常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会学術集会で入手した知見です。
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多発性嚢胞腎(ADPKD)に合併した甲状腺のう胞[と言うより甲状腺のう胞腺腫(甲状腺嚢胞腺腫)][NDT Plus. 2008 Aug;1(4):266-7.]
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の診療を行っておりません。
Summary
常染色体優性遺伝の多発性嚢胞腎(ADPKD)は①腎実質性高血圧②慢性腎不全③嚢胞(のう胞)感染・尿路結石④脳動脈瘤合併⑤肝臓・膵臓・脾臓・卵巣にも嚢胞。多発性嚢胞腎(ADPKD)に①腎臓の腎臓の原発性甲状腺様濾胞癌が発生した報告あり②放射性ヨウ素シンチグラフィーで偽陽性③6.7%に甲状腺のう胞(甲状腺嚢胞)が生じる。抗利尿ホルモンは腎細胞内cAMP活性を高めることで多発性嚢胞腎(ADPKD)を進行させるため、抗利尿ホルモンに拮抗するバソプレシンV2-受容体拮抗薬トルバプタン(サムスカ®)が治療薬になる。副作用は重篤(重症)な肝機能障害。
Keywords
多発性嚢胞腎,ADPKD,嚢胞,のう胞,甲状腺,甲状腺嚢胞,抗利尿ホルモン,トルバプタン,サムスカ,治療薬
- 腎実質性高血圧がしばしば初発症状
- 慢性腎不全(70歳までに約50%が透析、維持透析患者全体の3-4%を占める)
- 嚢胞(のう胞)感染・尿路結石
- 脳動脈瘤の合併が多く(10%)、MRI(MRアンギオ)のスクリーニング検査が必要
- 僧帽弁/大動脈弁閉鎖不全を合併
- 特に女性の場合、肝臓(70%)、膵臓(16.7%)、脾臓(6.7%)、卵巣、甲状腺(6.7%)にも嚢胞(のう胞)が生じる全身性障害。なぜか、鼠径ヘルニア(3.3%)、結腸憩室(3.3%)[Yonsei Med J. 1997 Apr;38(2):111-6.]
常染色体優性遺伝の多発性嚢胞腎(ADPKD)は、最も一般的な遺伝性腎臓病です。両側に多数の嚢胞(のう胞)を形成する遺伝病です。責任遺伝子[コードする蛋白]は、PHD1[Polycystin 1(ポリチスチン1)]、PKD2[Polycystin 2(ポリチスチン2)]です。繊毛媒介性シグナル伝達活性の欠損が嚢胞(のう胞)形成につながるとされます。[Lancet. 2019 Mar 2;393(10174):919-935.][J Am Soc Nephrol. 2007 May;18(5):1381-8.]
腎結石症(腎臓結石)および多発性嚢胞腎(ADPKD)を持つ患者で、腎臓の原発性甲状腺様濾胞癌(Primary thyroid-like follicular carcinoma of the kidney)が発生した報告があります[Diagn Pathol. 2013 Jul 2;8:108.]
多発性嚢胞腎(ADPKD)は、放射性ヨウ素シンチグラフィー(I-123 シンチグラフィー、I-131 シンチグラフィー)で偽陽性になります。[Medicine (Baltimore). 2017 Oct;96(43):e8348.]
多発性嚢胞腎(ADPKD)の6.7%に甲状腺のう胞(甲状腺嚢胞)が生じる[Yonsei Med J. 1997 Apr;38(2):111-6.]
繊毛は甲状腺濾胞細胞にも存在し、その機能喪失は甲状腺癌の発生に関与するとの説があります[Oncogene. 2018 Aug;37(32):4455-4474.]。しかし、同じく繊毛の機能喪失が原因の多発性嚢胞腎(ADPKD)では、病初期において甲状腺癌を含む甲状腺病変の増加を認めません。[BMC Nephrol. 2022 Mar 3;23(1):85.]
腎臓の原発性甲状腺様濾胞癌(Primary thyroid-like follicular carcinoma of the kidney)の細胞診[Diagn Pathol. 2013 Jul 2;8:108.]
多発性嚢胞腎(ADPKD)に合併した甲状腺のう胞[と言うより甲状腺のう胞腺腫(甲状腺嚢胞腺腫)][NDT Plus. 2008 Aug;1(4):266-7.]
多発性嚢胞腎(ADPKD)に合併した甲状腺のう胞[と言うより甲状腺のう胞腺腫(甲状腺嚢胞腺腫)][NDT Plus. 2008 Aug;1(4):266-7.]
これまで治療薬のなかった常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対して、抗利尿ホルモンに拮抗するバソプレシンV2-受容体拮抗薬トルバプタン(サムスカ®)を使用できるようになりました。
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)では、腎臓の細胞内カルシウム濃度が低下→cAMP 活性上昇→細胞増殖・嚢胞(のう胞)内への液貯留→腎嚢胞(腎のう胞)が増大→腎機能低下が起こります。抗利尿ホルモンは、本来の抗利尿作用とは別に、cAMP活性を高めることで多発性嚢胞腎(ADPKD)を進行させます。
よって、抗利尿ホルモンの作用をブロックすれば、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の進行速度を抑える事ができます[Clin Exp Nephrol. 16(4): 622- 628, 2012.]。
しかしながら、問題もあります。常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対するトルバプタン(サムスカ®)投与量は120mg(30 mg x 4 錠)で、心不全の15 mg、肝硬変の7.5 mgと比べ異常に多い量で、重篤(重症)な肝機能障害を起こす危険性が増します。
モザバプタン(フィズリン錠®)
異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍によるSIADHにのみモザバプタン(フィズリン錠®)が投与可能でした。異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍以外のSIADHにも効くはずですが、モザバプタン(フィズリン錠®)自体が製造中止になりました。
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