甲状腺とアスピリン喘息(アスピリン不耐喘息)[橋本病 バセドウ病 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学附属病院 (現、大阪公立大学附属病院) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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[Allergy Asthma Clin Immunol. 2008 Jun 15;4(2):75-83.より改変]
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。気管支喘息の診療を行っておりません。
Summary
アスピリン=アセチルサリチル酸。抗血小板薬バイアスピリン®(アスピリン腸溶錠100mg)によるアスピリン喘息は、成人喘息の10%を占め、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害とロイコトリエン過剰が原因。湿布も含む全ての解熱鎮痛薬(NSAID)(バファリン、ロキソニン、ボルタレンなど)でおきる。鼻炎・慢性副鼻腔炎・鼻茸の合併が多い。アスピリン喘息患者の甲状腺癌骨転移に伴う痛みには塩基性消炎薬(ソランタール®)(効果は弱い)、トラマール®、ワントラム錠®(トラマドール塩酸塩)。リンデロン®(ベタメタゾン)、リン酸ヒドロコルチゾン(ハイドロコートン®)は使用可能。
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アスピリン=アセチルサリチル酸
甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病では動脈硬化が進行し、狭心症/心筋梗塞の発症率が上がります。(甲状腺と動脈硬化 )。バイアスピリン®(アスピリン腸溶錠100mg)は「抗血小板薬」として血液が固まるのを防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化性疾患を予防します。
バイアスピリン®を飲んで起こるアスピリン喘息は、湿布も含む全ての解熱鎮痛薬(NSAID)(バファリン、ロキソニン、ボルタレンなど)が原因となります。
- 湿布を貼ると赤くなり、すぐ剥がす人
- 湿布の臭いを嗅いだだけでゲホゲホむせかえる人
- サリチル酸化合物を含む野菜・果物(トマト、キュウリ、イチゴ、柑橘類、ブドウ、じゃがいも)、歯磨き粉(ミント)、香辛料、化粧品でむせ返る人
は、アスピリン喘息かもしれません。
アスピリン喘息は成人喘息の10%を占め、それまで何もなかったのに、30-40歳代で突然、上記症状や喘息発作をおこします。
アスピリン喘息は女性にやや多い。
アスピリン喘息は、解熱鎮痛薬(NSAID)がシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害し、ロイコトリエンが過剰になるのが原因。非アトピー型80%・アトピー混合型20%です。
アスピリン喘息は
- 鼻炎・慢性副鼻腔炎・鼻茸(はなたけ)の合併が多く、特に蝶形骨洞炎が波及し、脳膿瘍、下垂体膿瘍をおこす[蓄膿(副鼻腔炎)で下垂体機能低下症(下垂体膿瘍)]。鼻閉により臭いに鈍感になります。ステロイド吸入で難治性副鼻腔炎や中耳炎になるので要注意
- 重症難治性が多い
などが特徴です
アセチルサリチル酸と類似構造のコハク酸エステル型ステロイド(ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロンなど)もアスピリン喘息には過敏性がある。そのため、急速静注すると喘息発作の増悪を起こすので禁忌です。非安定期や発作時は、さらに少量のコハク酸エステルステロイドに対しても過敏になります。
また、去痰剤ビソルボン®吸入液中のパラベンもアスピリン喘息を誘発するので禁。
リンデロン®(ベタメタゾン)、リン酸ヒドロコルチゾン(ハイドロコートン®)はリン酸エステル型ステロイドなので、アスピリン喘息に対する過敏性はありません。しかし、アスピリン喘息を起こし易い添加物(亜硫酸塩やパラベンなど)を含んでいるため、急速静注せずに1時間以上かけてゆっくり点滴する。
内服でのステロイド剤が最も安全。
バイアスピリン®は間質性肺炎もおこすことがあり、注意を要します。
塩基性消炎薬(ソランタール®)は使用可能(効果は弱い)。PL顆粒®(アセトアミノフェン含有)、中性消炎薬COX2選択的阻害薬(セレコキシブ:セレコックス®)は、アスピリン喘息に禁忌となっているが使用可能。
アスピリンは、たまたま名前が似ているだけでピリン系ではありません。
ピリン系は、「ピラゾロン骨格」構造の解熱鎮痛薬で、SG配合顆粒®(イソプロピルアンチピリン)、市販薬に含まれるアミノピリン、スルピリン、フェニルブタゾン、フェプラゾン、スルフィンピラゾンなどです。
セデス・ハイ®にはピリン系のイソプロピルアンチピリンと非ピリン系のアセトアミノフェンが含まれています。
よって、ピリンアレルギーによる気管支喘息とアスピリン喘息は別物です。
アスピリン喘息患者でアスピリンを代用する痛み止めは
- 塩基性消炎薬(ソランタール®)は使用可能。PL顆粒®(アセトアミノフェン含有)、中性消炎薬でCOX2選択的阻害薬(セレコキシブ:セレコックス®)は、アスピリン喘息に禁忌となっているが使用可能。
消化性潰瘍ガイドラインによると、「セレコキシブ(セレコックス®)長期投与は、必ずしも予防的潰瘍薬を必要とせず」の記載がありますが、医療の現場でセレコックス潰瘍は珍しくありません。
- トラマール®、ワントラム錠®(トラマドール塩酸塩);オピオイド鎮痛剤と呼ばれるものです。癌による痛み、手術後の痛みにしか使用できません。甲状腺癌の骨転移に伴う痛みに有効。[甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)骨転移の治療][甲状腺癌の終末期医療(ターミナルケア)/緩和ケア/ベストサポーティブケア(BSC)]
※トラムセット®はアセトアミノフェン含有なので使用できません。
- 神経障害性疼痛治療薬;
プレガバリン(リリカカプセル®)は神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛に保険適応。
ミロガバリン(タリージェ®)も末梢性神経障害性疼痛に。リリカ®より嘔気や眠気などの副作用が少ないとされます。
- 抗うつ薬デュロキセチン(サインバルタ®);糖尿病性神経障害に伴う疼痛に保険適応があります。
- 時代遅れの三環系抗うつ薬、アミトリプチリン(トリプタノール®)、ノルトリプチリン(ノリトレン®)、イミプラミン(トフラニール®
- その他[メキシレチン(メキシチール®)、フルボキサミン(デプロメール、ルボックス®)、ミルナシプラン(トレドミン®)]
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。