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甲状腺と茶,コーヒー,活性酸素:SOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学教室で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など)  をクリックください

Summary

甲状腺機能低下症/橋本病で、コンブを含むブレンド茶を大量、毎日飲み続ければ、ヨード過剰摂取による甲状腺組織の破壊が進行、甲状腺ホルモン合成が妨げられる。高麗人参(ニンジン)を含むブレンド茶(ドリンク剤)は甲状腺機能亢進症/バセドウ病症状増悪の危険。難溶性デキストリンを含むブレンド茶(特保茶)は甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の腸吸収を妨げる。過剰なコーヒーは甲状腺機能亢進症/バセドウ病症状を増悪。コーヒー豆は甲状腺ホルモン剤の腸吸収を妨げる。SOD (スーパーオキシドディスムターゼ) は体内で発生した活性酸素を不活化する酸化還元酵素で甲状腺機能亢進症/セドウ病橋本病甲状腺乳頭癌高値。

Keywords

茶,コーヒー,甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺,カフェイン,チラーヂンS,活性酸素,甲状腺乳頭癌

甲状腺と茶

昔からあるお茶に加え、様々なブレンド茶・特保茶が巷にあふれています。これらの中には、健康な人には害はないものの、甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺機能亢進症/バセドウ病など甲状腺の病気を持つ人には必ずしも好ましくないものが含まれています。(製品名を名指しすると問題がおこるので敢えて伏せさせていただきます)

  1. コンブを成分に含むブレンド茶:常識的な飲み方では問題ないですが、1日2リッター以上、毎日飲み続ければ、ヨード(ヨウ素)による甲状腺への悪影響が出る可能性があります。(「夏場は1日2リッター以上お茶を飲まねばならん!」とコンブを成分に含むブレンド茶を飲んでいた患者さんが、長崎甲状腺クリニック(大阪)で本当におられました。)
    (もちろん、本当のコンブ茶は、もっと悪い)

    特に甲状腺機能低下症/橋本病の人では、ヨード(ヨウ素)の過剰摂取により、甲状腺組織の破壊が進行し、甲状腺ホルモンの合成が妨げられます(ヨード(ヨウ素)と甲状腺  )。
     
  2. 高麗人参(ニンジン)を成分に含むブレンド茶(ドリンク剤も):甲状腺機能亢進症/バセドウ病が安定した状態では問題ありません。しかし、未治療・治療開始後数か月以内の甲状腺ホルモンが正常化していない状態で、甲状腺ホルモンと似た作用を持つ高麗人参(ニンジン)は甲状腺機能亢進症/バセドウ病症状を増悪させる危険性があります。

    例えば、発汗が増える、動悸がひどくなる(ドキドキする)、イライラが強くなる、眠りにくくなるなど。高麗人参(ニンジン)も甲状腺ホルモンも、交感神経を活発にする作用があるからです。
     
  3. 難溶性デキストリンを成分に含むブレンド茶(特保茶):甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の腸からの吸収を妨げる可能性があります。甲状腺機能低下症/橋本病で、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を飲んでいる人は注意が必要です(チラーヂンS吸収障害おこす食べ物 )。
    特に、「血糖値が下がる」「腸から糖の吸収を抑える」のが歌い文句の特保茶は、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の吸収を妨げる危険性があります。
     
  4. ルイボスティー

甲状腺の病気に活性酸素:SOD(スーパー・オキサイド・ディスムターゼ)

甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症潜在性甲状腺機能低下症ともに血清中の抗酸化物質の異常を来し、酸化ストレスが病気の進行に関与する考えられます(Clin Chem Lab Med. 2002 Nov;40(11):1132-4.)(Free Radic Biol Med. 1990;8(3):293-303.)(J Investig Med. 2012 Jan;60(1):23-8.)。

甲状腺ホルモンそのもが酸化物で、トリヨードサイロニン(T3)、L-チロキシンナトリウム塩(T4)ともに、状況によってはDNAを損傷する可能性があります(Mutagenesis. 2004 Jul;19(4):325-30.) 。

甲状腺機能低下症では抗酸化LDLコレステロール抗体価が高く、アテローム性動脈硬化症の進行に関与します(Clin Chem Lab Med. 2002 Nov;40(11):1132-4.)。(甲状腺と動脈硬化

甲状腺と活性酸素

SODはスーパーオキシドディスムターゼ (Superoxide dismutase, SOD) の略で体内で発生した活性酸素を、酸素と過酸化水素へ不活化する酸化還元酵素です。甲状腺機能亢進症/セドウ病橋本病 、甲状腺乳頭癌 で血中SODは高値になりますが、特に甲状腺乳頭癌で高くなると言われます(Biol Trace Elem Res. 2010;138(1-3):107-15.)。甲状腺内で活性酸素がこれらの病気の進行に関与しているためと考えられます。

筋炎、活性酸素甲状腺癌の新しい危険因子とされます[Endocr Relat Cancer. 2012 Jan 9;19(1):C7-11.]。

もともと甲状腺内には、酸化酵素が豊富で、酸化・抗酸化のバランスが崩れると細胞障害を起こしやすい環境にあると言えます。

甲状腺とコーヒー

コーヒーはパーキンソン病や糖尿病を改善させる可能性が報告されています。しかし、甲状腺機能亢進症/バセドウ病にはどうでしょうか?

米国では成人のカフェイン摂取量は、コーヒー1杯当たり100mgとして1日4杯(400mg)までが安全域とされます。それ以上のカフェインは睡眠障害、イライラ・不安など精神障害、頻脈を増強させます。コーヒーを飲んだ後、吸収されたカフェインの効果が現れるのは約30分後です。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、甲状腺ホルモン過剰による睡眠障害、イライラ・不安など精神障害、頻脈があるため、カフェイン摂取で増悪します。

甲状腺機能低下症では、体の新陳代謝が低下し、活力が落ちているため、カフェイン摂取で代謝が改善する可能性があります。ただし、コーヒー豆は、甲状腺ホルモン剤[チラーヂンS(チラージンS)]を吸着し、腸からの吸収を妨げるため要注意です(チラーヂンS吸収障害おこす食べ物 )。

また、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」で常識量を超えたコーヒー摂取はカフェイン中毒を引き起こします(甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺クリーゼと似ているカフェイン中毒

甲状腺とルイボスティー

「甲状腺の病気がある人はルイボスティーを飲んでも良いのか?」筆者は、よくこの様な質問を受けます。

ルイボスティーは紅茶に似ていますが、南アフリカ原産の“ルイボス”というマメ科の植物の葉を乾燥させたお茶で、ハーブティーに分類されます

ルイボスティー

ルイボスティーの特徴は、

  1. SOD様物質;活性酸素を除去するは、スーパー・オキシド・ディスムターゼ(SOD)様物質フラボノイドやケルセチンを含む。甲状腺の病気に活性酸素が悪影響している可能性があるので丁度よいと思います。
     
  2. ミネラル;マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、亜鉛などのミネラルが豊富に含まれている。
    甲状腺機能亢進症/バセドウ病では低カリウム血症低マグネシウム血症 になるのでカリウム・マグネシウム 補充に良い(甲状腺の低カリウム血症 )(低マグネシウム血症)。

    亜鉛欠乏症甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能低下症に関連が強いため亜鉛補充に良い(亜鉛欠乏症 )

    マグネシウム、カルシウム、亜鉛は、チラーヂンSの吸収を妨げるので、チラーヂンSと同時に飲まない方が良い(ただし、服薬後最低30分以上してチラーヂンSが吸収された後は良い)(チラーヂンS錠が吸収されない? )
     
  3. 低タンニン;鉄の吸収を妨げるタンニンが少ない
     
  4. ノンカフェイン;カフェインを含まないので、カフェインで症状が増悪する甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも安心して飲める。妊娠中授乳中も問題ないとされています。ルイボスティーでの報告はありませんが、ポリフェノール含有飲料による胎児の動脈管早期閉鎖が報告されているので、妊婦にはお勧めしていません(Birth Defects Res C Embryo Today. 2013 Dec;99(4):256-74.)。

結論

甲状腺の病気がある人(妊婦以外)は、ルイボスティーを飲んでも良いが、チラーヂンS服薬後最低30分以上してから飲むこと

コーヒー・紅茶と甲状腺癌

以下は、怪しい情報ではなく、英語の国際論文として正式に発表され、The National Center for Biotechnology Information(NCBI)がPubMed®のデータベースにアップしているものです。()内は、学術誌名、掲載年度。

コーヒーと紅茶の発がん予防作用が複数報告されています。コーヒー摂取により子宮内膜癌(子宮体癌)になるリスクが減少、紅茶摂取により全体的な癌リスクが減少します(Br J Cancer. 2015 Sep 1;113(5):809-16.)。

緑茶でも同様で、肺癌・食道癌などの発癌予防効果があります(Lung Cancer. 2012 Nov; 78(2):169-70.)(Nutr Cancer. 2013; 65(6):802-12.)。

残念な事に、コーヒー摂取による甲状腺乳頭癌濾胞癌の予防効果は認められませんでした(Eur J Nutr. 2019 Dec;58(8):3303-3312.)(Int J Environ Res Public Health.)。

同時に、日本人を対象とした研究で、緑茶摂取による明らかな甲状腺癌の予防効果も認められませんでした(Cancer Causes Control. 2011 Jul;22(7):985-93.)。

紅茶消費量が多い程、甲状腺癌の発生率が低くなる

しかし、14編の研究報告で、紅茶消費量が多い程、甲状腺癌の発生率が低くなる結果が出ています。これは、紅茶を飲むヨーロッパとアメリカで明確で、紅茶とは限らないアジアでは甲状腺癌の予防効果は認められませんでした。(Int J Clin Exp Med. 2015; 8(8):14345-51.)

また、ギリシャ人のハーブティー、特にカモミール茶摂取による甲状腺癌予防効果も報告されています(Eur J Public Health. 2015 Dec;25(6):1001-5.)。

ポリフェノールの一種、プロシアニジン(procyanidin)を含んだ茶

りんごや松皮に含まれるポリフェノールの一種、プロシアニジン(procyanidin)を含んだお茶が機能性表示食品として販売されています。

プロシアニジンB2

プロシアニジンの効果(※引用文献には動物実験も含まれます)は、

  1. LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪を下げて動脈硬化の進行を防ぐ[J Control Release. 2022 Jan;341:828-843.];甲状腺機能低下症潜在性甲状腺機能低下症/橋本病を治療するのが遅れ、すでに動脈硬化が進行してしまった人には良いでしょう(甲状腺と動脈硬化 )
      
  2. 肥満非アルコール性脂肪肝を防ぐ[World J Gastroenterol. 2019 Feb 28;25(8):955-966.];甲状腺機能低下症の脂肪分解低下による肥満甲状腺機能亢進症/バセドウ病で①異常食欲亢進が脂肪燃焼に勝った時の肥満②治療により甲状腺機能が改善し脂肪分解が低下したのに異常に食べてしまう肥満内分泌肥満)に良いと思われます。
  3. 血糖値の上昇を抑える[Curr Med Chem. 2015;22(1):39-50.];1型、2型糖尿病問わず甲状腺疾患との合併が多い(甲状腺と糖尿病
  4. 血圧上昇を抑える[J Ethnopharmacol. 2008 Apr 17;117(1):58-68.];甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症自体でも血圧に影響する、あるいは元々の遺伝性(本態性)高血圧症を悪化させている事もあります(甲状腺の血圧管理・高血圧
  5. 頭皮の血行を良くして育毛を助ける[J Med Food. 2018 Jan;21(1):90-103.](円形脱毛症と甲状腺疾患
      
  6. 体に有害な活性酸素を抑える[Free Radic Biol Med. 1999 Sep;27(5-6):704-24.][Bioorg Med Chem Lett. 2017 Feb 15;27(4):1041-1044.];ただし発癌抑制作用は証明されていません。
      
  7. アレルギーを抑える[Curr Pharm Des. 2014;20(6):857-63.];アレルギーが甲状腺機能亢進症/バセドウ病の発症・再発を誘発します(花粉症と甲状腺機能亢進症/バセドウ病発症・再発

以上より、甲状腺機能低下症潜在性甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人にプロシアニジンは有用と考えられます。

ただし、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」で一日摂取目安量を超えた使用はお勧めできません。

ポリフェノールは発癌抑制作用を持つ生理活性物質です。しかし、現時点でプロシアニジンを含む食事性ポリフェノールには甲状腺がんのリスクを減らす作用は無いとされます[Int J Cancer. 2020 Apr 1;146(7):1841-1850.]。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺クリーゼと似ているカフェイン中毒

カフェインには脳(中枢神経)を刺激して、眠気を覚ます、集中力を高める、しんどさ(倦怠感)を感じさせない等の効果があります。

注意すべきは、カフェインで疲労が回復する訳では無く、感じさせなくするだけで、カフェインが切れた後にまとめて体にダメージが来ます。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺クリーゼ と似ている急性カフェイン中毒は、短時間にコーヒーを8-10杯、エナジードリンク(栄養ドリンク)を4-20本飲むと発症する可能性があります。 カフェインには、タバコやアルコールと同じく依存性があります。既に慢性カフェイン中毒になっている状態で、制御が掛からず飲み過ぎると急性カフェイン中毒に至る危険性があります。

急性カフェイン中毒の症状は、

  1. 頻脈(カフェインの心筋刺激作用);甲状腺ホルモンの心筋刺激作用に似ている
  2. 頻呼吸(カフェインの呼吸中枢刺激作
  3. 腹痛、悪心・嘔吐;甲状腺ホルモンの消化管への作用に似ている
  4. 興奮状態(知覚過敏・多弁・易怒性)、不安・焦燥感、パニック発作、精神錯乱・妄想・幻覚(カフェインの中枢神経刺激作用);甲状腺機能亢進症/バセドウ病の精神異常に似ている
  5. 頭痛、けいれん
(図、MedicinePlusより改変)
カフェイン中毒

急性カフェイン中毒の治療は、カフェインの体外排泄のため等張電解質液(乳酸加リンゲル液)や生理的食塩水投与。

[Curr Opin Pediatr. 2012 Apr;24(2):243-51.][Birth Defects Res. 2017 Dec 1;109(20):1640-1648.]

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,生野区,浪速区,天王寺区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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