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乱用される『メルカゾール(またはプロパジール、チウラジール)』と『チラーヂン』の併用(ブロック補充療法)[橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 年次学術集会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

Summary

メルカゾールとチラーヂン併用はメルカゾール単独で再発を繰り返す不安定な甲状腺機能亢進症/バセドウ病に有効(ブロック補充療法)。寛解が目的でないため半永久的に続く。残念な事に、明らかに安定した活動性高くないバセドウ病にも乱用されている。普通にメルカゾールのみで治療していれば何年・何十年後にバセドウ病が寛解し、薬が必要なくなる可能性を最初から奪い去る。私見だが、ブロック補充療法を長期間続けると、寛解しない状態が固定化し、メルカゾールとチラーヂンを同比率で減らそうとしても、もはや減らせなくなる。プロパジール、チウラジールとチラーヂンの併用も同じ事。

Keywords

メルカゾール,チラーヂン,併用,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,寛解,長崎甲状腺クリニック,プロパジール,甲状腺,大阪

乱用される『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用(ブロック補充療法:Block and Replacement Therapy)

ブロック補充療法(最初)

ブロック補充療法(最初)

ブロック補充療法(その後)

ブロック補充療法(その後);安定した状態が長期間続くとバセドウ抗体(TR-Ab)は一時的に検出感度以下になりますが、バセドウ病自体の活動性が消える訳ではありません。TR-Abが再発の指標にならないことは、甲状腺専門医なら普通に知っています。

『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用(ブロック補充療法;Block and Replacement Therapy またはBlock-Replacement Therapy)は、メルカゾール単独で頻回に再発を繰り返す極めて不安定な甲状腺機能亢進症/バセドウ病において、甲状腺ホルモンを安定させる(ある意味最終)手段の一つです。[その他の最終手段は、アイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療手術療法(甲状腺全摘出)]

ブロック補充療法を行うと甲状腺ホルモンは安定しますが、バセドウ病の寛解率の上昇は望めません[Cochrane Database Syst Rev. 2005 Apr 18;(2):CD003420.][Indian J Endocrinol Metab. 2015 May-Jun;19(3):340-6.]。

バセドウ病寛解率を高めることを目的とした方法でないため、半永久的に続きます(そりゃあ甲状腺ホルモンを下げるだけ下げて、下げた分を補充してりゃ永遠に終わらんわな)。バセドウ病の活動性が高過ぎて、半永久的にメルカゾールを切れない方にこそ有用な治療と言えます。

または、

  1. 小児バセドウ病などで、アイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療手術療法(甲状腺全摘出)を安全に行える年齢になるまでの時間稼ぎ
  2. 社会的理由ですぐにアイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療手術療法(甲状腺全摘出)ができない場合(子供が就学前、仕事を休む目途が立たない、親の介護に手がかかる等)の時間稼ぎ
  3. 高齢者バセドウ病で、あえて危険を冒してまでアイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療手術療法(甲状腺全摘出)をする必要がない場合

などに有用です。

非常に残念なのは、

  1. 頻回に再発を繰り返している訳ではない初回発症の甲状腺機能亢進症/バセドウ病患者
  2. 加えて、さほど甲状腺が大きくなく、甲状腺ホルモン・バセドウ病抗体(TRAb, TSAb)も言うほど高くない患者
  3. ストレス・タバコ・アレルギーなどバセドウ病の活動性を上げる増悪因子に乏しい患者

に、最初からBlock and Replacement Therapy(ブロック補充療法)を使用される事です。普通にメルカゾールのみで治療していれば、何年あるいは何十年後にはバセドウ病が寛解し、メルカゾールを中止できる可能性があるのに、最初からその機会を奪い去ります。

さらに悪い事に、機序は解明されていないものの、甲状腺内部血流が低下しない事がほとんどです(バセドウ病の活動性が消えないためか、強力に甲状腺ホルモン合成を抑えた事に対する生体の代償性防御反応か不明ですが)。このような患者さんに甲状腺腫瘍が発生し、穿刺細胞診が必要になった時 バセドウ病と腫瘍・癌)、針刺しによる大出血と気道閉塞の危険が生じます(穿刺時出血)。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、このような患者さんに対して、可能なら『メルカゾール』と『チラーヂン』を同比率で減らし、『メルカゾール』単独でコントロールしようと試みます。(私見ですが)ブロック補充療法(Block and Replacement Therapy)を長期間続けると寛解しない状態が固定化し、『メルカゾール』と『チラーヂン』を同比率で減らそうとしても減らせない例が多くあります。

※『プロパジール、チウラジール』と『チラーヂン』の併用も同じ事です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)で行った『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用(ブロック補充療法)

『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用(ブロック補充療法)は、メルカゾール単独では再発・効き過ぎを繰り返しコントロールできない超不安定な甲状腺機能亢進症/バセドウ病で、かつ甲状腺全摘出術、I-131 放射線内照射(アイソトープ治療)もできない(あるいは患者さんが希望しない)場合の最終手段です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)で導入した『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用(ブロック補充療法)は、83歳の女性。メルカゾール0.5錠増やすだけで効き過ぎて甲状腺機能低下症に、0.5錠減らすだけで甲状腺機能亢進症/バセドウ病が再発するコントロール不能な症例でした。糖尿病、慢性腎不全も合併し、年齢的にも甲状腺全摘出術、I-131 放射線内照射(アイソトープ治療)できない方です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)でブロック補充療法中のバセドウ病

長崎甲状腺クリニック(大阪)でブロック補充療法中の甲状腺機能亢進症/バセドウ病

長崎甲状腺クリニック(大阪)でブロック補充療法中の甲状腺機能亢進症/バセドウ病 ドプラーモード

長崎甲状腺クリニック(大阪)でブロック補充療法中の甲状腺機能亢進症/バセドウ病 ドプラーモード;甲状腺ホルモン値を正常に維持できても内部血流は異常に多く、高活動型のバセドウ病です。

 長崎甲状腺クリニック(大阪)でブロック補充療法中の甲状腺機能亢進症/バセドウ病 下甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV)

長崎甲状腺クリニック(大阪)でブロック補充療法中の甲状腺機能亢進症/バセドウ病 下甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV);甲状腺ホルモン値を正常に維持できてもITA-PSVは異常に高く、高活動型のバセドウ病です。

89歳 女性難治性バセドウ病+巨大腺腫様結節

89歳女性 難治性バセドウ病巨大腺腫様結節 ;高齢者でなければ間違いなく甲状腺全摘手術になりますが、『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用(ブロック補充療法)で凌ぐしかありませんでした。

89歳女性 難治性バセドウ病+ 巨大腺腫様結節(水平断)

89歳女性 難治性バセドウ病巨大腺腫様結節(水平断)

89歳女性 難治性バセドウ病 +巨大腺腫様結節(垂直断)

89歳女性 難治性バセドウ病 +巨大腺腫様結節(垂直断)

妊活中の甲状腺機能亢進症/バセドウ病女性にブロック補充療法

妊活中不妊治療中甲状腺機能亢進症/バセドウ病女性の好ましい甲状腺ホルモン値は、「FT4(甲状腺ホルモン:遊離サイロキシン)が、非妊娠時の正常上限か、正常上限よりやや高め」です。

しかし、『メルカゾール』『プロパジール、チウラジール』を減量して調節するなら、一歩間違えれば甲状腺機能亢進症/バセドウ病再発して妊活どころではありません。

逆に、甲状腺ホルモンを下げ過ぎると、甲状腺機能低下症と同じ事になります。日本人女性の流産率は13%ですが、5.0>TSH≧2.5の甲状腺機能正常範囲(0.5-5.0)内の低下寄りでも流産率は30%以上です(不妊症/習慣性流産・不育症と甲状腺 )。

この様な時こそ、ブロック補充療法の出番です。

あくまで、十分コントロールされ、安定した甲状腺機能亢進症/バセドウ病女性が対象です。甲状腺ホルモン変動の激しい不安定な状態で甲状腺ホルモン剤(チラーヂン)を投与するのは危険極まりない事です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、十分コントロールされ、安定した甲状腺機能亢進症/バセドウ病女性妊活に際し、TSH<2.5を維持できるように『メルカゾール』『プロパジール、チウラジール』と『チラーヂン』の併用(ブロック補充療法)行います。

もちろん、出産して妊活終了後に『チラーヂン』を中止すれば問題ありません。

 

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,生野区,東大阪市,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

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