 Oct;14(4):4183-4189. ])
- TTF-1(甲状腺の組織マーカー)は局所的に陽性、全て陰性との報告もある[Hum Pathol. 2018 Dec:82:140-148.]
- PAX-8は36%で陽性[Hum Pathol. 2018 Dec:82:140-148.]
- 他の上皮性マーカーはkeratin 陽性、CK7(Cytokeratin 7)陽性、EMA(上皮細胞膜抗原;真の腺腔で陽性)は局所的に陽性
- CD20(B細胞リンパ球系:甲状腺悪性リンパ腫で陽性)陰性
- 間葉系マーカーはvimentine(ビメンチン;結合組織細胞に広く発現)強陽性、α-SMA(α平滑筋アクチン)陽性
- 全例でp53(>50%)、Ki-67増殖率(>30%)[Hum Pathol. 2018 Dec:82:140-148.]
となり、甲状腺の組織でありつつも、他の甲状腺腫瘍マーカーは陰性。甲状腺扁平上皮癌の方向性も秘め、結合組織の増殖能も高いと言う解釈ができると思います。(第56回 日本甲状腺学会 P1-113 壊死性変化が著明であった甲状腺未分化癌の1 症例)
※甲状腺未分化癌であると言うだけで、すでにstage Ⅳなのです。 甲状腺未分化癌の1年生存率は20%未満と極めて予後不良です。
しかしながら、積極的な根治的切除と頸部再建術に放射線療法・化学療法を併用する集学的治療により、1年以上も生存できるケースが増えています。[Ann Chir. 2006 Dec;131(10):631-5.]
甲状腺未分化癌 限局型のstage Ⅳ A
甲状腺未分化癌 限局型のstage Ⅳ Aは、根治手術可能で生存期間1年以上もありえます(Ann Surg Oncol 2002;9:57-64.)。
腺外浸潤している場合、生存率を改善させるのは、
- ウィークリーパクリタキセル(wPTX)の術前投与(Thyroid. 2016 Sep;26(9):1293-9.)(第56回 日本甲状腺学会 O2-1 Paclitaxel 反応性を判断材料とした甲状腺未分化癌の治療戦略とATC-staging system の妥当性)
※パクリタキセル(タキソール®)は溶解液にアルコールを含むため、外来通院は自分で車を運転せず、送迎してもらうか公共交通機関を利用するよう指導する。また、アルコール不耐症の患者には薬物変更を余儀なくされる場合もある。
- 術後放射線治療の併用;局所的な腫瘍体積の増大は、転移よりも死亡率増加に関連するため。(ead Neck 2007;29:765-772.)(Cancer. 2020 Jan 15;126(2):444-452.)
伊藤病院の見解では、術前ウィークリーパクリタキセル(w-PTX)投与による根治手術施行率の上昇こそが、疾患特異生存期間(CSS)延長につながるとの事です。この方法で、治癒症例(2年以上無再発生存) は3%から17%に改善し たそうです。(第60回 日本甲状腺学会 O7-4 甲状腺未分化癌の治療成績は向上しているのか? )
外科的根治切除手術しても早期再発
外科的根治切除手術しても早期再発するケースは多々あります。甲状腺未分化癌である以上、仕方ないかもしれません。そもそも、甲状腺未分化癌を残さず取り切るのは不可能です(完全に取り切れないため、外科的根治切除手術が成功したと言っても、余命は数年になります)。
具体例を挙げると、甲状腺全摘出術(左前頚筋・胸鎖乳突筋・内頸静脈・反回神経・食道縦走筋・瘻孔形成した皮膚を合併切除、気管シェ-ビング、リンパ節郭清)と術後放射線照射を施行しても、術後72日目に頚部リンパ節転移、99日目に胸膜播種をおこした。(第60回日本甲状腺学会 P2-9-6 外科的根治切除後に早期再発を認めた甲状腺未分化癌(ATC)の2例)
甲状腺未分化癌 周囲臓器に進展(stage Ⅳ B)、遠隔転移(stage Ⅳ C)
甲状腺未分化癌が周囲臓器に進展(stage Ⅳ B)、遠隔転移(stage Ⅳ C)していると根治手術を期待できず、放射線外照射・化学療法・分子標的薬治療の適応になります。その際の、平均余命6カ月程、1年生存率約20%です。
- 外来化学療法、ウィークリーパクリタキセル(wPTX)の有効性についての報告があります。(Thyroid 2010;20:7-14.)[Thyroid. 2016 Sep;26(9):1293-9.]
生存期間の延長は不可能でも、病勢をコントロールし、患者の苦痛を和らげることは可能なようです。(第54回 日本甲状腺学会 P184 甲状腺未分化癌に対するpalliative chemotherapyとしてのweekly paclitaxelの初期経験)
※パクリタキセル(タキソール®)は溶解液にアルコールを含むため、外来通院に際して自分で車を運転せず、送迎してもらうか、公共交通機関を利用するよう指導する。また、アルコール不耐症(アルコールアレルギー)の患者には薬物の変更を余儀なくされる場合がある。
- 放射線外照射(JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2015 Dec;141(12):1128-32.)
1日1回の通常照射では、甲状腺未分化癌の急速な増殖を抑えられず、1日2回の過分割照射が推奨されます。ただし、放射線皮膚炎・放射線食道炎には注意。(第55回 日本甲状腺学会 P1-05-09 過分割照射が有効であった切除困難な甲状腺未分化癌のweekly paclitaxelの一例)
しかし、過分割照射にしても予後は改善しないとされます[Eur Arch Otorhinolaryngol. 2017 Dec;274(12):4203-4209.][Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2009 Jun 1;74(2):518-21.]
- レンビマカプセル®4mg(一般名:レンバチニブメシル酸塩)は、甲状腺未分化癌を含む根治切除不能な甲状腺癌に適応のある日本で初めての分子標的薬です。[根治切除不能甲状腺がんにレンビマ®(レンバチニブ)]
日本甲状腺学会にて報告されたレンビマ®(レンバチニブ)使用経験では、非常に高い抗腫瘍効果を示す症例も存在し、
①頚部原発巣では、咽頭気管瘻・腫瘍食道瘻・皮膚瘻や頚部自壊部出血まで起こり得る
②肺転移巣・縦隔転移巣に効けば部分寛解もある
③部分寛解しても投薬終了後まもなく死亡する(レンビマ®(レンバチニブ)休薬後のフレア現象)
④有害作用として高血圧は必発。休薬・減量を余儀なくされる副作用は血小板減少と蛋白尿が多い(レンビマ®(レンバチニブ)の副作用)
⑤当然ながら、投与中甲状腺未分化癌による癌死も起こります。
(第59回 日本甲状腺学会 O1-4 甲状腺未分化癌に対するlenvatinib 投与経験)
- 甲状腺未分化癌におけるBRAF V600E変異の頻度は約20~50%とされます[BMC Surg. 2013;13 Suppl 2(Suppl 2):S44.][Thyroid. 2017 Jan;27(1):81-87.]。甲状腺癌のがんゲノム医療(precision medicine:精密医療)として、
①BRAF阻害薬タフィンラー ®(ダブラフェニブ:dabrafenib:BRAFi)とMEK阻害薬メキニスト®(トラメチニブ:trametinib:MEKi)併用療法[J Clin Oncol. 2018 Jan 1;36(1):7-13.]。
②BRAF阻害薬ビラフトビ®(エンコラフェニブ:encorafenib:BRAFi)とMEK阻害薬メクトビ®(ビニメチニブ:binimetinib:MEKi)併用療法[Thyroid. 2024 Apr;34(4):467-476.]
が有効です
- 平均余命6カ月程である事を考え、最初から緩和ケア(終末期医療)を行う。あるいは上記治療が無効と判断されれば、早々に緩和ケアへの変更も考慮すべきでしょう。変更後は、痛み・呼吸困難・食物通過障害に対する治療になります。(甲状腺癌の終末期医療(ターミナルケア)/緩和ケア)
抗てんかん薬バルプロ酸はヒストンの脱アセチル化酵素[ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)]阻害作用があるため、甲状腺未分化癌の放射線感受性・抗癌剤ドキソルビシンやパクリタキセルの効果を高めるとされます。[J Endocrinol. 2006 Nov;191(2):465-72.][Endocr Relat Cancer. 2007 Sep;14(3):839-45.][Int J Endocrinol. 2016;2016:2930414.]
野口病院では、甲状腺未分化癌の抗がん剤治療にバルプロ酸を併用し、3年以上無再発生存率25%(12人の内3人)、生存期間の中間値 241.5日(やはり1年には届かない)と言う成績を出しています。(内分泌甲状腺外会誌 33(2):128-134,2016 他)
ドキソルビシン(DXR)とシスプラチン(CDDP)にバルプロ酸を併用すると、半分以下の抗癌剤負荷で、ほぼ同等の治療成績が期待できるされます。(第59回 日本甲状腺学会 O1-6 甲状腺未分化癌に対するバルプロ酸併用集学的治療)[Endocr J. 2009;56(2):245-9.]
コンバージョン手術(conversion surgery)
コンバージョン手術(conversion surgery:移行手術)は、切除不能の進行がんでも、化学療法、分子標的薬などの治療により癌が縮小した後に可能となる外科切除です。甲状腺未分化癌でも期待が持たれていますが、まだまだ先の様です。
日本で設立された甲状腺未分化癌研究コンソーシアムにより、国際的に類をみない多数例の解析が行われました。甲状腺未分化癌の予後不良因子は、
- 急性増悪症状
- 5cmを越える腫瘍径
- 遠隔転移
- 白血球10,000mm2以上
- T4b(甲状腺外浸潤)
- 70歳以上
でした(内分泌甲状腺外会誌 30(3):168-174,2013)。
甲状腺未分化癌の死因のほとんどは、気道狭窄か肺転移です。
G-CSF,GM-CSFを産生する甲状腺未分化癌
甲状腺未分化癌細胞が
- G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子;granulocyte-colony stimulating factor)
- GM-CSF(顆粒球単球コロニー刺激因子;granulocyte macrophage colony-stimulating Facto)
- 副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP);腫瘍随伴体液性高カルシウム(Ca)血症をおこします。[Endocr J. 2004 Jun;51(3):303-10.]
などを産生するケースがあります。G-CSFと副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)両方を産生するケースもあり[Intern Med. 1995 Jun;34(6):584-8.]。
CSF(コロニー刺激因子;colony stimulating factor) を産生する甲状腺癌の約8割が甲状腺未分化癌とされます。CSF産生甲状腺癌の中でもGM-CSFを産生する甲状腺未分化癌は、さらに稀です。(Hormones(Athens)2006;5 :303-9.)
WBCは数万/μL から10万/μL 以上に増加します。[Intern Med. 1992 Sep;31(9):1107-11.]
CSFは固形腫瘍の増殖能、転移能を増大させる作用があるとされ、甲状腺未分化癌の予後をさらに悪くする可能性があります(Blood 1989 ;73 :80-3.)。
甲状腺未分化癌に好酸球増加症をともなう場合
転移巣の未分化転化
原発巣が甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌)であっても、転移巣が突然、未分化転化をおこす事があります。転移再発部位がいきなり増大した時には未分化転化を疑います。[Nihon Ronen Igakkai Zasshi. 2000 Oct;37(10):819-22.][Indian J Pathol Microbiol. 2011 Oct-Dec;54(4):796-9.]
報告例では、原発巣が甲状腺濾胞癌、仙骨転移巣も骨生検にて甲状腺濾胞癌骨転移と確定していたが、14カ月後に右大腿筋周囲に血腫を認め、右大腿直筋と外側広筋の筋生検で甲状腺未分化癌による腫瘍出血と診断された。(第60回 日本甲状腺学会 P2-9-5 右大腿筋転移巣からDICを生じた甲状腺濾胞癌未分化転化の一例)
甲状腺濾胞癌切除後12年経って、骨盤に未分化転化した骨転移巣が現れた報告があります。[Thyroid. 2012 Feb;22(2):200-4.]
甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌)と甲状腺未分化癌が同時に存在するケースは多くありません。甲状腺乳頭癌で甲状腺全摘術を受けた後、甲状腺乳頭癌と甲状腺未分化癌が混在する再発リンパ節を認めた報告があります。[Am J Med Case Rep. 2020;8(7):202-205.]
未分化転化した転移巣が先に見つかり、その後で原発巣の甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌)が見つかるケースがあります。甲状腺未分化癌の約0.9%で、予後は極めて不良。[Curr Health Sci J. 2018 Jul 15;44(3):294–298.][Am J Case Rep. 2023 Dec 2;24:e941838.]
厄介なのは、超音波(エコー)検査で見つけられない顕微鏡レベル(組織レベル)の潜在性甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌)、いわゆるオカルト癌(occult cancer)です。未分化転化した頸部リンパ節がいきなり増大しても、原発巣が見つかりません。あります。[JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2013 Apr;139(4):415-8.]
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
も御覧ください
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。