長崎俊樹 院長ブログ[甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

2014.11.27

それはおかしい「甲状腺がんの非手術経過観察療法」

「非手術経過観察中の甲状腺微小乳頭癌」に対するセカンドオピニオンは、お断りしております。

甲状腺微小乳頭癌」に対する長崎クリニック(大阪)の考え方は、本ページに記載した通りです。どのように考えるかは、患者様自身、医療機関により異なります。

「非手術経過観察」か「積極的手術」か、現時点で、どちらが正しく、間違っているかの答えは存在しません。

「非手術経過観察」に納得できないなら、主治医とよく相談されることをお勧めします。

こんにちは。甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)・動脈硬化内分泌代謝・糖尿病 専門の長崎クリニック(大阪)院長 長崎俊樹です。甲状腺専門医として甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,内分泌などのホットな話題をお届けします。

「甲状腺がんの非手術経過観察療法」→「手術で取らなくても命にかかわりはない!」は極論と思います。

長崎クリニック(大阪)の方針として「甲状腺微小乳頭癌は一律に手術すべきでない」という極論には反対です。特に、癌センターなどでは、「甲状腺乳頭癌など癌ではない」と言い切る癌専門医もいるようです。確かに手術しなくて良い甲状腺微小乳頭癌が多くある一方で、絶対手術すべき甲状腺微小乳頭癌が存在するのも事実です。

[長崎クリニック(大阪)は内科系甲状腺専門医ですので手術自体は大阪市立大学附属病院 内分泌外科に依頼します]

1cm 未満の微小甲状腺乳頭癌は35歳以上の女性の3.5%に存在するとの報告があります(Takabe et al. KARKINOS 1994)。超音波(エコー)機械の進歩に加え、肺CTや頚動脈エコーで偶然見つかる甲状腺乳頭癌が増えているためで、アメリカでも甲状腺微小乳頭癌が増加しています(JAMA. 2006, 10;295:2164-7)。

近年、手術しないで経過観察するのが主流になりつつあります。絶対手術すべき甲状腺微小乳頭癌も紛れており、見逃してはいけません。

甲状腺微小乳頭癌の中には、浸潤・転移しやすい浸潤型微小乳頭癌が確かに存在します。浸潤・転移しやすい甲状腺微小乳頭癌か否かを調べるのは現時点では不可能で、浸潤・転移するかどうか経過観察するしかありません。

  1. 「周囲リンパ節腫大がなく、遠隔転移が無い症例では、80%の症例で5 年以上経過をみても何の変化もなく、生命にかかわることもなし。」との根拠で、甲状腺微小乳頭癌は手術しない方針を打ち出している医療機関が複数あります。

    甲状腺微小乳頭癌でも1%は(10年では3.8%)経過観察中にリンパ節転移します(隈病院公表データ: Thyroid,24;7-34,2014)
    実際、橋本病・バセドウ病では甲状腺周囲のリンパ節は複数腫れていることが多く、甲状腺微小乳頭癌が発生してもよほど典型的な形状の転移リンパ節でなければ、区別は難しいです。
    (穿刺細胞診は必ずしも確実でなく、全身麻酔によるリンパ節生検も余程疑わしくない限りおこなえません。)

    甲状腺微小乳頭癌でも、経過観察中に肺に遠隔転移すれば甲状腺全摘出して放射線療法が始まります[こうなると最初から手術していれば甲状腺半分だけの摘出で(全摘したとしても)、放射線治療しなくて済んだのに・・・と言う事になります]。肺CTで肺転移の有無を定期的に確認せねばなりません。

    私がこれまで遭遇した症例には、肺転移が先に見つかり、全身の原発巣を調べた結果、甲状腺微小乳頭癌にたどり着いたものが数例あります(浸潤型微小乳頭癌)。
  2. 同じ甲状腺微小乳頭癌でも年齢によって予後が違います。通常の甲状腺乳頭癌とは逆で、40 才以下で、サイズ増大・リンパ節転移しやすいです。高齢者の甲状腺微小乳頭癌は進行しにくいです。
    これは、40 才以下の甲状腺微小乳頭癌には大きくなる途上のものが含まれ、高齢者の甲状腺微小乳頭は長年小さいまま変化しないのがほとんどだと考えられます。


  3. 甲状腺微小乳頭癌でも10年では10%以下は経過観察中に3mm以上のサイズ増大します(隈病院公表データ: Thyroid,24;7-34,2014)。若年者では10%です。サイズ増大してから手術すれば間に合うとの見解ですが、1例のみ手術後の残存甲状腺に再度甲状腺微小乳頭癌が現れたそうです。
    また、甲状腺乳頭癌に特徴的な微細石灰化を持たない甲状腺微小乳頭癌は進行しやすいとのことです。石灰化は同じ場所に長くとどまらなければ、おこらないため、微細石灰化を持たない甲状腺微小乳頭癌は短期間で成長していると推察されます。

    ※2014年の隈病院の最新データでは、15年後に3mm以上のサイズ増大した甲状腺微小乳頭癌の累積率は、なんと!20%(つまり、15年後には甲状腺微小乳頭癌の5人に1人は3mm以上のサイズ増大する)。
    40歳未満の若年者に限定すれば、甲状腺微小乳頭癌発見後15年で、約60%は3mm以上のサイズ増大、約40%はリンパ節転移するというトンデモナイ(15年間癌の恐怖におびえた挙句、結局手術になるやん。リンパ節転移する前に手術していれば、手術後の再発を一生恐れる精神的負担から解放されるのでは?)
    隈病院の見解では、「手術すれば0.2%に永続性反回神経麻痺の合併症がおこるから、それでも手術せずに経過観察の方が良い」と言う事ですが・・・・

以上から、長崎クリニック(大阪)の方針として甲状腺微小乳頭癌も患者さん本人が希望する限り手術すべきと考えます。「甲状腺微小乳頭癌は絶対手術しない」という癌専門医も、自分の甲状腺に甲状腺微小乳頭癌が見つかったら、多分、真っ先に手術を受けると思います。

詳細は 甲状腺微小乳頭癌に対する長崎甲状腺クリニック(大阪)の考え方を御覧ください。

本日は甲状腺微小乳頭癌の話でした。

文責:長崎クリニック(大阪)院長 日本甲状腺学会認定専門医 長崎俊樹

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 追記:

絶対手術が必要な甲状腺微小乳頭癌

甲状腺微小乳頭癌でも

  1. すでに遠隔転移(肺転移・骨転移・脳転移)しているもの。アイソトープ(放射性ヨウ素, 131-I)治療するため甲状腺を全部摘出せねばなりません。
  2. 気管に浸潤する可能性がある・反回神経に接するものは、気道内への出血・反回神経麻痺の危険から(隈病院の外科でもオペするそうです)、甲状腺を半分切除~全部摘出せねばなりません。

これは、誰もが納得して認めることで、「甲状腺微小乳頭癌は手術しない」に矛盾します。

妊娠中の甲状腺微小乳頭癌

隈病院の統計では妊娠中、甲状腺微小乳頭癌の45%がサイズが増大するとのことです。もちろん、女性ホルモンの影響が大きいと思われますが、あまり気持ちの良いものではありません。

甲状腺微小乳頭癌が見つかった時の転移検索

甲状腺微小乳頭癌の中には、転移しやすいものが確かに存在します。転移しやすい甲状腺微小乳頭癌か否かを調べるのは現時点では不可能です。よって、長崎クリニック(大阪)では甲状腺微小乳頭癌が見つかれば、肺・上半身骨CT, 脳MRIをお勧めしています。(隈病院では原則しないとのことです)

本日は甲状腺微小乳頭癌の話(追記)でした。文責:長崎クリニック(大阪)院長 日本甲状腺学会認定専門医 長崎俊樹

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