IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎) 超音波(エコー)画像
Summary
橋本病の4.3%でIgG4高値(高ガンマグロブリン血症患者で多い)。IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)は急速進行型橋本病で甲状腺機能低下が速く①男性の比率が高い②抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)と抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)価が高い③超音波エコー画像は巨大甲状腺腫、びまん性低エコー、肉芽腫性炎症による腫瘤形成、エラストグラフィーで硬い。IgG4関連疾患(IgG4-RD)の合併が少ない臓器特異的IgG4関連疾患。通常の橋本病と穿刺細胞診では鑑別不能、組織診(コア生検)で著明な線維化とIgG4免疫染色でIgG4産生形質細胞を確認。
Keywords
橋本病,IgG4,高ガンマグロブリン血症,IgG4甲状腺炎,橋本病型IgG4甲状腺炎,甲状腺機能低下,エコー,エラストグラフィー,線維,形質細胞
橋本病(慢性甲状腺炎)の25.5%に高ガンマグロブリン血症(血液中の免疫抗体量が多い)を認め、そのうちの20.1%[橋本病全体の4.3%]がIgG4高値(135 mg/dL 以上)を呈します[Endocrine. 2014 Mar;45(2):236-43.]。
橋本病(慢性甲状腺炎)で急速に甲状腺機能低下が進行する場合、IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)の可能性があります。IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)は
- 橋本病(慢性甲状腺炎)の急速進行型で、急速な破壊・線維化のため甲状腺機能低下が速い
- 通常の橋本病(慢性甲状腺炎)(女:男=74:3)より男性の比率が高い(女:男=21:7)
- 自己抗体の値[抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体) と抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)]が高い
- 超音波(エコー)画像では、巨大な甲状腺腫、内部びまん性低エコー、肉芽腫性炎症による腫瘤形成を認める
とされます(Mod Pathol. 2012 Aug;25(8):1086-97.)。
血清IgG4値を測定して診断[確定診断には組織診(コア生検)が必要]。
一方で、既報通り、高ガンマグロブリン血症を示す橋本病(慢性甲状腺炎)患者の30%にIgG4高値を認めるも、IgG4高値群と非高値群で甲状腺ホルモン剤(LT4)補充量(75μg/日 vs 75μg/日)に有意差なしとの事です。(第56回 日本甲状腺学会 O7-4 高γグロブリン血症の橋本病患者における、血清IgG4 と臨床病態の検討)
橋本病型IgG4甲状腺炎は全身他臓器のIgG4関連疾患(IgG4-RD)合併が少なく、臓器特異的IgG4関連疾患と呼ばれます。IgG4関連疾患(IgG4-RD)に合併するIgG4関連甲状腺炎 と異なる病態ですが、現場では混同されており[同じと思っている人が大多数]、両者を鑑別する診断基準も存在しません。[Mod Pathol. 2012 Aug;25(8):1086-97.]
IgG・血中蛋白分画測定にて高ガンマグロブリン血症を検査(あえて測らなくても、TPO抗体とTg抗体が強陽性なら高ガンマグロブリン血症)
IgG4を直接測定(保険適応にならない場合があります)
IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)の中には、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の既往があり、抗甲状腺剤治療が行われた後、急速に甲状腺機能低下と甲状腺腫大を来したバセドウ病型IgG4甲状腺炎が含まれます。
IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)は甲状腺乳頭癌発症の危険因子とされます[J Clin Endocrinol Metab. 2016 Apr;101(4):1516-24.]。さらに、甲状腺乳頭癌の多発性、浸潤度にも関与するとされます[APMIS. 2014 Dec;122(12):1259-65.]。
また、血清IgG4値135 mg/dL 以上は満たさないものの、甲状腺乳頭癌ワルチン腫瘍型(WLPTC)患者の94.1%が間質にIgG4陽性形質細胞を有し、その発症に関連している可能性が報告されています。[Endocr J. 2018 Feb 26;65(2):175-180.]
IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)の症状は、急激な
- びまん性甲状腺腫大
- 甲状腺機能低下症
- 気道圧排(気管切開せばならない時がある)
などです。リーデル(Riedel)甲状腺炎のような、発熱・頚部痛は起こらないようです。
[Mod Pathol. 2012 Aug;25(8):1086-97.)][Arq Bras Endocrinol Metabol. 2014 Nov;58(8):862-8.](第55回 日本甲状腺学会 P2-05-08 IgG4 甲状腺炎により、著明な甲状腺機能低下と急速な気道閉塞を来した一例)
IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)と通常の橋本病を穿刺細胞診で比較した場合、
- 好酸性細胞(核溝もあり)炎症による変性なので橋本病でも認められる
- 形質細胞;橋本病でも認められる
- リンパ球;橋本病でも認められる
ため鑑別できません。
それ以前に、筆者の経験では線維化しているため硬くて針が通りません(ドライタップ)。結局、組織診(コア生検)でIgG4免疫染色するしかありません。
橋本病型IgG4甲状腺炎の組織像を通常の橋本病と比較すると、著明な線維化(線維性肉芽腫性炎症)のため一目瞭然で鑑別できます。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。