甲状腺腫瘍と副腎腫瘍 [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
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甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
甲状腺腫瘍と副腎腫瘍。非機能性副腎偶発性腫(インシデンタローマ)患者では甲状腺結節(甲状腺の腫瘤)の有病率が高く、結節数が多い。PMS1生殖細胞変異[フレームシフトと切断を引き起こすPMS1欠失変異]により①甲状腺分化癌 肺転移→甲状腺未分化癌(ATC)に転化②消化管神経内分泌腫瘍(NET)③非機能性の良性副腎腺腫④蝶形骨翼髄膜腫→下垂体前葉機能低症⑤乳房結節が生じる。
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非機能性副腎偶発性腫(インシデンタローマ)患者では、甲状腺結節(甲状腺の腫瘤)の有病率が高く、甲状腺結節の数が多い[Endocr Res. 2014;39(3):99-104.]
PMS1生殖細胞変異[フレームシフトと切断を引き起こすPMS1欠失変異(NM_000534c.1258delC、p.His420Ilefs*22)]により、
- 甲状腺分化癌 肺転移→甲状腺未分化癌(ATC)に転化
- 消化管神経内分泌腫瘍(NET)
- 非機能性の良性副腎腺腫
- 蝶形骨翼髄膜腫→下垂体前葉機能低症
- 乳房結節
が生じる。
[J Endocr Soc. 2023 Mar 11;7(5):bvad035.]
甲状腺髄様癌の20%は、遺伝性の多発性内分泌腫瘍症2型[Multiple Endocrine Neoplasia type 2、略してMEN (メン) 2型]です。
MEN 2型は2つのタイプに分類されますが、いずれも副腎腫瘍の褐色細胞腫)が発生する確率が高いです。
MEN 2A(94%) |
ほぼ100%に甲状腺髄様癌、68%に副腎の褐色細胞腫(その半数は両側)、13%に副甲状腺機能亢進症(軽症が多い)を発生します。(Jpn J Clin Oncol 1997;27:128-134.) |
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MEN 2B(5%) |
ほぼ100%に甲状腺髄様癌、約50%に副腎の褐色細胞腫、ほぼ100%に舌や口唇・眼瞼・腸の粘膜下神経腫(抗S-100蛋白抗体陽性)、神経節腫、角膜神経腫、約80%にマルファン様体型[やせ型で手足が長い(過伸展) |
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MEN3 |
MEN2型の中で神経線維腫症1型(NF1、レックリングハウゼン病)を伴うもの |
詳しくは、 甲状腺髄様癌と多発性内分泌腺腫症2型(MEN2) を御覧ください。
内分泌の専門家でも知らない方が多いのですが、MEN1型(教科書的には原発性副甲状腺機能亢進症、膵消化管内分泌腫瘍、下垂体腺腫を主徴)でも20%に副腎腫瘍、2%に甲状腺癌を合併します。
詳しくは、 甲状腺乳頭癌と多発性内分泌腺腫症1型(MEN1) を御覧ください。
病変 | 浸透率 | 特徴 |
---|---|---|
原発性副甲状腺機能亢進症 | 95% | 若年発症(40歳までにほぼ全例が発症) 多腺性(過形成) 軽症(18%は副甲状腺ホルモンか血清Ca濃度が正常) 骨密度低下は非遺伝性より高度 |
膵・消化管内分泌腫瘍 |
60% | 膵消化管神経内分泌腫瘍(NET)の6-10% 75%が2個以上の腫瘍 一部悪性 ガストリノーマは胃十二指腸にも発生 インスリノーマの25%は成人前に診断 非機能性腫瘍が2cmを超えると肝転移の危険性 機能性腫瘍は手術適応 遠隔転移・切除不能時は ①分子標的薬(エベロリムス、スニチニブ) ②ストレプトゾシン ③オクトレオチド徐放剤(ガストリノーマ、VIP産生腫瘍) |
下垂体腫瘍 プロラクチン産生下垂体腺腫(20%)
非機能性下垂体腺腫(15%)
成長ホルモン産生下垂体腺腫(5%)
ACTH産生下垂体腺腫(まれ) TSH産生下垂体腺腫(まれ) |
50% | 逆に、プロラクチン産生下垂体腺腫
・成長ホルモン産生下垂体腺腫(先端巨大症)で
MEN1型は1%未満に過ぎません。
臨床像は、散発性の機能性・非機能性下垂体腺腫と変わらない。 |
副腎皮質腫瘍 | 20% | ほとんどが非機能性。手術を要する大きさになる事は少ない。 |
胸腺・気管支神経内分泌腫瘍 (NET;neuroendocrine tumor) |
7% | ほぼ全例悪性。副甲状腺手術時に予防的胸腺摘出する事もある。 |
皮膚腫瘍 | 40% | 顔面血管線維腫、皮膚脂肪腫 |
甲状腺乳頭癌 | 2% |
甲状腺乳頭癌の副腎転移は、癌死後の剖検で見つかる事がほとんどだが、存命中に見つかる稀な症例もあります。
詳しくは転移性副腎腫瘍を御覧ください。
副腎皮質癌と甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)の合併
副腎皮質癌と甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)の合併は、副腎皮質癌を御覧ください。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区も近く。